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2019.10.03

得をすることから始め、損をしないように続けましょう【習慣の心理学#35】

kencom公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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どんな習慣でも、何か自分にとってメリットがあるからこそ取り入れるものです。
ですが、なかなか続かないのは、そのメリットがあまりに遠い存在であることが多いため。
本連載では何度も伝えていますが、そのメリットを享受する前の準備こそが大事なのです。
今回はよりわかりやすく、損得の話で解説してみましょう。

たった少しの努力でも成果を失いたくない気持ちは駆り立てられる

全ての基本は『報酬があるから、習慣化できる』

本連載では『報酬があるから、習慣化できる』というBFスキナーが提唱した行動科学に基本を置いています。
エサで訓練すればハトは疑似ピンポンゲームだってやります。野生の鳩は決して自らピンポンしないし、もちろん勝とうともしません。でも、エサがもらえるならやるのです。

私はこれをきちんと応用して、自分自身にご褒美をあげる工夫を凝らせば、人は何でもできるようになると思います。

英語の勉強だろうと筋トレだろうと早寝早起きだろうと。

また、禁酒や禁煙が難しいのは、お酒やタバコに「報酬」があるからです。中でも最高の、つまり最悪の報酬は、「ストレス解消」です。たいていの悪癖については、それによってストレスが解消できるという感覚が、全てのカギを握っています。

以上は間違いなく事実です。つまり、報酬で行動が常習化するのは、ハトも人間も同じなのです。
ただ、人間がハトと違うのは、かなりの知力があるところです。

習慣化後は「損失回避作戦」が有効

人はあきやすい。そして、ご褒美自体に飽きてしまいます。そうして、「こんなご褒美だったら、筋トレなんかやらなくてもいいや」と、本末転倒な論理でもって、自分を納得させてしまいます。

そこで私は、習慣を根付かせるまではご褒美作戦で良いと思いますが、習慣化したら「損失回避作戦」が良いと思っています。

よく話題に上がるシートベルトの例を取りましょう。
シートベルト、今では「締めるのが常識」というようになっていますが、私が子供の頃は、助手席だろうと運転手だろうと、しなくていいようなものでした。
ある時「シートベルトが義務化」されたとき、子供の自分は思ったのです。窮屈で面倒くさくて、こんなのするなら死んだ方がマシだ。

そんなはずないのですが、そんなことを思ってしまうのが不思議です。

ところが、いつしか「シートベルトを締めてないと、落ち着かない」というようになりました。習慣化された行動をしないと気持ち悪くなるのです。

損を嫌う自分をうまく利用しよう

この感覚をあえて言語化するとこうなります。

たまたまシートベルトを締めていない今日に限って事故で死んだりしたら取り返しが使いほど損だ!

人は損を嫌います。それはそれは嫌うのです。

だから、ある程度習慣化したら、「毎日このポイントだけはクリアしておかないと取り返しがつかなくなる!」という気持ちに訴えればいいわけです。
そのポイントは、あまり無理のないポイントであることがもちろん望ましいでしょう。

筋トレなら、15分。
英語なら、1ページ。

なんでもいいのです。
ようは、「最低でもこれだけをやっておかないと、今日まで積み上げた習慣が台無しになるかもしれない!」と思うような「最低のハードル」を決めておくのです。

損を嫌う人間の本質を利用しよう

人は損を嫌います。このような「損失を回避できるポイント」を必ずクリアしておきたくなるでしょう。
その気持ちをうまく使うことで、習慣は飛躍的に身につくはずです。

著者プロフィール

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■佐々木正悟(ささき・しょうご)
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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