2019.09.19
何度でもご褒美をもらえる喜びが良い習慣を作る【習慣の心理学#33】
習慣化に欠かせないと言われるのが報酬、いわゆるご褒美です。ちょっとしたことでもいいのですが、自分自身に与えることでモチベーションの維持などにつながります。
しかし、どうしてご褒美は必要なのでしょうか?
また、その頻度はどれくらいがいいのでしょうか?
今回はそのあたりを掘り下げていきましょう。
簡単なようで奥深き『習慣化のためのご褒美』
多くのことは報酬無くして習慣化は難しい
まず最初に、この記事で言いたいことをお伝えしておきましょう。
それは大きく分けて2つあります。
①大きな目標やゴールに向かって、コツコツとストイックに良い習慣を続けようとしても、それは非常に難しい
②習慣化したい行動を実行するたびに、それなりに「報酬」が得られるようにしておく必要がある
この2つです。これは何度かお伝えしているので、納得がいくことかと思います。
ですが、どうしてなのか理由はなかなかわかりにくいものです。
ストイックな行動は習慣化の条件を満たしていない
まず①がなぜそれほど難しいのか。これがデキる人はほんの一握りの偉大な成功者であるか、またはそういう人すら本当は出来ていないのかもしれないくらい難しいものです。
何故ならば①は、簡単に言えば習慣化の要件をまったく満たしていないのですから。
行動心理学が教えるところによると、私たちは報酬のある行動を繰り返します。いいことがあると思うから、日々同じような、多少なりとも苦痛に満ちた行動を繰り返すのです。
その「いいこと」が1年先、2年先、5年先となっていくにつれて、行動は苦痛でしかなくなっていきます。
重いバーベルを上げるのは、筋肉をつけたり、ボディメイクをしたいからです。体型が一切変わらないのであれば、純粋に苦痛なだけの行動になります。
それを動物一般は繰り返すことができません。
将来に向けた追い込みが辛さを生む
こと習慣化においては、この目標と行動についてあまりにも考えなさすぎるケースが多すぎます。
受験勉強は「受験地獄」などとかつて呼ばれたことがあります。「地獄」の苦しみに耐えるのは「合格」という天国にいたるためです。しかし、ただそれだけがすべてになると、地獄の中で挫折してしまいます。
私は基本的に、受験勉強を始められるような人であれば、本当のところ「勉強をすること」だけが理由で、それに挫折することはあり得ないと思います。「勉強」というのは、数学であろうと英語であろうと、それ自体でそこまでつらいものではないでしょう。
筋トレも同じです。友達に付き合ってちょっとやってみるなら、きっと「地獄の苦しみ」ではないはずなのです。それらが「地獄」になってしまうのは将来の「天国」にいたるために自分を追い込み、危機感や恐怖感でストレスにまみれてしまうせいです。
こうなる原因は①の行動の戦略ミスにあります。「大きな目標やゴールに向かって、コツコツとストイックに良い習慣を続けよう」とするだけではダメなのです。
習慣化のために様々な角度から報酬を得よう
この問題を避けるために必須事項となるのが、②の行動を実行するたびに、それなりに「報酬」を得ることになります。
たとえば適切なコーチをつけて、実行するたびに適度に褒めてもらうのもいいでしょう。こと習慣化についていえば「コーチ」とはこれをするための存在です。
どうしてもそういうコーチがいないなら、「やるだけで楽しい」ことをなるべく選ぶようにしましょう。そういう意味で習慣化に必要なのは「目標」よりも「好きなこと」なのです。好きなことの先にいい結果があって、その結果が目標とイコールになるというのが理想です。
そしてありがちですが「コミュニティ」も報酬の1つです。
これも結局「やるだけで楽しい」という状態を作り出すという意義が大きいのです。(仲間の作用をそれだけに定義するのは寂しいかもしれません。これは、あくまでも習慣化という視点から見た「報酬系」の話だととらえてください)
最後に「自分へのご褒美」となります。
これについては、私はいつも懐疑的です。なぜかというと、やってもやらなくてもご褒美を自分で取ることができてしまうからです。
しかし、その程度のことを自分で律することができるというのなら、効果が上がると思います。
利便性だけでいえば、自分で自分にご褒美というのが、コーチもコミュニティも不要になるし、報酬は絶対に得られるので望ましいでしょう。
ただ、やってもやらなくても自分はご褒美を得られることを知っているのがネックです。
だからこそコーチや、楽しみ、コミュニティなど様々な報酬を活用することが習慣化への近道になるのです。
先の目的・目標よりも報酬こそ考え抜こう
もちろん習慣化に当たって、目的・目標を立てるのは非常に大事です。
ですが、実際に動くときには、ここまで紹介したような報酬こそが鍵になるとお気づきになるでしょう。
ぜひ目的と行動だけに縛られず、自分自身を楽しくさせる報酬を考え抜いておいてください。それこそが、皆さんの習慣化を進める道しるべになるはずですから。
著者プロフィール
■佐々木正悟(ささき・しょうご)
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。