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2019.09.08

1日「たった4分」の運動で身体能力が若返るワケ|血糖値も肝機能も改善する!

東洋経済オンライン

HIITは体力づくりやダイエットだけでなく、血糖値改善や心筋梗塞患者のリハビリ目的にまで使われているそうです(写真:buritora/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/296682?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

HIITは体力づくりやダイエットだけでなく、血糖値改善や心筋梗塞患者のリハビリ目的にまで使われているそうです(写真:buritora/PIXTA)

年を取るにつれて、体力の衰えや認知機能の低下など健康面での心配が増えていきます。しかし、本格的な運動や脳のトレーニングとなるとなかなか実行できないという人は多いかもしれません。そんな人々のために医師であり科学者でもある川田浩志氏が勧めるのが、HIITという最新トレーニングです。

有酸素運動と無酸素運動が一度にできて、しかも毎日数分で大きな効果が出るというこの運動法は、体力づくりやダイエットはもちろんのこと、認知機能の向上効果も検証されているのだそう。さらに今や最新医療の現場では2型糖尿病患者の血糖値改善や心筋梗塞患者のリハビリ目的にまで使われています。その最新のトレーニングについて話を聞きました。

「筋トレ+脂肪燃焼」のダブル効果がある夢の運動法

「運動は体に悪い」なんていう珍説もありますが、医師の立場から言うと、バランスのよい食事と適度な運動は健康に欠かせません。ただ、やみくもに運動をしても効果がなかったり、身体を痛めてしまったりということはあるかもしれません。

そこで、私がオススメしたいのが、今世界の医師も注目している「HIIT(ヒット)」という最新トレーニングです。

ご存じの方もいると思いますが、「高強度(High Intensity)の負荷のかかる運動と休憩を短い間隔(Interval)で繰り返すトレーニング(Training)」のこと。

特別な器具や難しい動きなどは必要なく、既存の運動、例えばスクワットやバーピーなどを高速(全力)で短時間行い、休息(または負荷のかからない運動)を挟んで再び高速運動を短時間行う、ということを数セット繰り返すトレーニング方法です。

このトレーニングのすごいところは、「有酸素運動」と「無酸素運動」両方の運動効果が得られること。これにより、実質1分ほどの短時間の運動でも、軽めの運動45分に匹敵する運動効果が認められているのです。

では、実際の効果を見てみましょう。

人の「持久力」「スタミナ」「体力」といったものを推し量る重要なバロメーターは、「最大酸素摂取量」です。これは簡単にいうと、「エネルギーを生み出す燃料として、どれだけ多くの酸素を使えるか」を示す数値のこと。段階的に負荷を増していき、負荷を増してもそれ以上は酸素消費が変化しなくなったときの酸素摂取量が、最大酸素摂取量となります。

最大酸素摂取量は年齢とともに低下するので、最大酸素摂取量が増加するということは、身体能力の若返りを意味します。

HIITとほかの2種類の運動効果を比較

この最大酸素摂取量を、HIITとほかの運動とで比べた実験の結果を見てみましょう。

この研究では、「HIITグループ」「筋トレグループ」「有酸素運動+筋トレグループ」「運動なし」の4つのグループに分けて検証しました。

図の左側は実験(運動)前の若者グループ(18~30歳)と高齢者グループ(65~80歳)の最大酸素摂取量で、図の右側が12週間後の最大酸素摂取量の増加量です。

「運動なし」と書いてあるのは参考値のようなもので、12週間運動をしなかった場合の最大酸素摂取量の変化です。高齢者グループは変動がほぼありませんが、若者グループは最大酸素摂取量が低下していることがわかります。

12週間経って値がどう変化したかを見ていくと、HIITグループと有酸素運動+筋トレグループで最大酸素摂取量が有意に増加しました。

とくに若者グループでは、HIITでの増加が顕著で、有酸素+筋トレでは最大17%の増加でしたが、HIITではなんと最大28%もの増加が見られました。高齢者グループでも、HIITと有酸素+筋トレで有意な増加が見られました。

一方、筋トレだけを行ったグループでは、若者グループと高齢者グループともに、有意な増加が見られませんでした。「無酸素運動にあたる筋トレだけでは、持久力アップに限界がある」ことを裏付けるデータとなりました。

HIITは血糖値を改善する

私がHIITをとくにお勧めしたいのが、血糖値が気になっている方や糖尿病の方。中でも、食生活には気を配っているものの、運動習慣が根付いていない方はとくに大きな効果が見込めるでしょう。

糖尿病の病状改善のための研究を見ると、HIITが取り上げられる頻度がここ数年で明らかに増えています。

HIITが、筋肉にもたらす変化は大きく分けると3つあります。

1  筋肉の運動能力の増加(筋小胞体内へのカルシウムイオンの取り込み促進)
2  最大酸素摂取量の増加(ミトコンドリアの量と質の改善)
3  細胞へのグルコース(ブトウ糖)の取り込み促進(GLUT4の増加)

とくに、血糖値に影響を及ぼすのが2と3です。

インスリン感受性を上げるには、1つはミトコンドリアの量と質を改善することです。そしてもう1つがGLUT4を増やすこと。GLUT4とは、ブトウ糖を細胞内に搬入するトラックのようなもので、GLUT4が多いほど、細胞のブトウ糖の取り込み量が増えるのです。

ある調査研究結果を見てみましょう。

ここでは、「通常の運動群」「HIIT群」「運動を行わない群」の3つのグループに分けて実験を行い、最初の測定値に比べて12週間後にインスリン感受性が何倍になったかを示しています。

12週間にわたってHIITを実践したグループは、インスリン感受性が有意に改善していることがわかります。

このほかにも、2型糖尿病患者がHIITを実践した結果、わずか2週間(週3回、計6セッション)でも血糖値を有意に改善させたという別の調査研究結果もあります。

対象となったのは平均年齢62.5歳、平均BMI31.7の8人で、1回のセッションで自転車エルゴメーターを1分間、最大心拍数の80~90%でこぎ、1分間の休憩を入れる運動を10セット行いました。

その結果、外側広筋(がいそくこうきん/大腿四頭筋の中で、最も大きな筋肉。太ももの外側についている)のGLUT4は3.7倍にも増加。

血糖値の変化は、被験者の24時間血糖値の平均は136~118㎎/dlまで低下しました。これが、わずか2週間の結果だというのですから驚きです。

お酒好きの方に朗報。HIITは肝機能も改善する

ビールがおいしい季節。HIITはそんなお酒好きの方にもピッタリの運動です。というのも、HIITは肝機能の改善に大きな効果をもたらすからです。

英国のニューカッスル大学が行ったこんなデータがあります。2型糖尿病患者に協力してもらい、患者をHIIT実施グループ(12人)とHIIT非実施グループ(11人)に分けて、12週間後の肝臓脂肪量の変化を調査しました。

その結果、HIIT非実施グループでは肝臓脂肪量に有意な変化は認められなかったのに対し、HIIT実施グループでは、平均39%もの肝臓脂肪量の減少が見られました。さらに、HIIT実施グループのうちの4例では、脂肪肝が完全に消失していたといいます。

さらに、同じ研究者らが23人の非アルコール性脂肪肝(お酒以外が原因の脂肪肝)の患者にも協力してもらって同様の調査を行った結果でも、やはりHIIT実施グループでは、有意に肝臓脂肪量の低下と肝機能(AST値< GOT値>)の改善が見られたのです。

さらに、年を取るにつれて心配なのが、体力の衰えだけでなく認知能力の低下です。

HIITは、脳の神経細胞にもよい効果を及ぼしている可能性がさまざまな研究からわかってきています。

私が30年以上前に大学で医学を勉強したときは、「大人になったら脳細胞は死んでいく一方だ」と教わったものでした。確かに人の脳細胞には寿命があり、一度死んだ脳細胞がよみがえることはありません。

しかし、近年の研究から、それと同時に、人間には新しい脳細胞を生み出す力が備わっていることがわかったのです。しかもそれは、年齢を問いません。高齢の方でも脳細胞が新しく生み出せるのです。

そして、その際に重要なのが、BDNF(brain-derived neurotrophic factor、脳由来神経栄養因子)と呼ばれる、脳細胞の増加や成長を促すタンパク質です。

医学の世界では、運動がBDNFの産生を促進することはすでに知られていたのですが、2015年に発表されたラットを使った研究で、ジョギングのような中等度の持続的運動よりもHIITのほうが脳内のBDNFを増加させるという結果が得られました。

2018年に報告されたラットを用いた別の研究では、HIITをさせることで認知機能や記憶に重要な脳の海馬におけるBDNFの産生が高まることがわかりました。

人の場合は血液中のBDNFを調べる方法が取られています。その結果、HIITを行うことで血清BDNF濃度が上昇することが確認されています。

さらに、別の研究では、たった1回のHIITでも血清中のBDNFが増えることが示されており、実際に認知機能を評価するさまざまな研究からもHIITが認知機能の向上に役立つ可能性が示唆されています。

世界の医学論文で健康効果が立証された最新の運動法

このほかにも、高血圧を改善する、善玉と悪玉コレステロールのバランスを整える、代謝に関わる多くの遺伝子情報の発現においてもプラスに働くなど、さまざまな健康増進効果があることがわかっています。

HIITは、世界の医学論文で健康効果が立証された最新の運動法であり、今や病気を患った人のリハビリや体力の落ちた高齢者にも使われているほど安全です。


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もちろん、運動自体を制限されている方は医師に相談する必要がありますが、近年のHIITの安全性を示す多くの研究結果を踏まえると、「ほかの運動と比べて、HIITがとくに危険ということはない」と考えられます。

「キツすぎて、自分には無理そう……」と心配する方もいるかもしれませんが、ご安心ください。私がオススメするHIITは、プロアスリートのトレーニングのように極限までの負荷をかけるもの(オールアウト。タバタ式などはこれに含まれる)ではなく、最大心拍数の7~8割の負荷をかけるトレーニングなので、ふだん運動不足の方でもチャレンジできます。

極限までの負荷が「最高にキツイ」「非常にキツイ」と感じるものだとすれば、7~8割の負荷では「キツイ」「ややキツイ」といった体感レベルです。もちろん、7~8割の負荷であっても十分に効果が出ます。

本当に短時間で済む効率のいいトレーニングですから、日ごろ運動習慣のない人ほどトライしやすいでしょう。ぜひ取り入れてみてください。

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川田 浩志:東海大学医学部内科教授(血液内科学)、医学博士

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