2019.09.18
ちょっとした習慣ががんを防ぐ!具体的ながんの予防法を公開!
前回の記事でお伝えしたように、多くのがんは予防できることがわかってきました。がんのリスクを低下させるには5つの健康習慣を実践することが鍵となります。
では、具体的には何を、どんな風に実践していけば良いのでしょうか?
間違った情報で将来後悔をすることがないよう、科学的根拠に基づいた本当に正しいがんの予防法を紹介します。
指導していただいたのは前回に引き続き、国立がん研究センターの井上真奈美先生です。
■がんの基礎から予防効果まで丸わかり!今すぐ読みたい前編はこちら
がんを予防する5つの健康習慣を徹底解説
科学的根拠に基づくがんの予防法
早速、科学的根拠に基づくがんを予防する5つの健康習慣について解説していきます。
これらは、昔から「身体に良いこと」と認識されていたものがほとんどです。それが、がん予防につながる科学的根拠がある、という部分に面白さがあります。
ご自身の習慣と照らし合わせて、チェックするつもりで読んでみましょう。
①たばこは絶対に吸わない!さらに、他人のたばこの煙を避けよう!
たばこを吸っていると、肺がんになりやすいのはもちろん、口腔がん、舌がん、咽頭がん、食道がん、胃がんなどにもなりやすくなります。つまり、煙が通るところ全てががんになるリスクがあるということです。
たばこは1日2箱を20〜30年吸っていると寿命が10年短くなると言われており、たばこをやめるだけでがんになる確率は30%も減らせます。
さらに、脳卒中、心臓病、糖尿病など多くの生活習慣病のリスクを減らすこともできます。
たばこは百害あって一利なし。絶対にやめたほうがいいでしょう。
また、副流煙も深刻な問題です。副流煙のほうが発がん物質を多く含んでいます。
夫がたばこを吸っていると、たばこを吸っていない配偶者が肺線がんになるリスクは2倍高いことがわかっています。
たばこを吸うと、自分だけでなく家族にも悪影響があるということを是非覚えて禁煙をしましょう。
②お酒を飲むなら節度を守ろう!!
お酒は、飲みすぎるとがん全体のリスクが増加することがわかっています。アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドという物質に発がん性があるためとされています。
1日あたりの平均アルコール摂取量が、純エタノール量で46g以上(ワイングラス4杯ほど)で40%程度。69g(ワイングラス6杯ほど)以上で60%程度もがんになるリスクが高くなります。
そのため、国際的には全く飲まない方が良いとも言われているようです。
ただ、少量の飲酒や節酒は心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げることが知られているので、疾患横断的に判断して、「飲むなら節度のある飲酒をする」ということを推奨しています。
どうしてもお酒を飲みたい方は休肝日を作ることが大切。休肝日がある人とない人を比べると、休肝日がある人の方で早死のリスクが下がります。
特に気をつけなくてはいけないのは喫煙者です。たばこを吸う人がお酒を飲むと組み合わせの効果で発がんリスクをぐっと高めます。
③減塩し、バランスよく色々なものを食べる
食生活に関しては、かなり多岐にわたるので、細かく見ていきましょう。
▶︎減塩する
高塩分食品を摂りすぎると胃がんのリスクになることがわかっています。日本人は特に気をつけなくてはいけないポイントです。和食はいろいろな食べ物を食べるのでバランスが取れていて非常に健康的ですが、欠点は塩分が多いこと。
日本人は高塩分食品を多く摂るため、アメリカなど塩分をあまりとらない国に比べ、胃がんになる人がかなり多いのが特徴です。
塩分を摂りすぎると、胃がんだけでなく高血圧の原因にもなります。心筋梗塞や脳卒中にもなりやすいので、気をつけましょう。
日本人の塩分摂取量は、平均10グラム程度。
厚生労働省は日本人の食塩摂取量を男性で8グラム未満、女性で7グラム未満と推奨しています。
しかし世界保健機構(WHO)の基準では5グラム未満と、今の日本人の摂取量の半分が理想とされています。
世界の基準よりもかなり甘い基準だということを心得て、しっかり減塩していきましょう!
▶︎野菜と果物をたくさん食べよう!
野菜と果物には、抗酸化物質がたくさん含まれていて、食道がんや胃がん、肺がんのリスクを低くする可能性があることがわかっています。脳卒中や心筋梗塞等をはじめとする生活習慣病全体の予防にもつながるので、できるだけ毎日野菜や果物を摂るようにしましょう。
野菜と果物の1日の摂取量は400g以上。野菜を小鉢で5皿分と果物1皿分が目安です。
なお、この場合の野菜には穀物やいも類は含みません。日本人は世界と比べて、果物をあまり食べていないので、もっと意識的に摂りましょう。
▶︎熱い飲み物や食べ物は冷ましてから!
飲み物や食べ物を熱いままとると、食道がんのリスクが高くなるという報告があります。
飲み物や食べ物が熱い場合は、少し冷まして口の中や食道の粘膜を傷つけないようにしましょう。
▶︎加工肉と赤肉を摂り過ぎない
ハムやソーセージなどの加工肉や、赤肉(牛・豚・羊の肉のこと 鶏肉は含まない)は、大腸がんのリスクを増加させる可能性があります。毎日たくさん食べている人は、要注意です。
一般的には、一週間で500g以内が理想です。
赤肉の替わりに、魚や大豆などのタンパク質を摂る回数を増やすなど、食べる食品の種類を増やすことを心がけましょう。
④身体を動かそう
仕事や運動などで普段から動いている人の方が、がんのリスクも低くなります。
運動の種類は問いませんが、無理のない範囲でとにかく体を動かす時間を増やしていくことが大切です。肉体労働などで身体をよく使っている人などはあえて余暇にする必要はないですし、デスクワーク中心の方は意識的に運動する機会を増やすなど工夫すればよいのです。
厚労省が推進している活動量は、「1日1時間ぐらいのウォーキングなどの身体活動と、週1回60分ぐらいの息がはずみ汗をかく程度の運動」です。
これは、毎日1駅分歩いたり、子供と公園で遊んだりと、少し身体を動かすことを心がけると達成できる運動量だと思います。ご自身のできる範囲で、今よりも動くことを心がけていきましょう。
⑤太りすぎはダメ!痩せすぎはもっとダメ!?
がんによる死亡のリスクと総死亡のリスクが、BMIによってどう変化するかという研究結果を見てみると、男女共太りすぎでも痩せすぎでもリスクが高くなることがわかります。がんの死亡リスクに関しては、男性では肥満よりも痩せている人の方が高くなりました。
女性においては、がんによる死亡リスクはBMI30.0~39.9(肥満)で25%高くなりました。特に閉経後は肥満が乳がんのリスクを増加させることが確実とされていますので、太りすぎには注意しましょう。
出典:Sasazuki S. et al.: J Epidemiol. 2011;21(6):417-30を改編
その他:「感染」もがんの主要な原因
日本人のがんの原因として、女性で一番、男性でも二番目に多いのが感染です。
B型・C型肝炎ウイルスは肝がん、ピロリ菌は胃がん、ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんのリスクを増加させます。肝炎ウイルスの検査を受けたことがない人は、地域の保健所や医療機関で一度は検査を受けましょう。また、機会があればピロリ菌の検査を受けることもお勧めします。
いずれの場合も感染したら必ずがんになるわけではありません。それぞれの感染の状況に応じた対応をとることで、がんを防ぐことに繋がります。
小さな積み重ねががんの予防につながる
がんはある程度予防ができ、正しい検診を受けて早期に治療すれば治る場合も多く、死の病気ではなくなってきています。
今回、がんのリスクを下げる5つの健康習慣についてお伝えしましたが、「正しい情報を知ること」これががん予防の大きな鍵だと思います。
日々の小さな心がけひとつで、10年後、20年後人生が大きく変わります。
是非、家族や周りも巻き込みながら実践してみてください!
参考文献
井上真奈美(いのうえ・まなみ)先生
国立がん研究センター 社会と健康研究センター予防研究部部長
1990年筑波大学医学専門学群卒。1995年医学博士取得。1996年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。愛知県がんセンター研究員、国立がんセンター室長、東京大学特任教授等を経て、2018年より現職。専門分野はがん疫学。
著者プロフィール
■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。