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2019.09.18

これが科学的根拠に基づくがん予防だ!後悔しないがん対策

kencom公式ライター:森下千佳

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日本人死因トップといえば『がん』です。
罹患率は増え続け、近いうちに3人に2人はがんになる時代がやってくると言われています。しかし、自分や大切な家族の命を奪いかねない病気にもかかわらず、がんはどこか他人事であることが多いものでもあります。自分は大丈夫、かかるとしても遠い先だろう、と深く考えないようにしていませんか?

今回は、最先端のがん研究をされている国立がん研究センターの井上真奈美先生に、絶対に知っておきたいがんの基礎知識と、がんにならない予防方法を伺いました!

井上真奈美(いのうえ・まなみ)先生

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国立がん研究センター 社会と健康研究センター予防研究部部長
1990年筑波大学医学専門学群卒。1995年医学博士取得。1996年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。愛知県がんセンター研究員、国立がんセンター室長、東京大学特任教授等を経て、2018年より現職。専門分野はがん疫学。

身近なのに縁遠い『がん』という病にせまる

そもそも『がん』って何ですか?

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簡単に言うと、異常な細胞が増えてしまう病気です。

人間の体内には細胞が60兆個もあって、通常、細胞は分裂を50回ぐらい繰り返すと死滅するようにできています。細胞が死ぬと、新しい細胞に入れ替わり新陳代謝をします。ところが、この過程を繰り返す中でコピーミスが起こることがあるのです。
ミスをした細胞は死んでしまったり、身体の中で修復されたりするのですが、ごく稀に見逃されてしまうことがあります。これが、「がん細胞」です。

このがん細胞が分裂をし、2つになり、4つになり、徐々に増殖スピードをあげて爆発的に増えてしまうと病気の「がん」になります。
よく、「たばこを吸うとがんになりやすい」「紫外線を浴びるとがんになる」などと言いますよね。こういった行為は細胞にとって刺激となってコピーミスを起こしやすくし、がん細胞を増やすことにつながるため、そう言われるのです。
ひとつひとつは小さな刺激でも、長い年月を積み重ねていくと大きな力になってしまいます。つまり、がんには生活習慣が大きく関係しているのです。

国立がん研究センターがん情報サービス,「細胞ががん化する仕組み」の内容を図化・改編
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/knowledge/cancerous_change.html

国立がん研究センターがん情報サービス,「細胞ががん化する仕組み」の内容を図化・改編 https://ganjoho.jp/public/dia_tre/knowledge/cancerous_change.html

日本人男性の2/3、女性の1/2ががんになる時代!

厚生労働省(2018),「人口動態調査」P18主な死因別にみた死亡率の年次推移-昭和22~平成28年-を改編

厚生労働省(2018),「人口動態調査」P18主な死因別にみた死亡率の年次推移-昭和22~平成28年-を改編

現在、日本人が生涯でがんに罹患する確率は男性62%、女性47%です。
つまり、男性の2/3、女性の半数ががんになる時代です。しかも、今後は男女共にもっと増えるだろうと言われています。
その最大の原因は寿命が延びたこと。加齢と共に細胞のコピーミスが増え、免疫力も低下します。
また、生活習慣による危険因子も積み重なっていくため、寿命が延びれば延びるほど、がんになる人は増えていくと考えられています。

がん家系ってあるの??

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遺伝によって引き起こされるがんもありますが、遺伝の影響はせいぜい5%だとされています。
例外的に、親や兄弟が「大腸がん」「乳がん」「卵巣がん」「前立腺がん」などの一部のがんになっている場合は、本人もなりやすい傾向があるという研究結果があります。
むしろ、環境や食生活などの生活習慣によるリスクの方が大きいでしょう。

「がんになりやすい家系」があるように思われるのは、家族は食生活などの生活習慣が似るからでしょう。

例えば、塩辛い味付けの親の元で育った子供は、塩辛いものが好きになり胃がんのリスクが高まりますし、父親がたばこを吸っていれば副流煙の影響で家族もがんになりやすくなる可能性が高いと言えます。
このように、大人のがんの原因は生活習慣で多くを説明できると考えられています。「がんは生活習慣病」と言われるのはその所以です。

多くのがんは予防できる!

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あまり知られていませんが、多くのがんは予防ができます。しかし、それは「〇〇と、△△を止めれば絶対にがんになりません!」のような単純なものではありません。

下の図は2005年の日本人がん罹患率のうち、もし特定の要因がなかったとしたら何パーセントが予防可能だったかを試算した研究です。
驚くことに、男性のがんの53%、つまり半数以上が生活習慣を変えることで予防できたことになります。
女性のがんでも約3割が予防可能です。

Inoue, M. et al.: Ann Oncol, 2012; 23(5): 1362-9を改編

Inoue, M. et al.: Ann Oncol, 2012; 23(5): 1362-9を改編

なかでも、日本人のがん予防に重要と判明しているのは、以下の6つです。

「禁煙」
「節酒」
「食生活」
「身体活動」
「適正体重の維持」
「感染」

このうち、「感染」以外は、日頃の生活習慣にかかわるもの。
以下の図の5つの健康習慣を実践することで、がんになる危険性を低くしていくことが可能となります。

国立がん研究センター(2016),「科学的根拠に基づくがん予防」P5の表を改編

国立がん研究センター(2016),「科学的根拠に基づくがん予防」P5の表を改編

科学的根拠に基づく予防法!5つの改善でこれだけ下がる!

5つの習慣はどれも当たり前すぎて、わかってはいるけれどなかなか実行できない。そう思った方は少なくないと思います。
そんな方は、以下の結果にかなり衝撃を受けるのではないでしょうか?

Sasazuki, S et al,: Prev. Med., 2012; 54 2 :112-6を改編

Sasazuki, S et al,: Prev. Med., 2012; 54 2 :112-6を改編

実際に「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣に気をつけて生活してした人と、そうでなかった人とは実際にはどのくらいがんになるリスクが違うのでしょうか?
国立がん研究センターが長い年月をかけて生活習慣と罹患率について調査した結果では、5つの健康習慣を実践する人は、しなかった人、もしくは一つだけ実践した人に比べて、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低下したという推計が示されました。男性では、ほぼ半減しているのです。

がんは予防できる!その方法を次回公開

がんという病気の原因と予防の効果についてわかっていただけたのではないでしょうか?
一方で、どんなことをやったらいいのか実践に関して気になってきていると思います。
次の記事では、それぞれの実践方法を詳しくご紹介していきます。

■科学的かつ具体的ながん予防法は後半をチェック!

参考文献

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。