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2019.09.11

あなたは大丈夫?風疹のワクチン接種はもはや社会のマナーに

kencom公式ライター:松本まや

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症状自体の危険性はそれほど高くないものの、妊婦に感染してしまうと取り返しのつかない事態を招きかねない風疹。
後編では、その先天性風疹症候群の恐ろしさと、何度も変遷してきた風疹の予防接種施策について、引き続き国立感染症研究所の竹田誠先生に説明していただきます。

■油断大敵!国内で感染者増加中の風疹を知っておこう!

風疹は個人だけでなく、社会で防ぐのが重要な病気

風疹によって起こる『先天性風疹症候群(CRS)』とは

出典:厚生労働省『職場みんなで風しん対策 風しんの予防接種を受けましょう』P2の図を引用・改編
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/shokuba-fuusin_1.pdf

出典:厚生労働省『職場みんなで風しん対策 風しんの予防接種を受けましょう』P2の図を引用・改編 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/shokuba-fuusin_1.pdf

風疹は感染力が強く、まれに重い合併症を伴うことがあるため軽視はできないものの、死に至る程重篤化するケースは少ない病気です。そもそも病気として認識され始めた当初は「特に危険視する必要はない」と考えられていました。

しかし、1940年代になって風疹が流行した後に、先天的に障害を持つ赤ちゃんが生まれるケースが多いことが分かってきました。風疹との関連性が疑われるようになり、先天性風疹症候群(CRS)の存在が明らかになったのです。

先天性風疹症候群は、妊娠初期の女性が風疹に感染した場合に、胎盤を通じて胎児にも感染し、生まれてきた赤ちゃんに障害が発生する病気です。母親が風疹への感染に無自覚であっても発症する場合があります。
2012~14年の流行の際には、約40人に発症したことが分かっており、今年に入ってからは5年ぶりに発症が確認されています。

発生しやすい症状は、黒目が白く濁り、物がかすんで見えてしまう白内障や、難聴、先天性心疾患です。
その他では、低体重で生まれてしまう、血液の血小板が少なく紫の斑点が皮膚に出現する血小板減少性紫斑病という病気になる、などのケースもあります。

妊娠初期であればあるほど危険

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先天性風疹症候群は、妊娠初期であればあるほど発症のリスクが高まり、まだ妊娠に気付いていないこともあるような妊娠1ヵ月では50%に発症すると言われています。

さらに妊娠初期であればあるほど、赤ちゃんの症状も重篤化する傾向があります。これは風疹ウイルスが、母親のお腹の中で胎児が成長するプロセスに影響を及ぼすためと考えられています。
赤ちゃんが成長しており、身体の器官が形成されていればいるほど、影響は少なくなるので、妊娠後期の女性はそれほど心配する必要はありません。

竹田誠監修,財団法人日本予防医学協会『知って欲しい麻しん、風しんQ&A』より引用・改編

竹田誠監修,財団法人日本予防医学協会『知って欲しい麻しん、風しんQ&A』より引用・改編

妊婦の感染では、家族から感染してしまったケースも多くあります。
2013年に実施された感染症発生動向調査によると、風疹患者の感染経路で最も多いのは職場で、その次に多いのが家族からの感染でした。

パートナーが妊娠している男性は、「自分は大丈夫」などと思わず、家族を守るために確実にワクチンを打つ必要があるのですね。

日本で発生した最近の流行は?

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日本では、1990年代ごろまで5~6年ごとに大規模な全国流行がありました。1995年に男女幼児がワクチン定期接種の対象となってからは大規模な流行は少なくなったものの、2013年には1万4千人以上が感染する大流行が起こりました。
2018年からまた全国で流行しており、2019年にかけても収束していません。

近年の特徴は、風疹の抗体の保有率が低い世代、とくに男性で流行しているということです。風疹ワクチンの定期接種の方針は時代によって変遷してきました。

国立感染症研究所 感染症疫学センター『首都圏における風疹急増に関する緊急情報:2019 年3 月1 日現在」(2019年3月26日公開)を基に作成・改編

国立感染症研究所 感染症疫学センター『首都圏における風疹急増に関する緊急情報:2019 年3 月1 日現在」(2019年3月26日公開)を基に作成・改編

風疹の対策では、先天性風疹症候群を予防することが最も重視されてきたため、1995年までは中学生の女子だけが、学校で集団接種の対象とされてきました。
その後、先天性風疹症候群を予防するためには、まず流行自体を食い止める必要があると考えられるようになり、1995年からは90ヵ月未満の男女が対象となりました。
それまで学校での集団接種が病院での個別接種になったため、この移行期には接種率が少し下がります。

2006年以降は1歳と就学前の2回の定期接種が導入されたため、若い世代は免疫状態がとても良いのが特徴です。
抗体の保有率に世代間、男女間で大きな差があることがよく分かりますね。
抗体を保有しない世代、とくに男性で風疹が流行していることを受け、厚生労働省は2022年3月までの間、これまで公的接種の対象だったことがないために抗体の保有率が低い世代の成人男性を、定期接種の対象に追加しました。
1962年4月2日~1979年4月1日に生まれた男性は、抗体検査の後に原則無料で予防接種が全国で受けられます。

抗体を保有しない世代で風疹が流行していることを受け、厚生労働省は2022年3月までの間、これまで公的接種の対象だったことがないために抗体の保有率が低い世代を、定期接種の対象に追加しました。
1962年4月2日~1979年4月1日に生まれた男性は、原則無料で予防接種が全国で受けられます。

ワクチン接種は社会のマナー、感染を食い止めるために必ず受けて

ここまでご説明した通り、風疹そのものを発症しても死に至るほど重篤化することは多くありません。自覚的な症状が出ない場合もあるほどです。

しかし、1日で何人の妊婦とすれ違っているのか想像したことはありますか?知らないうちに妊婦にうつし、生まれてくる赤ちゃんに影響を及ぼしてしまうかもしれません。
国内での感染を食い止める鍵は任意接種も含めて30代以上の男性を中心に、ワクチンの接種率を向上していくことです。積極的な予防が何よりも大切です。

竹田誠(たけだ・まこと)先生

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国立感染症研究所 ウイルス第三部 部長
1992年3月信州大学医学部卒。信州大学小児科、東京大学医科学研究所、ノースウェスタン大学/ハワードヒューズ医学研究所、九州大学大学院医学研究院を経て国立感染症研究所に入所。2009年より現職。発熱発疹性ウイルス、呼吸器感染症ウイルスを中心に研究を行っているほか、麻疹・風疹の専門家として厚生労働省などと連携し対策を講じている。

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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