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2019.09.11

昨年から国内で流行中!『風疹』を甘くみてはいけない理由

kencom公式ライター:松本まや

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2018年から今年にかけて大規模な流行を起こしている風疹。2019年は7月24日時点で2000人以上の患者が確認されています。「子供の病気」というイメージを持っている人も少なくないですが、実は今回の患者の94%が成人です。
流行を食い止めるために何ができるのか。国立感染症研究所の竹田誠先生に教えていただきました。

竹田誠(たけだ・まこと)先生

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国立感染症研究所 ウイルス第三部 部長
1992年3月信州大学医学部学卒。信州大学小児科、東京大学医科学研究所、ノースウェスタン大学/ハワードヒューズ医学研究所、九州大学大学院医学研究院を経て国立感染症研究所に入所。2009年より現職。発熱発疹性ウイルス、呼吸器感染症ウイルスを中心に研究を行っているほか、麻疹・風疹の専門家として厚生労働省などと連携し対策を講じている。

「麻疹」とは全く別物!風疹ってどんな病気?

風疹とはどんな病気?

風疹は風疹ウイルスによって引き起こされる急性感染症で、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状が出現します。くしゃみや咳で感染する「飛沫感染」によって、免疫のない人の集団であれば、1人の患者から平均5~7人にうつす強い感染力を持っています。
「子供の病気」というイメージを持つ人も多いですが、今回の流行では患者の94%が成人。男性が女性の3.9倍で、特に30~40代が60%を占めています。

「3日麻疹(はしか)」などと言われることもあり、麻疹と発疹などの症状が類似している点もあることから、混同されることも多いですが、全く別の病気です。
子供がかかると比較的症状が軽いと言われている一方で、成人は重症化しやすい傾向があります。脳炎などを合併し、入院が必要になることもあるので、決して軽視できません。

また、風疹で最も怖いのが「先天性風疹症候群」の発症。妊娠後期では、その心配は小さくなりますが、妊娠初期の女性が風疹に感染すると、出生児の目や耳、心臓などに障害が生じることがあります。

風疹はどんな症状が出るの?

風疹ウイルスについてはまだ詳しいことが分かっていない部分もあるものの、喉付近で感染してリンパを経由して全身に感染が広がっていくと考えられています。

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風疹に感染した場合でも、明らかな症状が現れない「不顕性感染」に止まり感染を自覚しない人から、まれではありますが重篤な合併症を発症してしまう人まで、症状の重さは様々です。
典型的には、感染してから14~21日程度とやや長い潜伏期間を経て、耳の後ろなどのリンパ節の腫れや発疹、発熱などの症状が現れます。

これらの症状が全て出現しない人もいるため、症状を見ただけで風疹と診断することはとても難しく、確定的な診断のためには検査をしなければなりません。「過去に風疹に感染した」と思っている人でも、他の病気と間違われているケースもあるので注意が必要です。

風疹の治療方法

感染した場合、風疹そのものを治療するための薬はありません。発症してしまったら解熱剤の処方など、症状を和らげる対症療法が中心になります。

実は風疹ウイルスはヒトには感染しないという特性があります。類似したウイルスも現在見つかっていないため、研究が進んでおらずまだよく分かっていないことも多いのです。よく比較される麻疹の場合は、サルなどの動物にも感染するため、動物を使った実験を行うこともでき、より多くのことが解明されています。

ワクチン接種が最大の予防策

風疹の予防には、ワクチンの接種が最も有効です。
風疹のワクチンは1回の接種で95%の人が免疫を獲得することができます。さらに2回目を接種することで1回目だけでは免疫を獲得できなかった人の多くに、免疫をつけることができます。

ワクチンを受けることで副反応が出る場合もあります。一番多いのが発熱で、2週間以内に発熱する人は約13%です。その他には、一部の人に発疹やアレルギーによるじんましんなどが出現します。
しかし、それ以上にワクチンの有効性は高く、感染の広がりを食い止める唯一の方法とも言えるので、周囲の人、とくに妊婦さんとその赤ちゃんを守るためにも必ず接種してください。

侮れない風疹は社会全体で防ぐのがポイント

風疹と聞くと、症状が重篤化しにくいために軽く考えてしまいがちな人も多くみられます。しかし、妊婦に感染してしまうと取り返しがつかないほど大きな問題に発展することも。
自分がかからないことはもちろん、周りに広めないことも大事な予防策となってきます。
次回は、風疹によって引き起こされる先天性風疹症候群(CRS)の重要な問題と、社会全体での予防の正しい考え方をお伝えします。

■もはや社会人としてのマナー!風疹ワクチンについての話はこちらから

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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