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2019.08.21

「たかが盲腸」と言わないで! 大人の虫垂炎は命に関わる病気にも【虫垂炎・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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「盲腸」という通称で知られていることが多い虫垂炎。多くの人が罹ることから「虫垂炎は大したことのない病気」と、軽く受け止められがちですが、実は虫垂炎は他の大腸の病気や腹膜炎につながり、最悪の場合「命に関わる病気になりうる」こともあります。
誰もが聞いたことがあるのに、実は知られていないことだらけの虫垂炎について、今回は北里大学北里研究所病院副院長の石井良幸先生に(一般・消化器外科部長)にお話を伺いました。

石井良幸(いしい・よしゆき)先生

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北里大学北里研究所病院 副院長
1991年慶應義塾大学医学部卒業。北里大学北里研究所病院副院長、一般・消化器外科部長 日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医。
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、北里大学医学部教授、慶應義塾大学医学部客員教授、医学博士。

身近な病気だからこそ気をつけたい虫垂炎

なぜ虫垂炎を「盲腸」というのか

「盲腸」というのは病名ではなく、小腸の出口で大腸のはじまりの部分であり、実は実際に炎症を起こし腹痛の原因になるのは盲腸そのものではありません。
盲腸には、直径5~6mmで、長さが6~10cmぐらいの細い管である「虫垂(ちゅうすい)」という臓器がついていて、ここに便などが詰まって細菌が繁殖して炎症が起きると腹痛を引き起こします。ですから、正式な病名は「虫垂炎」と言います。

広く「盲腸」と呼ばれているのは、むかし虫垂炎は発見が遅れたため盲腸まで炎症が広がっていることが多く、手術をした医師が「盲腸(炎)」と話したことが定着したと言われています。

虫垂の役割と虫垂炎が引き起こされる過程

虫垂は、もともと草食動物の間で非常に発達した部位で、草などの植物を消化するのに重要な働きをしていたと考えられています。人間では必要がなくなってきたので退化してしまい、今は細い管として残っているのみで機能はしていないというのが通説ですが、最近では腸内細菌のバランスや免疫に関わっている可能性が考えられています。
この虫垂に便などが詰まり閉塞すると、中で細菌が異常繁殖し、それに伴い炎症が起きて、まずみぞおちあたりに鈍い痛みが現れます。

さらに炎症が進むと、痛みがへそのあたりに移動して、最終的に右下に移っていきます。37度〜38度の発熱を伴うことも特徴です。
もっとひどくなると虫垂に穴が空いて腸の内容物がお腹の中に漏れてしまい腹膜炎を起こし、激痛になります。また、お腹全体が痛くなることもあります。軽い痛みでも我慢せずに、心当たりがあればすぐに受診をしてください。

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腸はうんちを作る部位なので、細菌も沢山います。腸の免疫機能がしっかりしている時は、細菌は体外へ排出されますが、虫垂炎が重症化して腸炎や腹膜炎になると、免疫バリア機能が壊れてしまい細菌や毒素が体内に入り込んできてしまいます。

そうすると血液の中に細菌が入り込み、身体中に細菌が回って、最終的には多臓器不全を起こすケースも。抵抗力の弱い年配の方は特に注意が必要です。
「虫垂炎だから」と軽くみていると死につながることもあるので、実は怖い病気です。

繰り返す虫垂炎 がんが見つかることも

また、虫垂炎だと思っていたら虫垂癌だったというケースもあります。
虫垂炎を何度も起こしその度に薬の治療をしてきた方が、最終的に切除をしたら虫垂がんだったというケースもあります。

大腸がん検査などに使う内視鏡で大腸の状態は確認できますが、虫垂は非常に細い管なのでカメラを入れることができず、中を確認することは出来ません。そのため、虫垂がんは大変見つけにくく、進行してから見つかることが多いため、普通のがんに比べて予後が悪いと言われています。

甘く見ていると重症化も!早めの対処を心がけよう

たかが腹痛、たかが盲腸(虫垂炎)と侮らず、異常を感じたらすぐに受診を!
大人の盲腸は重症化やがんに要注意です。
次の記事では、虫垂炎の治療法と、虫垂炎にならないための生活習慣をお伝えします。

■甘く見てはいけない虫垂炎の治療・予防法はこちら

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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