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2019.08.20

睡眠には2種類ある!眠りの違いと快眠法を考える【快眠ナビ#2】

kencom公式:睡眠改善インストラクター・鈴木麻里子

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睡眠の話になると必ずといっていいほど登場する「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」。別の言い方をするならば、「浅い眠り」「深い眠り」ともいいます。
聞いたことがあるという方も多いでしょうが、実際この違いをご存知ですか。また、ただ寝るだけなのに、何か違いがあるのかと疑問に思われる方も多いでしょう。
実は、これらは質の高い睡眠には欠かせないキーワードなのです。
今日は睡眠の基本とも言えるこれらのキーワードについて詳しく解説します。

「浅い」「深い」、2種類の睡眠が眠りの質を高める

睡眠には5つの段階がある

多くの人が毎日、寝床に入って眠り、時間になったら目覚めるという動作を繰り返しているでしょう。
そこだけを捉えると睡眠は一連の動作のようにみえますが、実は身体や頭の中では場面や時間によって全く異なることが起きているのです。この違いを表現するのに、一般的に眠りの「深さ」という表現を使います。

眠りの深さとは何かいまいちピンとこない方は、学生時代の居眠りを思い出してみてください。
授業中に目の前の文字がぐるぐると揺れ出し、気がついたらまぶたを閉じていて、持っているペンは謎の文字を書いていた。やがて頭が落ちてきて、ペンも手から離れる・・・・・・なんて経験は誰にでもあるでしょう。これがまさに眠りの深さの違いを表しています。前半の部分が浅い眠り、後半のしっかり寝落ちしてしまっているのが深い眠りと言えるでしょう。

レム睡眠は記憶の整理や定着を行う眠り

レム(REM)睡眠とは速い眼球運動(rapid eye movement)を伴うため、その頭文字をとってつけられた眠りになります。

心拍数、呼吸数が増えて不規則になるほか、呼吸が浅くなるのが特徴です。脳波はノンレム睡眠の段階1に酷似していますが、速い眼球運動が見られること、筋電図の活動がほぼないことで、段階1と区別されています。起こされたときに夢を見ていたと実感しやすいのも特徴の1つです。
時間的には朝方(一晩の睡眠の後半)に多く出現すると言われています。
ちなみに、身体は動かないのに脳の活動が見られるため、いわゆる「金縛り」の状態が起こりやすい眠りでもあります。

レム睡眠の役割は主に2つ。身体を休めることと、記憶の整理を行うことです。
特に楽器や絵画といった芸術的な技能や、スポーツなどの運動技能を覚える「非陳述記憶(手続き記憶、言葉で表せない記憶)」はレム睡眠時に定着するとされており、睡眠不足などでレム睡眠が減ると技術の定着が悪くなります。
他にも心のメンテナンスにも関わっていることが近年判明するなど、非常に注目されている睡眠になります。

ノンレム睡眠は脳を休め、知識を定着させる

一方のノンレム(Non-Rem)睡眠は、レム睡眠のような眼球運動がない眠りの状態を指します。

心拍数、呼吸数は安定し、深くゆったりとした呼吸になるほか、寝汗をかくのが特徴です。入眠時に訪れる状態で、一晩の睡眠全体の80%を占めます。ノンレム睡眠は、時間をかけて段階を1→2→3→4→3→2→1と波のように行き来させるのも特徴の一つ。
それぞれ次のような特徴があります。

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これらの深さの判別は睡眠中の脳波、眼球運動、筋電図(オトガイ筋と呼ばれる、口の下にある筋肉)を使った複数の生体情報を測定した結果により分類しています。

ノンレム睡眠の主な役割は脳の積極的な休息とされており、不要な記憶の消去や精神性ストレスを消去する役割があると言われています。
特に勉強で得た知識や当日に見聞きした物事など、言語化できる「陳述記憶」とよばれるものは、ノンレム睡眠時に脳の「海馬」を経由して大脳皮質に定着すると言われています。

また、最初の深い睡眠が現れたタイミングから3時間ほどの間で成長ホルモンがもっとも多く分泌され、身体の成長やメンテナンスが行われるのもノンレム睡眠の大切な機能の1つです。人の睡眠は、眠りの深さの違いによって浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」の2種類に大きく分けられます。また、ノンレム睡眠は、深さによって段階1から4まで差があるため、合計で5段階の睡眠に分類されています。それらの違いについて解説していきましょう。

レム睡眠とノンレム睡眠は交互に出現する

では実際にレム睡眠とノンレム睡眠はどのように現れるのでしょうか。
まず入眠が始まると、ノンレム睡眠が始まります。段階1からスタートし、30分程度かけて2→3→4と進んでいくのです。その後、再び4→3→2→1と浅いノンレム睡眠状態になり、レム睡眠へと移ります。
このノンレム睡眠の始まりからレム睡眠の終わりまでが1つの「睡眠周期」とされています。
1回の周期は約70〜110分とされており、一晩で3〜5回ほど繰り返されています。
一般的な睡眠の場合、深い睡眠(睡眠段階3、4)は、眠りに入ってから最初の3時間で一晩の80〜90%が出現します。つまり睡眠の前半に多いということです。逆に、睡眠の後半は睡眠段階2と、レム睡眠が多く出現するようになります。

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スッキリ目覚めやすいのは、レム睡眠から睡眠段階1になったタイミング。寝返りの直後に睡眠段階1になりやすいので、このタイミングで起こされると眠気が少ない状態で起きやすくなります。
スマートフォンの目覚ましアプリや睡眠トラッカーのアラーム機能で「眠りが浅くなったタイミングで起こす」というのは、このサイクルを利用しています。

睡眠は眠った時間も重要な要素

ここまで解説してお分かりいただいた通り、質の高い睡眠を得るためには、眠った時間も大切になります。
睡眠時間を削ってしまうと、後半のレム睡眠が削られてしまい、記憶の整理や心のメンテナンス時間が失われてしまうのです。
しっかりした睡眠を得られる時間は、成人の場合だと1日7時間程度。これくらいの時間は押さえられるように工夫することが望ましいです。
逆に3〜4時間程度では頭も身体も休めきることはなかなか難しくなります。

必要な時間を眠ってこそ、睡眠の良い効果を得られると覚えておきましょう。

参考文献

日本睡眠改善協議会編(2019)『基礎講座 睡眠改善学 第2版』,ゆまに書房

白川修一郎(2018)『命を縮める「睡眠負債」を解消する』,祥伝社

著者プロフィール

■鈴木麻里子(すずき・まりこ)
ライター、睡眠改善インストラクター。睡眠系の話題に限らず、IT系から家電関連まで幅広いジャンルをカバーする。主な著書に「Facebook仕事便利帳」「iPhone 4 仕事便利帳」(ソフトバンククリエイティブ)など。

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