メニュー

2019.07.23

「同期入社で同じ年収」なのに年金額が違う理由|結婚年齢と妻の年齢で年金が「600万円」の差!

東洋経済オンライン

日本の年金制度は妻の年齢が若いほど年金額が増える!?(写真:kou/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/292609?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

日本の年金制度は妻の年齢が若いほど年金額が増える!?(写真:kou/PIXTA)

ある週末、新橋の居酒屋で男性3人が集まり同期会を行いました。3人とも50歳になったばかり。そろそろ老後のことも意識し始めました。

「俺たち、年金っていくらもらえるんだろうな」

同期入社で勤務年数は28年、収入も大差のない3人ですから、誰とはなしに「受け取れる年金の額だって、そんなに変わんないんじゃないの」ということになり、そのまま乾杯となりました。

でも、ほぼ同じような人生を歩んできたように見える3人ですが、実は、あることが原因で受け取れる年金の額に大きな差がつくのです。

そのカギを握っているのは「妻」。3人とも結婚をしていて、妻は専業主婦というところまでは同じなのですが、大きく違う点がありました。それは「妻の年齢」です。

妻の年齢で年金額に差がつくことを知っている人がどれだけいるでしょうか? 50歳を過ぎたら人ならきっと気になる話を、『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』を出版した人気ファイナンシャルプランナーの山中伸枝氏が解説します。

晩婚、年の差婚は年金額が増える

一応、3人の名前をAさん、Bさん、Cさんということにして、それぞれの家族構成を紹介しておきます。

Aさん=結婚25年。妻53歳、子ども2人で22歳と20歳

Bさん=結婚20年。妻50歳、子ども2人で17歳と14歳

Cさん=結婚2年。妻35歳、子どもなし

目を引くのはCさんでしょう。


『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

結婚して2年。妻は15歳下ですから、晩婚かつ年の差婚という、ちょっと芸能人っぽいケース。一部の男性からは、ちょっとうらやまし気な声が聞こえてきそうです。

AさんとBさんは、オーソドックスなケースですが、恐らくAさんが結婚した25年前は、年上の女性と結婚するのがまだ珍しかった時代だったかもしれません。

それはさておき……。

実際のところ、受け取れる年金にはどのくらいの差が生じてくるのでしょうか。3人とも、20歳から国民年金に、就職と同時に厚生年金に加入し、加入期間中の平均年収が600万円という前提で、65歳から90歳までの25年間に受け取れる老齢厚生年金の金額を計算してみました。

Aさん=5075万2500円

Bさん=5075万2500円

Cさん=5660万4000円

なぜCさんだけが600万円近くも、受け取れる年金の額が多いのでしょうか。「若い奥様なうえに、さらに年金の額がこんなに多いなんて許せん」という恨めし気な声も聞こえてきそうです。これ、別にCさんがズルをしているわけではなくて、年金の制度設計がそうなっているからなのです。

ポイントは2つあります。1つは妻が専業主婦であること。もう1つは年の差婚であることです。

Cさんが、AさんやBさんに比べて年金の額が多くなったのは、「加給年金」を受給できるからです。この分が年間39万0100円あり、それを妻が65歳になるまで受け取ることができます。

したがって、Cさんが65歳から老齢厚生年金を受給するとしたら、その時点での妻の年齢は50歳ですから、Cさんが80歳になるまでの15年間、加給年金を受け取れるのです。15年間の合計額は585万1500円になりますから、この分がAさんやBさんよりも年金の受取額が多いカラクリになります。

もちろん加給年金は誰もが受け取れるものではありません。事実、3人のケースでもAさんとBさんは、加給年金の対象外でした。

ちなみにAさんとBさんの場合は、それぞれが65歳になったとき、Aさんの妻は68歳、Bさんの妻は65歳なので、両者とも年齢によって加給年金の受給資格が失われています。

また所得要件も問われます。例えば、妻の年間の収入が850万円未満で、所得が655万5000円未満でなければ加給年金は受け取れません。妻がこれらの条件を満たしたとき、加給年金が受け取れるのです。

なお、子どもも加給年金の対象になりますが、年齢が18歳に達する年度の末日までしか加給年金は受け取れません。AさんとBさんには子どもがいますが、両人が65歳になったときには、すでに子どもは年齢的に加給年金の対象ではなくなっています。

妻が同い年、年上でも年金額を700万円増やせる!

ところでAさんとBさんからすれば、加給年金は厚生年金の制度設計によるものであることは百も承知ですが、それでも15歳年下の妻と加給年金をともに手にできるCさんのことがうらやましくてしょうがない様子。

そこで1つだけ、逆転ホームランになる方法を伝授させていただきます。それは、国民年金と厚生年金を繰下げ受給するという方法です。

AさんとBさんは65歳から国民年金と厚生年金を受給できるわけですが、その年齢を70歳まで繰り下げた場合、それぞれの年金額が42%増額されます。したがって、90歳までの20年間に受け取れる年金の額は5765万4840円と、65歳から受給した場合に比べて690万2340円も増えて、Cさんが加給年金を上乗せして受給した場合の額を上回ります。

「おお~」と思われた方も、ひょっとしたらいらっしゃったかもしれませんが、ちょっと考えれば、「Cさんも繰下げ受給を選んだらどうなるの?」という鋭い突っ込みを入れたくなりますよね。

そうなのです。もしCさんが国民年金と厚生年金を繰下げ受給した場合、Aさん、Bさんと同額の690万2340円増えます。

やっぱりそうかと、肩を落とす人もいそうですが、Cさんが繰下げをすることにより厚生年金を受け取らない場合、妻の加給年金を受け取れません。したがって、Cさんの妻が受け取る加給年金は70歳からの10年分の390万1000円と、200万円近く減ってしまいます。

Cさんは、65歳からの加給年金を優先するために、国民年金だけを繰下げるという方法も考えられます。

国民年金の受給額は65歳から受給した場合の78万0100円から、110万7742円に増えるため、厚生年金と加給年金は65歳から、国民年金を70歳からと時間差で受給すると、90歳までに受け取れる公的年金の総額は5925万6340円と265万2340円増額します。これは5歳程度の年の差婚の方なら、考えるべきオプションです。

しかし、Cさんのように15歳も年の差がある場合、国民年金と同時に厚生年金を繰下げたとしても加給年金が70歳から10年間がありますから、結果総額6155万5840円と、ダントツで受け取れます。

う~ん、日本の年金制度は、年の差婚の若い妻に優しいようです。

なお加給年金は、その対象である配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や障害年金を受給する場合は支給されない点に注意してください。

モデルケースみたいな夫婦はほとんどいない!

50歳になると、嫌でも自分の老後を意識せざるをえなくなります。最近も「2000万円不足問題」が炎上したように、老後の生活に必要なお金をどのくらい準備すればいいのかについて、多くの人が関心を寄せています。老後資金の計画を立てるためには、公的年金がいくらもらえるのかを知っておく必要があります。

でも、これがちょっと驚きなのですが、年金生活になっても、自分の収入はそれほど減らないと思っている人が、ときどきいます。

「たくさん給料をもらって、たくさん年金保険料を払っているから、いまの給料と同じくらいの年金はもらえるはず」ということなのですが、それは大きな間違いです。現役時代の給料と同額の年金が出る制度など、ありえません。

年金の受給額がいくらになるのかは、国がモデルケースを示しています。「夫は年収が平均500万円程度の会社員で40年間厚生年金保険料を納めていて、妻は40年間専業主婦」という条件を満たした場合、年金の受給額は月22万円程度です。

実は、この「モデルケース」というのが曲者です。よく考えてみてください。いまの時代、妻が40年間も専業主婦であり続けられる家庭ってあるでしょうか。要するに、モデルケースが浮世離れしている恐れがあるのです。

先の3人の同期のケースでは、結婚年齢と妻の年齢で年金額が異なりましたが、それだけでなく、世帯ごとの働き方、家族構成によって年金額は大きく違ってくるのです。

「こういう人って多いだろうな~」と思うのが、雑誌や本を読んで、自分が定年後に受け取る年金はこのくらいと思い込んでいて、現実に直面したとき、あまりの少なさに呆然自失するケースです。

私もときどき寄稿したり、インタビューを受けたりしているので、何とも心苦しいのですが、雑誌などはスペースの関係もあって、一人ひとりの事例を事細かに分けて書くわけにもいかず、どうしてもモデルケースですべてを語ってしまいがちです。

だから、雑誌や本に書かれている数字を鵜呑みにするわけにはいきません。あなたが定年になったとき、いくら受け取れるのかを自身で把握する必要があります。

自分の年金額を知るためには

自分の年金額を知るために何を見ればいいのかというと、毎年、誕生月に日本年金機構から郵送されてくる「ねんきん定期便」です。あなたが65歳になったとき、「老齢基礎年金」がいくらで、「老齢厚生年金」がいくらになるのかが記載されています。

その合計金額を12で割れば、1カ月の年金受給額になります。例えば、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計が200万円なら、これを12で割ると、1カ月の年金受給額は16万6666円になります。

公的年金は、老後の生活を支える柱になります。50歳になったら自分が65歳以降、どのくらいの公的年金が受け取れるのかを把握しておくことが、定年後のクオリティー・オブ・ライフを高めるきっかけにつながるはずです。

いまでは希少価値に近いモデルケースの年金額なんて信じないで、「ねんきん定期便」には必ず目を通して、自分の受け取れる年金額を把握したうえで、老後の資金計画をしっかり練りましょう。

今回は、男性の視点から年金の話をしましたが、次回は、夫と離婚した妻の年金はどうなる? 死別したときは?など、女性の視点から、得する年金、損する年金の話をしたいと思います。

山中 伸枝:ファイナンシャルプランナー(CFP®)

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します