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2019.08.08

三日坊主への恐れを取り除くと習慣化は自然とうまくいく【習慣の心理学#27】

kencom公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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何かを始めるときに常につきまとうのが三日坊主のリスクでしょう。どうせ始めても数日で終わってしまうのではないかと思っただけで続けられないではないでしょうか。
でもそれにひるんでいては習慣化などとても叶いません。果たしてどう三日坊主を防げばいいのでしょうか。
今日はその辺りをご紹介しましょう。

三日坊主になる理由は〇〇だった?

理論的には報酬によって習慣化は可能

拙著『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック刊)への好意的な書評として、おもしろいレビューをTwitterで読んだことがあります。
それによると「この本に書いてあるようなスキナーの行動心理学など、自分が知らない話は何もなかったが、こんなにそれが役に立つとは知らなかった」という内容でした。
なるほど私が拙著で書いたような心理学の知見はごくごく基本的な内容で、「聞いたこともない」などという人は少ないでしょう。心理学を勉強した人にしてみると「何だこんなのもの!」と思われて当然です。

しかし、ネズミはチーズが出てくるレバーなら何度も倒す、というたったそれだけの事実から、習慣化、子供の教育、社会人の教育、アスリートのスキル向上、依存症からの脱却、健康維持まで、幅広く実地に応用できたところに、スキナー心理学のすごいところがあるわけです。
要は、報酬です。報酬があれば、習慣化はたいてい可能なはずなのです。

しかし続くかどうかが不安要素

しかし実際には報酬をもって習慣化するのは難しいことがあります。
ジョギングによって健康維持や望ましい体型という「報酬」があるのはたしかだと思っても、それだけでジョギングが続くかどうかは疑わしい。それには様々な原因があるのですが、そもそも「始めることが難しい」という点について今回は考えてみましょう。

始めることが難しいという人は多い。その理由はだいたい同じです。「続けられずに終わる不安」があるのです。
いわゆる三日坊主に終わる不安です。
考えてみるとこれは考えすぎというもので、誰にもジョギングやダイエットや勉強やブログのことを宣言しなければ、誰も知る人はいないのですから、三日坊主に終わっても恥ずかしくもなんともないはずです。

でも天知る地知る我が知るというわけで、三日坊主に終わったりすれば、けっきょく自分の自尊心が傷つく。ある意味で、これほど怖いことはないのでしょう。
まずはこのことをしっかりと自覚しましょう。習慣化となると、いちばん大変なのは「始めること」。少なくともそれに同意できるという人は、三日で終わってしまうことへの恐怖感がかなり強い。

報酬ではなく問題解決にフォーカスしよう

そうした人は、習慣化による「報酬」で自分をモチベートするより、習慣化によって、どんな「苦痛」が解消できそうか。そこにフォーカスしてみてください。

英語の勉強という話をとっても、たとえばそれができることによって「昇進する」とか「旅行で便利」という「報酬」ではなく、今のままではスキルが足りず仕事がなくなるといった「苦痛を取り除くための手段」としてとらえてみると、続けられる人がいます。

苦痛を取り除くのだってけっきょくは「報酬」なのですが、苦痛を取り除くと考えるだけでやる気になれるという人はけっこういます。おそらく苦痛に敏感なのでしょう。

苦痛というシグナルは、取り除かれない限り必ず「再現」されます。英語ができないことによる不利益に敏感な人は、今後何度も何度も、「英語ができないことによる苦痛」を受けることになります。たとえ勉強が三日坊主に終わってしまったことがあっても、再度「苦痛」に見舞われれば再度挑戦できます。

だから三日坊主を恐れなくてもいいのです。勉強した成果はゼロにはなりません。苦痛も何度も再発します。苦痛を取り除くことが目的であれば、勉強機会は何度も訪れ、いずれは習慣化されます。

やめてさえいなければ"続いている"

このやり方はおそらく「響く人」と「響かない人」がいます。響く人は、考え方がいささかネガティブなのです。それを逆手に取るわけです。

三日坊主に終わることが不安で習慣化に手がけられないという発想は、そもそも決してポジティブではありません。
でも、そういう人は三日坊主に終わってしまうことが「苦痛」でしょうし、3日勉強して、4日目にやらなかったら精神的に苦しむのでしょう。(だから習慣化を始めなければ苦痛に見舞われずにすむ、と考えてしまうのかもしれません)。
けれど5日目に再開すればいいのです。そうすれば三日坊主にはなりません。5日目に始められずとも6日目に再開すれば、やはり三日坊主にはなりません。

苦痛を取り除きたいというモチベーションはたしかなものであり、しかもけっこう強力なものです。せっかくネガティブ思考を持っているのであれば、それを活用すればいい話なのです。

ネガティブな心も習慣化につながる

人によってネガティブな感情はできるだけ排除したいものかもしれません。しかし、こと三日坊主対策と考えると、習慣化の武器の一つとなりうるのです。
ムリにポジティブに続けることばかり考えるのはやめて、その力を活かすことを考えましょう。

著者プロフィール

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■佐々木正悟(ささき・しょうご)
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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