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2019.08.05

どうして眠りが必要?睡眠のことを知るメリットとは?【快眠ナビ#1】

kencom公式:睡眠改善インストラクター・鈴木麻里子

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若い頃はなんでもパワーでカバーできてしまうこともあり、自分の健康に意識を向けることはなかなかありません。睡眠が気になり始めるのは、体力の低下や熟眠感の低下などを感じ始めてからではないでしょうか。
最近はさまざまなメディアで「睡眠」をキーワードにした情報があふれています。自分の睡眠に疑問を感じ始めている方は、効果があるなら試してみたいと思ったこともあるでしょう。

しかし、中には都市伝説のような内容も見受けられます。 個々で異なる問題を解決するために大切なのが睡眠に関する基礎知識です。
本コーナーでは睡眠とはどういうことなのか、寝ている間に何が起きているのか。眠らないとどうなるのかなどを解説していきます。

そもそも睡眠とはなんなのか

休息と節約のための生命現象

人間の睡眠は、大きく発達した脳を休息させつつ身体を回復させるためという側面と、動物としてエネルギーの節約状態を作り出すためという、2つの目的でうまれた生命現象と言われています。それぞれ解説していきましょう。

まず前者の脳の休息には、「前頭連合野」と「頭頂連合野」と呼ばれる部位の活動を休ませ、回復させる目的があります。
「前頭連合野」は会話や読み書きを司るワーキングメモリや、認知・実行機能を担う部位。一方の「頭頂連合野」は感覚の処理や運動機能を司っています。
この2つの部位は、他の生物に比べて特に発達しており、人と動物を区別する「人間らしさ」をカバーしていると考えていいでしょう。それだけに日頃酷使しがちなため、オーバーヒートしないように休ませたいというわけです。
同時に交感神経も休ませて成長ホルモンを分泌させることで身体の成長、回復、発達を促し、記憶の整理や定着なども行われます。

原始的な習慣も睡眠には残っている

もう1つの目的「動物としてエネルギーの節約状態を作り出す」を説明するためには遥か太古の人間の生活から紐解く必要があります。
昼間を活動の中心とする生き物であった人間は、暗い夜に餌をとれませんでした。そのため、夜間にエネルギーを節約し、昼間全力で動く必要性が生まれたのです。
そこで体温を低下させたり、筋肉を弛緩させてできるだけエネルギーを使わない状態を作りだしました。加えて、その状態で敵から見つからないように、外部からの刺激にもあまり反応しないようになったのです。言うなればちょっとやそっとでは起きない状態ですね。
この状態こそ人間が本能的に身につけた睡眠と言われています。

睡眠不足による最大のデメリットは判断力の低下

いつでも食事がとれ、安全な現代ならもうそんなに眠らなくても大丈夫? いやいやそんなことはありません。
勘のいい方ならもうおわかりかもしれませんが、本来働くべき機能が働かなくなると、思考や体調に不具合が生じ始めます。

睡眠不足になるとまず機能低下するのが「前頭連合野」と「頭頂連合野」の2つ。特に「前頭連合野」は、論理的な思考や意思決定なども行っているため、睡眠不足では正しい判断がしにくくなります。
眠くてケアレスミスをしてしまった、という経験は誰にでもあるかもしれませんが、最悪の場合人命に関わる重大なヒューマンエラーが発生しやすくなります。
例えば寝不足での自動車の運転などは、大規模な事故につながりかねません。

このほかにも、睡眠時間を削って勉強をがんばろうとしても、記憶が定着しないので、勉強が無駄になってしまう、免疫力が低下するため健康を損なう可能性を高める、運動でも本来発揮できるはずのパフォーマンスを低下させる、感情のコントロールがしにくくなり、人間関係の摩擦を生じさせるといった弊害も起こりやすくなります。

睡眠を知ることで生活の質を高めよう

ここまでご紹介してきたように、睡眠は動物として必要な行動であるだけでなく、生活の質にも影響を与えやすいものです。
本連載を通して、ぜひ睡眠の知識を深め、自分の生活や健康と向き合えるようにしていただきたいと思います。

参考文献

日本睡眠改善協議会編(2019)『基礎講座 睡眠改善学 第2版』,ゆまに書房

白川修一郎(2018)『命を縮める「睡眠負債」を解消する』,祥伝社

著者プロフィール

■鈴木麻里子(すずき・まりこ)
ライター、睡眠改善インストラクター。睡眠系の話題に限らず、IT系から家電関連まで幅広いジャンルをカバーする。主な著書に「Facebook仕事便利帳」「iPhone 4 仕事便利帳」(ソフトバンククリエイティブ)など。

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