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2019.06.14

尿検査って何を見てるんですか?〜知ってるようで知らない健康診断の話

kencom編集部

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多くの方が毎年受ける健康診断ですが、それぞれの検査で何がわかっているのか疑問に思うことはありませんか。そんな知っているようで知らない健康診断の検査について、kencom監修医師の石原藤樹先生にお話を伺いました。

今回はお伺いするのは自宅で採ることになる『尿検査』。採るのも面倒なら、持っていくのもなんだか微妙な気持ちになるこの『おしっこ』で、いったい身体の何がわかるのでしょうか?

意外と歴史のある尿検査でわかること

尿は腎臓の調子がわかるバロメーター

小・中学校の学校健診でも行われている尿検査は多くの人にとって馴染み深いものでしょう。ただ、どんな意味があるのかはあまり説明されないことが多いかもしれません。
実は、尿検査は主に腎臓の病気を発見することを目的としています。
そもそも腎臓は、人が生活していく中で産出される不要な老廃物や塩分などを血液からろ過して、水分とともに外に出し、必要な栄養素を再吸収して体内に留める働きを持つ臓器です。
この機能に異常が出てくると、腎臓の病気の兆候となります。

健診に組み込まれたのは日本が初

この尿検査、実は割と歴史があって、日本では1950年代に急性腎炎が流行したのがキッカケです。
この流行を受けて、1969年には小児の長期欠席の原因疾患として腎臓疾患が1位になるなど、相当な勢いで蔓延していたようです。
そんな子供達への被害を最小限に抑えるため、1960年代には多くの小・中学校で尿検査が行われるようになり、1974年4月には日本の小・中・高校での蛋白尿・潜血の検尿を受ける学校検尿のシステムが確立されました。
これは世界的に見ても初めての試みだったようです。

二大柱は『尿たんぱく』と『尿潜血』

尿は普通の方が見ても異常だとわかるくらいの大きな変化を起こすことはあまりありません。むしろ、目に見えない成分面での変化に止まることが多いです。尿検査では、その成分の違いによって様々な検査が行われています。
主に調べられるのは尿たんぱくと尿潜血で、ついで尿糖も調べることができます。

・尿たんぱく

尿の中に含まれているたんぱく質の量を調べる検査です。腎臓は正常であれば、血液に含まれているたんぱく質を全て再吸収するはずです。ところが、腎機能が低下していると、このたんぱく質が尿に漏れ出てきてしまいます。
尿たんぱくは、検診前に水分をあまり取っていないと、濃度の関係で(+)や(±)が出ることがあります。
普段と同じ程度の水分を取っておくようにすることが大事です。

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・尿潜血

こちらは読んで字のごとく尿に血液が混じっていないかを見るものです。正常であれば赤血球は腎臓のろ過機能よりも大きい粒のため、尿に混じることはありません。
つまり、尿に血が混じるというのは腎臓や尿管、膀胱、尿道などのどこかから出血があるということになります。
また、最近の検査ではヒトヘモグロビンが含まれているかをチェックしますが、一部検査では、酸化状況で判断する場合もあります。その検査の場合、ビタミンCを大量摂取していると出血があっても陰性反応が出るケースがあります。(これを偽陰性といいます。)
前日にビタミン剤を大量に摂取したり、エナジードリンクなどを飲むのは控えたほうがいいでしょう。

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・尿糖

この検査は腎臓の問題というよりも、血糖値の異常を測るための検査になります。
尿内に本来はないはずのブドウ糖が含まれていないかをチェックします。ブドウ糖は身体にとって大事なエネルギー源ですから、普通は尿に出てくることはありません。ですが、あまりに血液中に大量にあると、腎臓が再吸収しきれずに溢れ出てしまうわけです。
ただ、尿糖が陽性だったとしても即糖尿病というわけではありません。血糖値との兼ね合いなども考慮されますので、陽性だったからと変に落ち込まないように注意しましょう。

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尿検査のコツはこれだ!

尿検査キットに同封されている説明書に必ず書いてあるのが、「朝一の尿を採ること」と「最初と最後の尿は採らないこと」の2つです。
これは、検査の精度を上げるために提案されていること。
食事をした後の昼や夜の尿には不純物が入りやすいため検査にはあまり向いていません。中間の尿を採るのも同様です。尿道の最初の方には外からの不純物が交ざる可能性があります。後半も、前日の影響が出やすい可能性があります。
そこで中間を採るわけです。

ただし、その尿でなければ検査できないわけではありません。手が汚れるのが気になる方は、最初から採ってもらっても大丈夫です。
また、朝乾燥していて出ない場合には、多少水分を取っても構いません。
最近の検査はかなり良くなっていますから、変に意識して採るよりも素直に採った方がいいでしょう。

意外と色々わかる尿検査を活用しよう!

腎臓の病気は長年かけてゆっくり進むものが多いですが、早期発見・早期治療することが大事になります。
そう考えると、年に1度の尿検査は重要な意味を持ちます。比較的白黒がしっかり出る検査ですので、ぜひ活用してみてください。

参考文献

鈴木洋通(2009)『図解入門 よくわかる検査数値の基本としくみ』秀和システム.

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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