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2019.06.27

習慣化に邪魔なものは徹底的に取り除こう【習慣の心理学#21】

KenCoM公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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習慣化を始めようとすると、誰しも気がつくのが意外に余計なものが多いということ。小さい事かもしれませんが、それら積み重なっていくと習慣化の邪魔になることがあります。
ただ、どれが余計なもので、どれが必要なものかを見極めるのは難しいものです。ここではその見分けのちょっとしたコツをお伝えします。

習慣化の邪魔ものは消去せよ!

思い込みにとらわれると余計なことをしやすい

習慣化と一口に言っても、英語学習や運動などずいぶん幅広いものです。
それだけ幅広いだけに、毎日続けるには大変すぎるようなものも含まれます。そんな時には、本当に大事なことを考え、それ以外の大変な部分をことごとくカットする、ということを考えてみるのも悪くはありません。

私の友人に、テニスが大好きなのだが、どうしてもテニススクールが続けられない、という人がいました。
私もテニススクールにずっと通っているのですが、彼の話によれば、生徒が多すぎてあまり通っている感じがしないのだそうです。こんなのは簡単に解決できます。もっと生徒の少ないスクールに通えばいいのです。
程なくして彼はスクール生の少ない教室に移りました。

しかし、そのスクールもすぐに通わなくなってしまったそうです。
本人は「飽きっぽいから」と言っていましたが、実はそうではないでしょう。実は彼はテニスの練習がイヤだったのです。そう、彼がしたかったのはテニスの試合であって、決して辛い練習ではなかったのです。
そこで彼に、テニスの試合だけができるスクールを紹介しました。今でも彼は5年以上も、テニススクールに通い続け、ひたすら試合を続けています。

ちょっと考えればそんなことくらい自分でわかりそうなものですが、彼は「プロのテニスプレイヤーになるつもりもない」のに、「練習をしなければいけない」と勝手に思い込んでいたのです。
こういう思い込みにとらわれることって、意外に少なくありません。

本当に習慣化したいこと以外カットする

私の友人に、漫画家になるべく、背景の練習を必死にやっている人がいます。私はその人に、『ドラゴンボール』を描いた鳥山明さんのお話を聞かせたことがあります。
鳥山さんは、地球を侵略する目的でやってくる異星人たちに、まず「核兵器以上の強力な力」でもって、徹底的に都市を破壊させます。なぜなら、戦闘シーンの背景が未来の都市では、その未来都市を描き続けねばならず、想像力を働かせるのも実際に描くのも、とても大変だからです。

しかしどんな未来都市だろうと、破壊の限りを尽くされたあとという設定ならば、似たような廃墟シーンを描けばすみます。それに、「核兵器以上の強力な力を持った異星人」のすごさを読者に印象づけることもできます。
私などはそのトリックに完全にだまされて、ハラハラしながら漫画を読みふけっていました。
それどころか超サイヤ人が金髪なのも、黒く塗りつぶす手間を省くためだったという話まであります。
残念ながら友人の漫画家は、このような私のうんちくには一切耳を貸してくれず、それ以後もずっと絵の練習を続けていますが、漫画家にはなれていません。

やりたいことの中に、やりたくないことが混じっているというのは、しばしば言われることではあります。しかし、そのやりたくないことを、どうしても避けられないならば覚悟を決めるよりほかないかもしれませんが、カットできないかどうか考えるだけでも価値があるはずです。

コツは「やりたくない」ことを省くこと

私が考えるに、ポイントは「やるのが大変なことを省く」というより、「やりたくないことを省く」ところにあります。
テニスクラブに通った友人がやりたくなかったのは「練習」でした。私が思うに、テニススクールのレベルなら、練習よりも試合の方が「大変」です。でも試合の方が楽しいからそっちだけにしているのです。
そうした方が、運動量も多く、しかも継続できます。

鳥山明さんのケースでも、『ドラゴンボール』で読者が読みたかったのは戦闘シーンですし、その戦闘シーンを鳥山さんが手を抜いて描いたわけではないでしょう。
込み入った未来都市を「描きたくなかった」のだろうと思います。

何かを続けられないとか、やる時間がないというとき、私たちはつい「大変なことをやらずに済ませよう」としがちですが、それよりも「やりたくないことをやらずに済ませる方法」を検討するべきです。

大変なこととやりたくないことは切り分けよう

混同してはいけないのは、大変なことと、やりたくないことは、同じではないということです。ここを決して忘れてはいけません。

そして人間、やりたいことなら大変でもやれるものです。
ぜひあなた自身がやりたいことを習慣化してみてください。

著者プロフィール

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■ささき・しょうご
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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