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2019.06.02

「英語が自然にできる子」の親がしていたしつけ|押しつけではなく、共有型の学びが大事

東洋経済オンライン

英語を自然と身につけるのに使えるツールとは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

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英語を自然と身につけるのに使えるツールとは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「わが子に英語を話せるようになってもらいたい」と考えている親御さんは少なくないでしょう。そんな親の気持ちを察してか、世の中には「聞くだけでペラペラに」「ネイティブ教師によるレッスン」「短期間で英語を習得」など、さまざまな英語習得に関する宣伝があります。こうした中、子どもが末永く英語と付き合っていくには、どういう教育が必要なのでしょうか。

6カ月から英語で育てたのに…

「うちの子は生後6カ月から英語で育てたので、3歳になったときには日本語がままならなくなっていました……」と後悔している、英語がとても達者なお母さんに会ったことがあります。

息子が生まれて3年間もの間、彼女は英語で話しかけて育てていました。その結果、息子は日本語でのコミュニケーションが難しくなってしまったのです。このお母さんはさすがに「これではいけない」と気づき、それからは息子を日本語で丁寧に育てるようにしたそうです。

英語は単語や文法などの知識を知っていれば、話せるようになるわけではありません。英語が話せるようになるには、まずは母語できちんと物事を考えられるようにならなければなりません。

「日本語で考えるなんてできるわよ」と思うかもしれませんが、今の子どもたちは、日本語できちんと理解したり解釈したりすることができなくなっていて、文部科学省もその点は課題と捉えています。ではどのようにすれば、母語できちんと物事を考えられるような子どもを育てられるのでしょうか。

発達心理学者の内田伸子氏(お茶の水女子大学名誉教授)が行った調査によると、言葉の成長には親のしつけのスタイルが影響しているということです。内田氏によると、「共有型しつけ」を受けている子どものほうが、「強制型しつけ」を受けている子どもよりも語彙力が高いということでした。

ここでいう共有型しつけとは、子どもと会話のチャンスを多くしたり、一緒にさまざまな体験をしたりするなど、親子でのふれあいを大切にする育て方です。反対に強制型しつけは、親の考えを子どもに押しつけ、子どもができない場合は罰を与えたり、責め立てたりし、ときには力で抑え込むこともいとわない子育ての仕方です。

前述の3歳まで英語で育てられた男の子は強制型しつけを受けていたと言えます。日本語の環境で生活しながら、親の言葉(英語)を押し付けられて、子どもの意向を引き出さずにいたので、英語どころか母語である言葉が育たなかったということです。

「早期教育が大切」といくつもの習い事に子どもを引っ張り回したり、フラッシュカードなどで英単語をひたすら覚えさせたりするのも強制型しつけといえるでしょう。このような方法で例えば英語を身に付けさせようとすると、効果がないどころか、むしろ英語嫌いになってしまう可能性が高いのです。

共有型しつけでお勧めなのは

共有型しつけではどうして言葉が育つのでしょう。このしつけでは、親が子どもの様子を見ながら話しかけたり、共感したりしています。内田氏によると、母親の関わり方に対応するように、子どもも主体的に探索したり、自律的に考えて行動するようになり、結果的に自分の関心領域について主体的に動けるように育つのです。

同氏は「50の文字を覚えるよりも1000の『なんでだろ?』を育てたい」としています。子どもが自ら思考することによってこそ、豊かな言葉が育っていくというわけです。

共有型しつけの子育てにお勧めしたいのは、絵本の読み聞かせです。ただ、最初に確認しておきたいのは、絵本は子どもにとって英単語や文字、知識を得るツールではないということです。絵本は子どもの心を豊かにするもの、読み手とのコミュニケーションを楽しむものです。

親子で絵本を読みながら、親は子どもの様子をうかがったり、子どもの目線を探ってどこに興味があるのか見てみる。「楽しそうだね」「怖そうだね」など子どもの心に沿って共感する。共感して同伴してくれる人が隣にいることによって、子どもは物語の冒険を体験することができます。

勇気や知恵をもって壁を乗り越え成長して戻ってくる主人公に、自身を投影させて子どもは心を安定させ、自尊心や自己肯定感を育てていくことができるのです。

絵本の中には不思議な出来事が現れます。空を飛んだり、魔女に会ったり、王様をやっつけたりと、言葉とイラストによってさまざまな出来事をイメージすることになります。イメージをすること、登場人物の気持ちを感じ、因果関係を知るなどといったことは物事をメタ的に思考する力を育みます。

また、絵本には日常生活では使わない言葉が登場します。ストーリーの中で新しい言葉に出会うと、知っている言葉を頼りに新しい言葉について考えることができます。そのようにして言葉を増やしていくと、自分で思考することができるようになるのです。

親子で日本語での絵本が楽しめ、会話が弾むようになったら、英語絵本を手にとってみることをお勧めします。今、書店の児童書売り場には、多くの英語絵本が並んでいます。内容は簡単な会話だったり、昔話やファンタジーなどの物語だったりとさまざま。CDが付いている商品も多く、英語が苦手な親でもCDが読んでくれるので心配は不要です。

英語を教えようとする絵本はNG

並んでいる絵本の中身を丁寧に見てみると、英語を教えようとする意図のある作品も少なくありません。同じ構文の繰り返しだったり、単語の数が限られていたりといった内容です。こうした絵本だと子どもはすぐに飽きてしまいます。ですから英語学習の目的で制作されている作品よりも、純粋に絵本作品として楽しめるものを選ぶといいでしょう。

それには原作が英語の絵本作品が最適と言えます。アメリカやイギリスで発刊された絵本作品の中には長く子どもに愛されてきた優れた作品も多く、日本語でも翻訳されて出版されています。日本語で絵本の内容を知ってから、英語の絵本に触れることもできます。

絵本に付いているCDは、できれば録音内容を確認して選びましょう。せっかく買ったのに音が悪かったり、音声が明確でなかったりでは繰り返し聞くには問題があります。子どもが何度も耳にしたいと思えるような音声を選んでください。何度も聞くことによって子どもは自然に英語の音に触れることができます。

そして、日本語とは異なる英語のリズムや強弱で英語を発することができるようになるのです。絵本によってはカタカナで読み方が記してあるものもありますが、英語が録音されているCDが付いているのに、カタカナで英語を読むのは本末転倒です。

あるとき、「うちの子が『フーツリピンオーマイブリッ』と、怖そうな顔をして大きな声で言っているけど、何のことでしょう?」と4歳の男の子のお母さんは不思議そうに話してくれました。彼はアメリカの『THE THREE BILLY GOATS GRUFF』、日本語でも『三びきのやぎのがらがらどん』というタイトルで有名な絵本の中の英語を発していたのです。

北欧民話であるこの絵本の中には、トロルの”Who’s that tripping over my bridge?”(だれだ、おれのはしをがたことさせるのは?)というセリフが繰り返し出てきます。お母さんはそれがわかった途端、「ただ聞いているだけなのに、自然な英語を口にすることができるんですね!」と驚きながらもうれしそうでした。

「英語の音」を体感する重要性

子どもの英語の発語は何よりも自然であることが重要です。子どもは何度も聞いた母語の歌を口にすることがありますが、面白い音、面白いリズムの歌を好んで口にしようとします。英語も同じです。ふだん自分の言葉にはない音を子どもは面白がって口にするのです。

子どもの発音がクリアでなくても指摘などせずに、そのまま子どもの好きなように発音させましょう。決して「発音が違うんじゃない?」「ほら英語を言ってみて」などと、子どもの発語の意欲を削ぐようなことを言ってはいけません。

英語には日本語とは異なるリズム、強弱、アクセントがあり、それらを自然に見つけられると、将来リスニングやスピーキングで役立ちます。耳で聞いて英語を身に付ける重要なポイントは、意味や文法ではなくそのような英語の音を体得することです。

子どもは自分が耳で聞いた音を口から発し、母語の場合も、喃語の時期を経て段々と言葉がクリアになっていきます。そのような発達段階で英語の発音の間違いを指摘されると、子どもは言葉を発さなくなってしまいます。母語である日本語も外国語である英語も、あくまで共有型しつけで育てていくことが重要なのです。

幼い頃から絵本などを使用して共有型のしつけで育ち、豊かな母語を身に付けると、子どもは言葉を自分で思考して身に付け、同じように英語も自ら取得できるようになります。その際に英語絵本が効果的といえます。

もしお子さんに英語を身に付けさせたいと考えるなら、幼いときから英単語ばかりを学ばせたり、簡単な英語が話せることに一喜一憂したりせずに、お子さんと向き合った子育てをしてみてはいかがでしょうか。そのほうが親子の豊かな時間となり、ひいては母語でも外国語でも言葉を自由に操って生きていける人間に成長することでしょう。

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木原 竜平:ラボ教育センター 教育事業局長

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