メニュー

2019.06.26

長引きがちな慢性腰痛を止めろ!心身の対策法を公開

kencom公式ライター:緒方りえ

記事画像

前回の記事では、慢性腰痛の原因などについて説明しました。一度なってしまうとなかなか抜け出せない慢性腰痛。いったいどうやってその苦痛を和らげれば良いのでしょうか。今回は、慢性腰痛と心の関係、治療方法や改善方法についてたいへん興味深いお話を聞くことができました。引き続き説明してくださったのは、北里大学北里研究所病院・整形外科部長の日方智宏先生です。

■働き盛りが悩む慢性腰痛って何?

腰痛と心の関係

記事画像

最近では、痛みと心理社会的な要因が密接に関係していると言われてきています。もともとのキャラクターにもよりますが、ストレスを感じやすい人や鬱病などのエピソードがある人は、痛みを感じやすかったり痛みが長引くかもしれません。そのため慢性腰痛に移行しやすいでしょう。

痛みをコントロールするドーパミンとの関係は?

記事画像

慢性的に痛みに悩まされている方というのは、脳内のドーパミンシステムが上手く機能してないと言われています。
何か痛みを感じるような刺激を受けた場合、その痛みがダイレクトに脳へ伝わらないような仕組み、いわゆる防御する仕組みとして脳内でドーパミンが放出されて痛みを和らげて伝えるのです。

慢性腰痛の場合は、痛みに過敏に反応することを繰り返すうちにドーパミンのシステムが上手く作用しなくなり、抜け出せない痛みの悪循環に陥ってしまいます。痛みからくる精神的な不安がさらにシステムを崩壊させていく、というストーリーでしょう。
この点については研究ベースで話が進んでいるところです。

慢性腰痛が引き起こしてしまう病気は?

記事画像

慢性腰痛の場合は元々の身体に何か問題があるわけではない場合が多いので、心理社会的因子がとても複雑に絡み合って腰痛症状が長引いていることが多いと言えます。慢性腰痛が長引くことで何か内科的な病気が引き起こされるというようなことはほとんどないですが、その方の仕事や生活は成り立たなくなってしまうことは多いので、職場が首になってしまったり家庭内が上手くいかなくなったりする影響はすごく出てしまいます。

病気というよりはQOL(生活の質)に直結してしまうのです。精神的なものが影響していそうな場合には、精神科のプロと一緒にアプローチを行うこともあります。

痛みとそのストレスによる悪循環

記事画像

慢性腰痛による痛みが続いている場合、痛みに対する恐怖心から徐々に身体を動かさなくなってしまうことも多いでしょう。すると、筋肉が衰えたり身体の柔軟性が落ちてしまうため、痛みがより悪化してしまうこともあるので注意が必要です。

痛みの悪循環から抜け出すためにできることは?

慢性腰痛の場合、とにかく身体を動かすことへの恐怖感を取り除くことが大切。なるべく体を動かす習慣をつけてもらうために、どのくらいの運動量なら腰の状態が悪くなりませんよというアドバイスを行い、安心してリハビリをしてもらいます。

記事画像

実は、どのような運動をした方が良いという決まりはないのです。どんな運動を、どの程度、どの時間、週どれくらいやるべきかというのはハッキリとはわかっていないのが現状。そのため、診察の際にその場その場でその人に合いそうな運動を考えて指導していることが多いです。
ちょっと動けるようになるとそれが自信になるので、そこからできることを広げられるようにしっかり評価して、言葉で安心してもらうようにしています。

薬との付き合い方は?

記事画像

薬に関しては、何年何十年と同じ物を使っていると徐々に効果が出なくなってくることもあります。その場合は薬が弊害になってくるので投与を中止します。

しかし、長年使っていた薬をやめることが逆に不安になってしまう方も居るので慎重に検討しています。不要な薬は少しづつ排除した方が良いので、薬の効果を見極めることが大切です。
また、精神的にも困っている場合は精神科の投薬で少しでも症状を和らげられるようにしたり、リハビリを促します。

痛みの評価と治療方法

記事画像

整形外科では「その人にとっての痛みによる障害の程度」を知ることが大切であると考えます。痛みをあまり訴えていなくても、実はかなり我慢してしまうタイプの人で、本当はたくさん困っていることがある場合も考えられるのです。つまり、痛みの度合いだけでなく日常生活の動作についても目を向けるようにしています。

痛みの評価の方法は?

記事画像

整形外科でよく使うのは「今までの人生で最も痛かった時を10として、痛みが無い時を0とすると今の痛みはどれくらいですか?」と、患者さん自身に痛みを数値化してもらう方法です。

記事画像

あとはスクリーニングツールとして、アンケートを活用しています。アンケートにはその痛みのせいでどんなことに困っているかなどの項目があり、日常生活や仕事などでどんな弊害が起こっているのかを教えてもらいます。その人の「困っていること」にも目を向けるようにして治療に組み込むのです。

整形外科とペインクリニックの差は?

大雑把に分けると整形外科は整形外科医、ペインクリニックは麻酔科医がやっていることが多いです。
得意とする治療が異なっていて、整形外科は湿布などの薬を使ったり、リハビリを指導したり、コルセットなどの装具を作ったりして治療を行います。
ペインクリニックは静脈注射やブロック注射などの注射系の処置を行うことが多く、集中的な痛みを取ったりする麻酔薬の扱い方を得意としています。

いろんな治療法、病院以外もOK?

記事画像

例えば、1週間前から腰の痛みが出たと受診した場合、まずは投薬や湿布で痛みを和らげる治療をします。その時に身体を動かすのが辛そうな場合にはコルセットを処方します。その治療で多くの人は2〜3週間すれば良くなります。もしそれでも強い痛みが続く場合で、神経痛の要素がありそうならばセカンドステップとしてブロック注射をします。また、すっきりと痛みがなくならない場合には、牽引をしたり温熱治療で温めたりします。
あとは、ご自分に合ったマッサージや鍼灸に通うのも良いでしょう。

腰痛を長引かせる要因は運動不足や肥満が関係?

記事画像

もともと運動習慣がない方や体型がふくよかな方は、腰痛が出やすかったり長引きやすいとう報告がある一方、運動や体型が関係ないという論文もあり、ハッキリとした結論はでていません。
しかし、私の印象としては運動不足の方や体重の重い方は腰に負担がかかりやすいので、多少は影響していると思います。

カルシウムを摂ったり食事の改善点は?

記事画像

魚や乳製品などからカルシウムを摂取したり食事を改善することが、慢性腰痛に効果があるかどうかはハッキリとはわかりません。しかし、ご高齢で骨粗鬆症を起こしてしまっている場合は効果があるかもしれません。バランスの良い食事と共に運動をしたり、散歩をして日光を浴びることは特に女性にはオススメしています。

日方先生オススメの運動

記事画像

多少心拍数が上がって、全身で軽く汗をかけるような運動が良いです。ウォーキングやプール内の歩行、プールで泳ぐ、エアロビ、自転車こぎ(エアロバイク)などが良いでしょう。
体幹のストレッチや筋トレも同時に始めてみるのもいいでしょう。

慢性腰痛の人ほど、身体を動かすことが大切です。自分に合った運動法や治療を見つけるためにも、我慢はせずに整形外科を頼ってみてはいかがでしょうか。

痛みとうまく付き合うこと

慢性腰痛の痛みをゼロにするのはすごく難しいことです。何を治療の目標にするべきか。慢性の痛みによって社会生活に支障が出てくる場合、少なくとも今よりはその支障を減らすようにすることが目標になるでしょう。例え痛みが残っていたとしても、以前より少しでも軽い痛みになれば、できることが増えてきます。できる限り社会生活に適応できるようにサポートすることが、整形外科医の使命なのです。

参考文献

Whaley L, et al. Nursing Care og Infants and Children, 3rd ed, ST. Louls Mosby, 1987

日方智宏(ひかた・ともひろ)先生

記事画像

北里大学北里研究所病院整形外科部長、脊椎センターセンター長、北里大学医学部整形外科准教授。
2000年に慶應義塾大学医学部を卒業。2009年に慶應義塾大学医学部博士課程修了。脊椎、脊髄外科を専門とし、患者と共に負担の少ない治療を進めていくことを心がけている。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

この記事に関連するキーワード