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2019.06.13

いやーな時間制限が習慣化のカギになる?【習慣の心理学#19】

KenCoM公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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時間制限というものは、時に非常に煩わしいものです。もっとわかりやすく言えば、締め切りといった方がいいかもしれません。
締め切りが迫るとなんだか緊張するものです。ですが、別の見方をすると、習慣化を促すのに時間制限は良い味方になってくれると考えられます。
果たしてどういうことなのでしょうか?
一緒に見ていきましょう。

時間制限が習慣化を加速させるわけ

忙しいサラリーマンは漫画家を兼ねられるのか

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私が尊敬する友人に「岡野純」というサラリーマン兼漫画家さんがいます。
この人はもうずいぶんたくさんの作品を描いていらして、漫画家だけでも食べていけるんじゃないかと思うのですが、それでもずっとサラリーマンと二足のわらじです。

私などよりも皆様の方がずっとよくご存じの通り、サラリーマンは、日常の仕事をこなすだけでも大変です。
朝のラッシュに耐えて会社に行って、夜遅くまで働いて、また電車で帰る。
帰宅してからも自分の時間などほとんどなく、入浴、夕食、それから就寝。まだ眠い時間に目をさまして、通勤ラッシュに揺られて、会社に行く。

この状態でいったいどうやって、全6巻ものシリーズ漫画を描くことができたのでしょうか。1ページだって、私には描けそうにありません。

というわけで岡野さんにはいろんな方が同じ質問をします。「いつ、漫画を描いているのですか?」
しかし私は若干違う聞き方をしました。趣旨は同じですが「いつならば、漫画を習慣的に描けるのですか?」

「時間が限られているから描ける」という不思議

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漫画を1日で6巻分も描くのは、漫画の神様と言われる手塚治虫氏でも無理でしょう。シリーズものの作品ともなれば、習慣化して描くしかありません。
何時頃に、習慣化するのか。お昼休みか、それとも就寝前か。あるいは通勤電車の中か。その辺しかないように思えます。

しかし岡野さんによれば、「朝、会社に行く前に描いています」が答えなのです。これは今もなおそのようです。
早朝、まだ暗いうちに起きて、出社する前の1時間を使って、漫画を描いていく。私からすればまさしく超人です。

どう考えても「習慣化」だけですむような話ではないのですが、唯一、「それはたしかにそうだ!」と思えたことがありました。それは「会社に行く前はどうやっても1時間しかない。だから描けるんです」というお話でした。

強制的な区切りが罪悪感を打ち消す

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そうなのです。時間制限こそがカギだったのです。これは特につらい部分がある物事に有効だといえるでしょう。

いつまでも続けられるということは、いつやめるかにもある種の後ろめたさがつきものになります。
続けるほどにその後ろめたさは重なり、いつの間にか自分で勝手に物事をつらくしてしまうのです。

筋トレも、いつまでも続けられるのに「もうやめるの?」と自問してしまう人がよくいます。
「これはちょっと自分に甘すぎるかな」と思って続けてしまう。そうするととてもつらくなります。

岡野さんの場合、どれほど筆が乗ろうとも、出社時刻というものがある以上、強引に打ち切るしかないのです。この強制的に打ち切られるということが、意外に大事で、そうであれば否応なしですから少なくとも罪悪感や未練とは縁がなくなります。
これ以上続けていたいと思っても、会社に遅れるわけにいきませんから、そこでやめざるを得ないでしょう。だから続くのです。

時間制限を習慣の中に取り入れよう

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私も習慣化にあたっては常に、このことを考慮に入れます。どんなことでも、いつまでも続けられる時間帯を選ばないのです。

たとえばこの連載のように、新しく開始することになった連載については、毎週火曜日の午前9時40分に書き始めます。この日は、10時から別の仕事が定期的に入るので、場合によっては絶対に20分で切り上げる必要があります。
おかげで、続けられるのです。

「前倒しで余裕を持って」習慣にしようとしても、たいていは無駄です。前倒しの時間を無駄にしてしまうのがオチです。私はそういう自分をよく知っているので、仕事を前倒しでやることはないのです。

辛いことを習慣化する時こそ締め切りを活用すべし

何かつらいと感じるようなことを行う時は、できるだけ短く、サッと終わらせるに限ります。
習慣化も同じで、つらいことがあると思うものほど、むしろギリギリに始め、時間とともに必ず終わらせることがポイントです。
もしも終わらなくても、またその制限の中で行えば、つらさをあまり感じないうちに終わらせることができるようになるでしょう。

■作中に紹介された岡野さんの公式ブログ

■もっと習慣化する方法が知りたい方はこちらからどうぞ!

著者プロフィール

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■佐々木正悟(ささき・しょうご)
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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