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2019.06.14

オプションの選び方や賢い活用法を大公開!知られざる人間ドックの世界・後編

KenCoM公式ライター:森下千佳

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人間ドックの大きなメリットは受診者の性別や年代、体質などに応じて自由に検査を選ぶ事ができること。 
しかし、自分にはどの検査が必要なのか、どの病院があっているのかを正確に判断するのは難しいと感じている方がほとんどではないでしょうか。
今回の記事では検査項目の選び方や、良い病院の探し方など人間ドックの賢い使い方をお伝えします。

選び方で激変!人間ドックの賢い使い方

オプション検査の賢い選び方

初めてその施設で健診を受ける場合は、予約時や健診当日に健診施設と相談して決めると良いと思います。専門家のアドバイスで、無駄がなく、かつ必要な検査を漏れなく受けることができます。また、毎年同じ施設で検査を受けていれば、ご自身のデータが蓄積されていきます。そのデータをもとに、医師面談の際に、来年どの検査を受けたら良いかを相談しておくのも良いでしょう。
ご自身で選ぶ場合は、以下のポイントを参考にしてみてください。

選び方①:親族・家系などから推測する

親や兄弟などご家族で大きな病気になられた方がいたら、その病気を検査できる項目を加えてみてください。
例えば、身内に大腸がんの人がいた場合には、便潜血検査だけでなく大腸内視鏡検査を選んだりするといいでしょう。
緑内障の方がいた場合は緑内障の三次元画像解析装置(OCTなど)がある施設を選ぶなど、家族歴などに合わせた選び方をすれば、早期発見や予防につながります。

選び方②:年齢・性別ごとにオプションを追加していく

次は、年齢や性別に合わせて、オプションを選ぶ方法です。
病気のリスクが高まりやすい年齢があります。そこに合わせて検査を入れるのが、最も賢い選び方と言えるでしょう。

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年代別オプションの選び方

●30代でのオプション

30代はまだ病気になる可能性が低い年代ですが、女性のがんは若くても発症することがあります。
30歳を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診、乳がん検診を受けるようにしましょう。20代〜30代の女性は乳腺の発達している乳腺濃度の高い方が多いため、マンモグラフィではX線の特性上、しこりが見つけにくいことがあるので超音波検査がオススメです。

●40代でのオプション

40歳代にさしかかると生活習慣病や慢性病の症状が現れ出します。飲酒や喫煙をする方は、肝臓や肺にかかっていた負担のツケが回ってくるのもこの世代です。
特に、喫煙の習慣がある方は、胸部のCT検査を受けてください。がんによる死亡者数のうち肺がんは男性では第1位、女性では第2位と命に関わる病気です。胸部のX線検査では早期発見が難しいため、CT検査を加えることをお勧めします。

女性の場合40代の乳がん検査は、超音波検査とマンモグラフィの両方の検査を受けるのがおすすめです。それぞれの検査方法には長所と短所があるため、組み合わせて診断する事で精度をあげる事ができるからです。また、閉経を迎えると女性ホルモンの低下に伴い骨の量が急激に減少するため、若いうちに骨密度検査で自分の骨の状態を知っておくことが重要です。

●50代以降のオプション

50歳代以上になると、定期的に継続して検査を受け続けるのが重要となります。特に三大疾患のがん、心疾患、脳卒中についてしっかりとチェックしましょう。
また、男性は前立腺がんが増える時期のため、PSA(腫瘍マーカー)検査をおすすめします。

よい人間ドック機関の選び方は?

利便性や、施設の豪華さで選ぶのではなく、外部の審査機関の認定を受けている健診施設の中から選ぶのがおすすめです。
人間ドックを行なっている健診機関は全国に1500以上ありますが、そのうち人間ドック学会の実施している人間ドック健診施設機能評価の認定を受けている施設は約400施設程度です。

「受診者利益の確保」、「施設・組織の質向上」、「計画的・継続的な施設運営」、「地域医療、企業の健康管理、保険者ニーズへ対応する」などの視点から
● 安全で正確な検査であるか
● 当日に医師から結果の説明があるか
● 保健指導(生活のアドバイス)があるか
● 受けた後のフォローアップがあるか

などを審査しています。これらの認定は5年に一度更新審査が行われていますので、参考にされると良いと思います。

「受けたら終わり」ではなく結果を生かそう!

健診を受けただけで、安心していてはいけません。一番大切なのは、その後の生活にどう反映させるか。もちろん「再検査・要精密検査」ならば医師の指示どおりに検査しなければいけませんし、「経過観察」ならば生活習慣をどのように改善するべきかを医師や保健師に相談する良い機会です。

忙しい事を理由に、検査後の説明を受けずに帰られる方がいらっしゃいますが、それでは人間ドックの目的や意義を放棄しているようなものです。自分が今後、どういう風にして生活を変えるべきか?来年はどんな検査を受けたら良いか?など、どんなことでも遠慮なく積極的に先生に聞きましょう。

理想を言えば、人間ドックの受診日は仕事を休みにして「自分の身体について考える日」にしてほしいと思います。後日に送られてくる検査結果の書類を見るのと、検査の当日に医師から結果の説明を受けたり、保健師や栄養士から保健指導を受けるのとでは、その受け止め方が違います。40歳を過ぎたら、一年に一度自分へのご褒美として「人間ドック」習慣を続けて健康寿命を伸ばして欲しいと思います。

■そもそも人間ドックってなに?と思っている方はこちらをどうぞ

那須繁(なす・しげる)理事長

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特定非営利活動法人 日本人間ドック健診協会理事長
1980年九州大学医学部卒業後、博愛内科クリニックなどに勤務。1998年より、特定医療法人財団博愛会理事長に就任。他に日本人間ドック学会理事、九州予防医学研究会会長も勤め人間ドックの普及・健康啓発活動に取り組んでいる。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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