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2019.05.15

早期発見・治療がカギ!目を守るのに必要なこと【緑内障・後編】

KenCoM公式ライター:森下千佳

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日本人の失明原因1位でもあり、40歳から罹患リスクがあがる緑内障ですが、進行を遅らせたり、時には止める方法も確立されつつあります。
緑内障研究の第一人者である北里大学の庄司教授に、引き続き治療法や予防法を伺いました。

緑内障から目を守ろう!最新検査・治療法

健康診断や人間ドックだけではわからないケースも!? 最新検査法

診断のためには眼底検査(目の奥の検査)、視野検査、眼圧検査が行われます。
眼底検査で視神経が減った場所があり、かつその該当場所に対応して視野の異常が見られる場合に、緑内障と判断されます。
眼圧検査は緑内障の種類を決めて治療方針を考えるために行います。

最近では、目の奥の網膜や視神経乳頭の断面を見ることができる三次元画像解析装置(OCTなど)を用いることで、視神経のわずかな凹みなどがわかるので、ごく初期の緑内障を診断できるようになってきました。

ちなみに、健康診断や人間ドックでも、視力や眼圧の検査は行われますが、それだけで緑内障を診断することはできません。
視力が低下するのは緑内障がかなり進行した段階であること、日本人の緑内障は眼圧が正常範囲にあることが多いからです。

前の記事でお伝えした、「緑内障になりやすい人」の項目に当てはまった方や視野に異常を感じる方は、一度眼科で検査することをお勧めします。

緑内障の治療方法

緑内障は「眼圧を下げる事で改善できる、進行を抑えられる病気」です。したがって、眼圧を下げることが、緑内障治療の目的となります。
これは正常眼圧緑内障の場合でも同様です。その眼圧は患者さんにとって高すぎるので、下げる必要が出てきます。

治療には大きく分けると「薬物療法」「レーザー治療」「手術療法」の3つの方法があります。
基本となるのは点眼薬を使う方法です。レーザー治療や手術療法を選択するかどうかは、緑内障のタイプや病気の重さによって変わってきます。

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薬物療法(点眼薬)

日本では患者さんのほとんどが、まずは点眼薬による治療から始まります。眼圧を下げるために使われる薬は、主に房水(目の中の液体)の生産量を減らしたり、房水の流れをよくする薬です。

最初は1種類の薬で様子をみながら、途中で変更したり、また2~3種を併用することもあります。

レーザー治療

レーザー治療は、薬物療法が充分な効果をあらわさなかった場合や、急性発作が起きた場合に行われます。治療には大きく分けて2種類あります。
1つはレーザーで虹彩(いわゆる茶目)に孔を開けて、眼内の房水を流れやすくするレーザー虹彩切開術というもので、急性発作をおこす閉塞隅角緑内障という種類の緑内障がこの方法によって治療可能です。
ただし、何年後かに合併症を起こすリスクがあるので、このレーザー治療は慎重に考えた方が良いと思います。

もう1つは、線維柱帯(房水の排出口)にレーザーを当てて刺激し細胞を活性化することで、水を排出する能力を上げるという治療です。
開放隅角緑内障の方に行います。痛みはほとんどなく、所要時間はおよそ5分です。レーザー治療は手軽なイメージがありますが、効果が数年でなくなる事が多く、その場合は再度レーザー治療が必要となります。

手術療法

薬物療法やレーザー治療が功を奏さなかった場合に行われる治療です。
大まかには、目の中の水の出入り口を新たに作る手術と、線維柱帯を切開して房水の排出をたやすくしてやる手術の2つがあります。これらの手術方法は症例に応じて選択されます。手術をしても症状が改善するのではなく、あくまで眼圧を下げて進行を食い止めるのが目的です。

治療効果を倍増させる!正しい目薬の使い方

「毎日、一生懸命目薬をさしているのに全く効果が出ない」という患者さんを調べてみると、目薬がちゃんと目に入っていなかった、使い方を間違えていたという方が多くいらっしゃいます。適量をしっかりと目に入れ、十分に目に吸収させる事が重要です。

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点眼液というのは、一滴の半量で効くように作られています。入ったかどうか分からないからといって、2滴以上入れると目から溢れてしまい、まぶたが腫れたり黒ずんだりという副作用の原因になります。

今日から毎日できる目に良いこと

眼底の血流が悪い人は、視神経に栄養や酸素が届きにくくなるため、視神経そのものが弱くなってしまうことがあります。そのため、下に記しているような目の周りの血流をよくするような事はぜひ続けて欲しいと思います。

有酸素運動

毎日ジョギングをするなど有酸素運動を継続すると、眼圧が下がるという結果が出ています。
運動を継続することは、目にとっても大変良い事だと思います。

首や頭を長時間圧迫する事は避ける

首の太い方で、ネクタイをきつく締めていると眼圧が上がるとも言われています。
長時間、首や顔周りを圧迫するような事は避けてください。

目を温める

目の周りの血流を良くするので、とても良いと思います。
温めたタオルを使う他、市販の商品も出ていますので活用してみてください。

禁煙をする

喫煙は血管収縮により血行を悪くし、視神経もダメージを受けやすくなると考えられています。
愛煙家の方はぜひ禁煙してください。

勝手な判断は危険!早期発見・治療を心がけよう

「毎日の生活の中で、患者さんが一番気をつけるべき事は、通院を続け定期的に検査を受けること」と庄司先生。
自覚症状が乏しい緑内障は通院のモチベーションが下がりがちで、途中で中断してしまう患者さんが多いそうです。しかし、それは10年、20年先の生活を大きく変えることになりかねません。
ぜひ、この記事を参考に、予防と早期発見・粘り強い治療を目指しましょう!

■視界が欠けてくる?よく聞く緑内障ってどんな病気?

庄司信行(しょうじ・のぶゆき)先生

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北里大学医学部 眼科学 主任教授・医学博士
1988年新潟大学医学部卒。日本眼科学会認定専門医指導医。日本眼科学会評議員。日本緑内障学会理事。日本視野学会評議委員。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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