メニュー

2019.05.30

習慣化を手助けする「意思の力」って一体何?【習慣の心理学#17】

KenCoM公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

記事画像

当連載では、意欲や努力で無理をして始めた習慣は長続きしにくいと言ってきました。タイトルを見て「意思の力」なんて、意欲の最たるもので、矛盾するじゃないかと思った方もいるかもしれません。
そんな方にこそぜひ読み進めてもらいたいのが本記事です。
習慣化における「意思の力」とはなんなのかがお分りいただけると思います。

習慣化するためにあると嬉しい「意思の力」とは

小さな習慣流「意思の力」とは

記事画像

今すぐ自分の鼻を触ってください。

どうでしょう?
触ったでしょうか?

これはスティーヴン・ガイズが書いた『小さな習慣』(ダイヤモンド社)というベストセラーの中で、実際に読者に求めたことです。
なぜこんな話をしたかと言えば、スティーブンはこれが「意志の力のみによってできること」だと考えているからなのです。

読者は仮に鼻を触ったにしても、高いモチベーションでそうしたわけではありません。鼻がかゆくて仕方なかったわけでもないし、触りたくてしょうがなかったというわけでもないでしょう。
つまり、モチベーションも強い意欲も大きな喜びも、この種の行為にはなにもないのです。しかも大変ではありません。
これが小さな習慣の基本原則、純粋な「意思」だけの力なのです。

意思の力=大変ではないからできること

記事画像

モチベーションや意欲によって新しい行動を習慣化しようと思っても、よく知られているとおり意外なほど早く挫折します。
ほとんどの場合、新しい行動を起こすというのは大変なことで、それを乗り越えるほど高いモチベーションに恵まれている日というのは、それほど多くないからです。

たとえばTOEICのハイスコアを目指して勉強するという習慣のことを考えましょう。ほとんどの場合「大変」なので、その先にある「ハイスコアをたたき出して友達に自慢できる」というイメージがどれほど素晴らしくても、そのイメージだけで100日も200日も勉強を続けるとなると、いつしか「そんなことしてもなにもならない」と思えてくるのがふつうです。

しかし、仮に素晴らしいことが待っていなくても、鼻を触るほどつまらないことであっても、決して大変でないことなら続けられるはずです。
さっきの例で言えば、「TOEICで900点を取る」ではなく、「TOEICの問題を1日に1題解く」なら、きっとやれるでしょう。
どんな日でもできるでしょう。徹夜明けの日でも、できるでしょう。これが「小さな習慣」ということなのです。

「そんなことをして意味があるのだろうか?」と疑問に思うかもしれませんが、実はここには大きな意義があります。
TOEICの例で言うならば、「毎日1題解く」という小さな習慣には、時に5題や10題解く日も含まれてくるからです。

コツコツとした意思の力が大きな流れを作る

記事画像

さらに彼はこんな趣旨のことも書いています。
「良い習慣に手をつけない日を作ると、手をつけない方へ自分を方向付けてしまう。一方でたとえごくわずかでも手をつければ、良い習慣の方向に自分を方向付けることになる」と。
連日、自分を良い習慣の方面に向かって進ませるうちに、大きな変化が必ず起きるというわけです。

本当にそうか、と疑うかもしれません。ですがこれがもっと身近な例で、1時間に1ツイート投稿するというのなら、どうでしょうか?
1ツイートは最大140字ですが、100字でもいいでしょう。

これを毎日10回やる。10時間は起きているから容易に可能でしょう。毎時1ツイートなら、毎時5回ずつ鼻を触るくらい優しいことです。

すると結局1日に1000字は書けるという計算になります。
実際それくらいは書けると思います。小学生だって高学年なら、原稿用紙の2枚半くらい、1日あれば書けます。
これを90日続ければ、9万字になります。つまり本約1冊分です。1年なら365日ですから、本4冊分です。これを10年続ければ本40冊分になるほど積み上がります。
これは驚くべき成果でしょう。

「毎日続ける」と「毎日続けられるように続ける」の違いを意識しよう

私は実際、ほぼこのようにして本を書いてきました。さすがに毎時100字ずつというわけではないけれど、毎日1000字くらいを目安にしてきたわけです。今では気がつけば300万字を突破した計算になるわけですが、「小さな習慣が大きな成果を生む」というのはこういうやり方のことを言っているわけです。

大切なのは「毎日続ける」と「毎日続けられるように続ける」の違いを何よりも強く意識することです。

■『習慣の心理学』の他記事はこちら

参考文献

スティーヴン・ガイズ著、 田口 未和翻訳『小さな習慣』(ダイヤモンド社刊)

著者プロフィール

記事画像

■ささき・しょうご
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

この記事に関連するキーワード