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2019.05.17

大切な耳を守るために今日からできること【突発性難聴・後編】

KenCoM公式ライター:松本まや

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その名の通り、突然発症する難聴「突発性難聴」。原因不明ですが、どのように治療を行っていくのでしょうか?有効な予防策は?
大事な耳を守るために何ができるのか、東京医科歯科大学の川島慶之先生に聞きました。

早期治療が肝要!突発性難聴の治療とは

有力な2つの原因説

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はっきりした原因が分からないことが特徴の突発性難聴ですが、原因については次の2つの説が有力とされています。

① 血流障害説

音を感じる内有毛細胞につながる血管の血流が悪くなったり止まったりして、十分な栄養が供給されなくなることでダメージを受けるとする説です。
動脈硬化など、生活習慣病の影響が大きいと考えられます。

② ウイルス感染説

もうひとつは、何らかのウイルス感染によるものとする「ウイルス感染説」です。
難聴を引き起こすウイルスでは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の原因である「ムンプスウイルス」がよく知られていますね。もしムンプスウイルスだった場合、聴力はほとんど回復しません。

突発性難聴の治療法

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突発性難聴が治癒した人の8~9割は、発症から1ヵ月以内で治癒しています。一方で、1ヵ月を過ぎてしまうと、治療してもほとんど回復は見込めません。
内耳の機能は完全に壊れると治すことができないので、少しでも早く治療する必要があります。

原因がよく分かっていない突発性難聴の治療では、ステロイドの投与から始まり、様々な手段を用いながら患者にとってより効果的な治療法を探していきます。

ステロイドの投与

一般的には突発性難聴と診断されると、その日のうちにステロイドを経口投与、もしくは点滴で全身投与します。
ステロイドを投与しても効果が芳しくない場合は、鼓膜に麻酔をして直接中耳の鼓室にステロイドを注入する「鼓室内ステロイド投与」を行うこともあります。この方法だと、より高濃度のステロイドを直接内耳に染み込ませることができるだけでなく、全身への副作用も抑えられます。同じステロイドでも投与の方法によって効果が違ってきます。

その他の治療法

ステロイドの投与以外では血流の改善薬を投与し、血流の改善を促すことがあります。施設によってはその他に、「高気圧酸素療法」を行っています。大気圧よりも高い気圧環境の中で高濃度の酸素を吸入し、血中の酸素濃度を上げる治療法です。特に発症からあまり時間の経過していない患者に対して有効とされています。

そもそも突発性難聴を防ぐにはどうすべき?

発症する人の傾向

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実はどんな人が発症しやすいのかについてもよく分かっていません。しかし、高脂血症や糖尿病、高血圧の人はかかりやすいと言われています。どれも生活習慣が原因ですよね。
ストレスや疲労が関係しているという説もあります。ストレスや疲労が原因とされるものには、「急性低音障害型感音難聴」というよく似た病気もあります。

よく似た病気「急性低音障害型感音難聴」

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その名の通り急に発症する感音難聴で、特に低音が聞きづらくなることが特徴です。これは蝸牛のリンパ液の異常によるもので、過労や過度のストレス、睡眠不足が関係すると考えられています。突然発症し、初診時には原因が分からないことが多いため、突発性難聴と診断されてしまうことがあります。
突発性難聴と違って、ゆっくり休んだりストレスを取り除いたりして治すことができます。

耳を大切にするための4箇条

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突発性難聴は原因もよく分かっていないため、残念ながら厳密な予防法も確立されていません。しかし聴力全般を守るために、次の4つを実践することが効果的です。

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① 極度の騒音を避ける

耳にとって騒音は大敵。イヤホンで大音量の音楽を聴き続けたり、ライブ会場などの騒音環境に長く居続けたりすると、内耳がダメージを受け「騒音性難聴」になってしまうことがあります。音量を上げすぎないよう、常に意識してください。

② 規則正しい生活をする

ストレスや疲労が急性低音障害型感音難聴を引き起こすように、体の健康状態も聴力に大きく影響します。無理をしすぎず、十分な睡眠時間を確保することが大切です。

③ 健康的な食事を摂る

前述した通り、高脂血症や糖尿病、高血圧の人は突発性難聴にかかりやすいと言われています。脂肪や糖分、塩分の過剰な摂取は避けるようにしましょう。

④ 有酸素運動をする

普段の生活に有酸素運動を取り入れることも効果的です。メニエール病や急性低音性感音難聴で有効と言われています。

健康で規則正しい生活が予防につながる

ご覧いただいたように残念ながら絶対的な予防策はないものの、規則正しい生活や健康的な食事、有酸素運動など一般的に「身体に良い」とされている習慣が耳にも良いのです。意識して生活すれば、生活習慣病などの予防にもつながりますから、一石二鳥ですね。

■突発性難聴ってどんな病気?基本を知るならこちらから

参考文献

川島慶之(かわしま・よしゆき)先生

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旭川医科大学卒業。米国国立衛生研究所聴覚部門への3年間の留学などを経て、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科准教授。日本耳鼻咽喉科学会、日本耳科学会、日本聴覚医学会など多数の学会に所属する。

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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