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2019.05.17

ある日突然耳が聞こえなくなったら!?【突発性難聴・前編】

KenCoM公式ライター:松本まや

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ある朝目を覚ましたら、何の前兆も予感もないまま突然片耳が聞こえなくなっていた。そんな想像をしたことはありますか?
まさにそんな形で突然大切な聴力を失ってしまう「突発性難聴」という病気があります。実は性別や年齢に関わらず、いつ、誰に発症するか分からない意外と身近な病気。
その概要について東京医科歯科大学の川島慶之先生に教えてもらいました。

川島慶之(かわしま・よしゆき)先生

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旭川医科大学卒業。米国国立衛生研究所聴覚部門への3年間の留学などを経て、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科准教授。日本耳鼻咽喉科学会、日本耳科学会、日本聴覚医学会など多数の学会に所属する。

繊細な器官「耳」を改めて理解する

意外と知らない聞こえの仕組み

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ご存知の通り、音は空気の振動です。しかし、どのようにして空気の振動が耳から入って音として認識されるのでしょうか。
耳の構造は、一番外側にある「外耳」、鼓膜から奥にある「中耳」、そして音を感じる蝸牛を含む「内耳」に分けることができます。カタツムリ型をした内耳の構造は、見覚えがある人も多いかもしれません。

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さらにその役割によっても、空気の振動を奥の器官に伝える「伝音性」の外耳と中耳、伝わってきた振動を感じ取って電気信号に変換する「感音性」の器官である内耳に大別されます。それぞれをより詳しく見ていきましょう。

繊細で複雑な器官を解説

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【外耳】

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外耳は、顔の外に出ている「耳介」と呼ばれる部分と「外耳道」を合わせた範囲です。外耳道とはいわゆる耳の穴のこと。外から入った空気の振動は約3~3.5cmほどの外耳道を通ってその奥にある「鼓膜」に伝わります。

【中耳】

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鼓膜から奥にあるのが中耳です。鼓膜の奥は「鼓室」と呼ばれる空気の入った部屋のような構造になっています。ここにツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という3つの小さな骨が連なった構造になった「耳小骨」があります。鼓膜が振動を受けて前後に揺れると、その振動がさらに耳小骨に伝わっていくのです。

中耳は「耳管」という細い管で鼻とつながっていて、鼓室内の気圧を調整しています。ダイビングをするときや飛行機に乗ったとき、急激な水圧や気圧の変化に対応するために「耳抜き」をしますよね。実はこの耳管を通して鼻から空気を送り、耳の中の気圧を調整しているのです。

【内耳】

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中耳にある耳小骨は、耳の最深部「内耳」とつながっています。内耳は内部がリンパ液で満たされており、前庭と蝸牛からなります。
内耳では、一番奥にある渦巻型の蝸牛で音を感じ取っています。蝸牛には「内有毛細胞」と呼ばれる細胞が約3500個あり、リンパ液の振動を電気信号に変換し、聴神経を通して脳に伝えています。内有毛細胞は音を聞くために非常に重要ですが、とても繊細で一度障害を受けて破壊されてしまうと再生することができません。
一方で体の平衡感覚を保つ役割を担っているのが前庭です。3つの管で構成された「三半規管」もその一部。前庭では、リンパ液の動きによって体の傾きを感じ取っています。

このように、1つの器官でバランスを感じる機能と音を感じる機能の両方を担っているために、同時に障害を受けることが多く、耳の病気にかかってしまうと平衡感覚がおかしくなってめまいを併発することがあります。

耳は小さいだけでなく、人間の体で一番精密な器官と言っていいほどに複雑で繊細な器官。そのため耳の病気についてはまだ分かっていないことも多いのです。

難聴は1つじゃない 種類の紹介

では、難聴はどのようにして起こるのでしょうか。難聴はまず、異常が生じた部分によって大きく3種類に分けられます。

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① 伝音難聴

音の振動を伝える役割を担う外耳や中耳に何らかの障害が生じたことによって発症するのが「伝音難聴」です。外耳道に耳垢が溜まって耳が詰まった状態や、細菌に感染した中耳が炎症を起こす「中耳炎」によって、聴力が低下した状態などが伝音難聴に分類されます。

② 感音難聴

対して音を感じ取る感音器官である内耳に何らかの障害が生じた状態が感音難聴です。つらいめまいが続く「メニエール病」などが感音難聴に分類されます。

③ 混合性難聴

伝音難聴と感音難聴を同時に発症した状態が「混合性難聴」です。

原因不明!突然聴力を失う突発性難聴って?

突発性難聴とはどんな病気?

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難聴の原因や種類は様々ありますが、
①突然発症する
②高度の感音難聴である
③原因不明である
という3つの要件を満たしたものを「突発性難聴」といいます。
前兆などはなく、文字通り即時的な難聴で、朝目が覚めて片耳が聞こえないことに気が付くように突然発症します。感音難聴で、特に音を感じ取る「有毛細胞」が障害を受けていると考えられています。
そして残念ながらはっきりとした原因は分かっていません。

発症から72時間以内に症状が固定し、回復することはあってもそれ以上悪化することはあまりありません。発症に男女差はなく、40~50代の発症が多いと言われているものの、幅広くどの年代でも起こり得ます。いつ、誰に起こるか分からないのです。

聴力の低下以外の症状は?

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難聴以外では、めまいや耳鳴りなどの症状が出ることがあります。より詳しく見てみましょう。

【めまい】

難聴の発生と前後してめまい、さらに吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
めまいが起こるということは、内耳の蝸牛だけでなく、バランスを司る前庭にまで病変が及んでいるということ。ですが突発性難聴の場合、体が慣れるにつれてめまいの症状が治まり、あまり長く続くことはありません。人間の体は両耳で全身のバランスを取っているため、片耳が障害を受けてしまってもしばらくすると脳が変化し、もう片方の耳だけでバランスを保てるようになるのです。

【耳鳴り】

めまいとは異なり、耳鳴りは難聴が改善しなかった場合、後遺症として残ってしまうことが多く、日常生活で不便さやストレスが続いてしまうことになります。
実際にはしない音が聞こえてしまう現象なので意外と感じるかもしれませんが、実は脳の症状です。本来なら有毛細胞で感じ取った音の電気信号を受け取るべきところに何も信号が送られてこないと、脳がエラーを起こして耳鳴りとして処理してしまうのです。有効な治療法はなく、後遺症として残ると長く苦しめられてしまいます。

「原因不明」な突発性難聴はどう治す?

突発性難聴の診断基準の1つは「原因不明であること」と言うほどですから、詳しい原因は分かっていません。さらに有毛細胞は一度壊れてしまうと再生することができません。なんだか希望がないように感じてしまいますね。
しかし突発性難聴の患者の3分の1が回復しないと言われる一方で、3分の1は聴力がある程度改善し、3分の1はほとんど完治すると言われています。どのように治療をしていくのか、次回紹介していきます。

■突発性難聴の治療法・予防法はこちらから!

参考文献

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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