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2019.05.08

突然迫る激痛の恐怖!働き盛りは要注意の生活習慣病【尿路結石・前編】

KenCoM公式ライター:黒田 創

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巷で経験者に出会うと、その痛みのすごさを語られることが多い病気『尿路結石』。ですが、どういう仕組みで罹るのかご存知の方は少ないでしょう。
今回はそんな尿路結石症治療のエキスパート、横浜市にある大口東総合病院の松崎純一先生に詳しく伺いました。

松崎純一(まつざき・じゅんいち)先生

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1989年横浜市立大学医学部卒業。横須賀共済病院、神奈川県立がんセンター等を経て2002年より大口東総合病院(横浜市)勤務。2015年から副院長を務める。尿路結石の研究および治療のエキスパートであり、『尿路結石症診療ガイドライン2013年版』の作成にも携わる。同病院は松崎医師を中心に尿管結石に対する「体外衝撃波結石治療(ESWL)」や、レーザーによる内視鏡的結石破砕術(TUL、PNL)も多数行っている。

なぜ痛い?どうしてなる?尿路結石のメカニズム

意外と罹りやすい尿路結石症

そもそも腎臓から尿道までの尿の通り道を尿路と呼びますが、そこに尿に含まれるカルシウムやシュウ酸、リン酸、尿酸などが結晶化した「結石」ができてしまう病気を『尿路結石』といいます。
文字通り石ができるわけですが、そのサイズは千差万別で、4mm以下だと尿と一緒に排出されてしまうケースがほとんどです。しかしそれ以上大きくなると、尿道内に留まってしまう可能性がでてきます。そこから大きくなって尿の流れを妨げてしまうと尿が逆流して尿管や腎臓を圧迫し、下腹部や背中に激しい痛みを起こすことになります。

体内で石ができる原因や発生位置はさまざまですが、特に尿管に結石ができると非常に激しい痛みを伴い、七転八倒するレベルと言われるほど。ただ、経験したことのない方にとってはなかなかピンとこないかもしれません。
しかし生涯罹患率をみると、男性は7人に1人、女性15人に1人。トータルで10人に1人が一生に一度は罹る計算となり、決して珍しい病気ではないのです。1965年から10年ごとに行われた年間罹患率の調査結果によると、65年は人口10万人に対してトータル43.7人のところ、2005年は79.3人。40年間で実に1.6倍になっています。その後は横ばい傾向になっているとみられますが、やはり注意が必要であることに変わりありません。

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2005年時点の有病率(その時点で尿路結石を持っている人の割合)は人口10万人に対して429人。今や誰しも罹る可能性が高くなったガン全体の有病率は700人前後ですので、尿路結石も十分高い数字であることがわかります。
年齢分布をみると30~50代に多いのが特徴。働き盛りが罹りやすい病気とも言えるでしょう。

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尿路結石症に伴う急激な痛みで救急搬送されてくる患者さんも少なくありません。しかし4mm以下の尿路結石の場合は手術の必要がなく、水をたくさん飲むなどして結石を自然排出できれば入院などの必要がないため、泌尿器科での治療にまで至らない方が多いのが実情です。
ただし、1度結石ができると排石しても数年後には約4割程度の方が再発するとも言われており、癖になりやすい厄介な病気です。1度でも罹患したらなるべく専門医の診察を受けるようにしましょう。

尿路結石症の種類と症状

ひと口に尿路結石症と言っても発生部位によって種類が異なり、次の通り4つに分類されます。

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このうち腎結石と尿管結石は上部尿路結石と呼ばれ、尿路結石症の95%を占めています。まず腎結石の場合ですが、こちらは基本的に痛みを起こさないのが特徴で、結石により2個ある腎臓のいずれかの働きが悪くなっても、もう片方が働くことで機能は保たれることがほとんど。そのため腎臓内で結石が大きくなっているのに痛みがなく、検査を受けて初めて肥大化に気付くというケースも少なくありません。しかもその時点では腎機能がかなり低下している場合も多いです。腎結石が見つかった時は、必ず腎機能をチェックして必要に応じて治療を行いましょう。

もうひとつの尿管結石は、腎臓から流れ出た結石が尿管で詰まって発生します。結石のおかげで流れなくなった尿が逆流して尿管や腎臓を圧迫し、下腹部や背中に激しい痛みを起こすのですが、この痛みは人生で味わう3大激痛とも呼ばれています。また、結石が尿管の壁を傷つけると、血尿が出ることもあります。

膀胱結石の症状は排尿痛や頻尿、残尿感など。尿道結石は排尿困難や尿が出なくなる尿閉などが主な症状となります。

尿路結石症の原因は?

尿路結石症の原因はさまざまで、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病がこの病気をもたらしていると考えられます。その意味では尿路結石症も立派な生活習慣病であると言えるでしょう。
結石になりやすい方の傾向をみると、肥満傾向、運動不足、野菜や食物繊維の摂取不足、夜にドカ食いするといった夕食中心の食生活、水分不足……。やはり食事と運動が大きなポイントとなってきます。これは予防策でもあるのですが、特に水はたくさん飲む必要があります。また、2005年に日本泌尿器科学会が行った調査によると、4,958症例中約15%にあたる753例に家族歴がみられ、家族歴のある患者の方が有意に再発も多い事が判明しました。これらのことから、遺伝的要因も大きいと思われます。

仮に結石が見つかっても、サイズも小さく無症状だった場合は、経過観察に留めるケースも少なくありません。しかし結石がさらに大きくなるリスクを考えると、生活習慣の改善を含めたアドバイスの周知や経過観察の必要性から、定期的に通院していただくことをおすすめします。

生活習慣の改善で予防しよう

尿路結石も生活習慣が深く関わっているとお分かりいただけたのではないでしょうか?
では、一体どんなことに注意すべきで、どう治療を行うのでしょう。
次回は、尿路結石症の検査および治療法、予防策についてお話しします。

→怖い尿路結石を治療・予防するには?

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

(撮影/KenCoM編集部 取材・文/黒田創)

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