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2019.05.09

物事が予定通りに進まないならこれを試そう!【習慣の心理学#14】

KenCoM公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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今日こそはプロジェクトの目鼻立ちをつけようと思っていたのに、いざ机に向かうと手が動かなくなる。そういうことはよくあることかと思います。
あるいは今日こそはジムに行こうと思っているのに、気がつくと昼過ぎまでグズグズしてしまうということもよくあります。
その理由は簡単で、「やるべきことを先送りしている」というよりは、「やるべきことを始めずに他のことをしてしまう」からです。そんなことはないと思っている方はぜひこの記事を読んでみてください。

やるべきことを先送りしてしまう人へのアドバイス

人はふたつ以上のことを同時にはできない

最近になってようやく「人間はシングルタスクしかできず、本当の意味でのマルチタスクはできない」ということが言われるようになりました。
もちろん「ラジオを聞きながら単純作業をする」といったことなら出来なくもないのですが、それは「耳はラジオを聞き、手は単純作業」というように、別々の部位を使っているから出来るのです。
しかしこれですら、「ラジオを聞いていると手の方に注意が向かなくなって、作業に集中するとラジオのことは頭に残りにくくなる」という弊害は起こります。

特にあまり手をつけたくないことや、先送りしがちなことを行う場合には、2つ以上のことに同時に手がけると失敗しがちです。
ただでさえやりたくないことなのにハードルをあげては大変です。そういったときは心理エネルギーを1つだけのことに集中するほど、作業がやりやすくなるはずです。
これは想像しやすいことだと思います。

しかし、「2つ以上のこと同時にしてしまう」ことの中で、あまり気にしている人が少ない割に、問題につながりやすいものがあります。
それが「始めると同時に終わらせようとすること」です。

最初から終わらせようとすると、始めることもできなくなる

よく考えてみれば、物事を始めもしないうちから、終わらせることはできません。まさに矛盾です。
この原稿で言えば、「最初の一行を書きながら同時に最後の一行を書くことなどあり得ないことである」というのが分かりやすいかもしれません。
つまり、物事に取り組む際、「さあこの仕事を終わらせるぞ!」と意気込むのはマルチタスクになるのでよくないのです。
「始めること」と「終わらせること」は分解の余地があります。
まず始め、進めて、その後に終わらせるのです。

一見当然のことのように見えますが、実は多くの人がこの状態に陥ります。
最初から終わらせようとしてしまうから、最後のことを考えてしまう。最後だけではありません。
先のことを考えてしまう。
次の予定を考えてしまう。
締め切りのことを考えてしまう。
これらは全部、いまからやる作業以外のことです。関係が深いようでいて、まったく別のことです。言うなれば「雑念」になります。

今している仕事が進まないときは、こういうことをしていないか、常に気をつけることが大切です。
一度に1つのことだけを行うようにし、2つ以上のことをしないようにしましょう。
仕事をしながら先のことを考えたり、次の予定を考えたり、締め切りに間に合うかを気にしたり、終わらせようとしたりするのはやめましょう。
いまやっていることだけに集中します。
そうすれば自然と進むのです。

物事を行うときには、しっかりと分解するのがコツ

私は毎回この原稿を、絶対に「書くことを考えてから書く」ということをしません。「試しに書き始める」だけに留めます。内容やその日の状況によっては途中で打ち切って別の日に続きを書くのです。
続きを書く場合、実はキリが悪いところからの方が書きやすいからです。
仕事や予定に手がつけられないと思ったらまずは今の自分の状況を疑いましょう。必ずその仕事には分解の余地があるはずです。
つまり、2つ以上のことをしようとしているのです。

その2つを明らかにするために、アウトライナーを使うのも良いと思います。
アウトライナーとは、仕事の構造を見える化することで、全体の状況を把握する方法です。具体的には行なっている仕事の下に分解したサブ項目を、その下にさらに分解したサブサブ項目を……といった感じで項目を羅列していきます。
たとえば私はこういうふうにして書き始めます。

下書き
・2019-04-09(火)
 ・○○を終わらせよう!
  ・○○を始める
  ・○○を終わらせる

下書きという項目の下に、次々と項目が並んでいるのが分かります。注目すべきは、始まりと終わりを分けていることです。こうすることで始める際の重苦しさを減らし、気軽に始められるようになります。

分解する癖が習慣化を助ける

悩んでいる作業には、ほぼ確実に分解する余地があります。
これを見て「ふーんなるほど」と思うだけではなく、実際になにを使ってもいいので無理矢理にでも分解する癖をつけましょう。
今よりずっと早く作業に着手できるはずですし、行動力も高くなるはずです。

著者プロフィール

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■ささき・しょうご
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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