メニュー

2019.03.28

新東名に現れた「自転車」で降りれるSAの正体|高速道路を自転車で走ることは可能なのか

東洋経済オンライン

しまなみ海道にある「瀬戸内海横断自転車道」。サイクリング愛好家に人気のコースだ(写真:takuzero/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/272647?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

しまなみ海道にある「瀬戸内海横断自転車道」。サイクリング愛好家に人気のコースだ(写真:takuzero/PIXTA)

今年3月は、高速道路の新規開業、それも新東名高速道路や新名神高速道路といった注目の区間の延伸が目立ち、全国ニュースなどでも取り上げられたが、その陰で地味ながら、ちょっと不思議な施設が3月2日に静岡県を走る高速道路のサービスエリアにオープンした。

静岡SAにできた「自転車の駅」

新東名高速道路の静岡サービスエリア「NEOPASA(ネオパーサ)静岡」上り線に併設されて開業した「自転車の駅」である。「えっ、高速道路を自転車で走れたっけ?」と、高速道路ファンであるとともに大の自転車好きの私にとっても思わず目がくぎ付けになるようなニュースである。


東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

これは、サービスエリアまで車に自転車を積んでやってきて、そこで自転車に乗り換えて周辺のサイクリングを楽しんでもらおうという目的で、「自転車の町」を標榜する静岡市の「しずおかサイクルシティ」の取り組みの一環として、ネオパーサ静岡に設けられたものである。

具体的には一般道からアクセスできる側に5台分の駐車場と、工具や空気入れの貸し出しサービスのあるステーションを併設したものである。SAに併設したことで、レストランやコインシャワーが利用できるのも大きな魅力である。ただし、一般道側にあるので高速道路を走行してネオパーサにたどり着いた利用者は、いったんスマートICから一般道に降りて利用することになる。

現在、全国のかなりの自治体で、市内の移動のための交通手段として自転車をきちんと位置づけ、利用しやすい環境整備に力を入れ始めているが、静岡市も「世界水準の自転車都市」を目指すために数々の施策に取り組んでいる。「自転車の駅」の整備もその一環で、すでに市内30カ所以上に設置が進んでいるが、高速道路のサービスエリアへの併設はもちろん初めてである。

設置から20日ほどして利用状況を聞いてみたが、まだ認知が進んでいないことや本格的な野外スポーツのシーズンはこれからということもあってか、今のところほとんど利用はないということであった。

「自転車の駅」の設置は、高速道路に「車と自転車の結節点」が誕生したということになろうが、私が最初に素朴な疑問を持ったように、高速道路そのものを自転車で走ることはできるのだろうか?

現実には、こんなことが起きている。今年2月17日の午後11時頃に首都高速道路の霞が関トンネル付近で、時速50kmほどのスピードで走行する自転車の映像がドライブレコーダーに記録されていたというニュースが広く報道された。

2018年6月には、愛知県清須市の名古屋第二環状自動車道(名二環)で、走行車線を走っていたロードバイクに大型トラックが追突、自転車に乗っていた男性が腰の骨を折るなどの重傷を負ったというニュースがあった。

高速道路の入口は、料金所があるのが普通であるし、本線へのアクセスは急な勾配であることが多く、気づかずに進入するというのは極めて難しい気がするのだが、こうして時折報道されるし、報道されないものも含めれば、実は全国で頻繁とは言わないまでも、こうした誤進入はそこそこ起きているのかもしれない。もちろん、明らかに高速自動車国道法に違反する行為である。

サイクリング愛好家に高速道路を開放するイベントも

しかし、高速道路を堂々と自転車が走れるときが、まれにだがある。高速道路の新規開通を前に、まだ自動車が走っていない道路上を歩いてもらうウォーキングイベントが催されてニュースなどでも報道されるが、最近ではサイクリストに開放するケースも増えてきた。

昨年5月には、開通目前の外環道の千葉区間をサイクリストに開放する大々的なイベントが催されたし、これまでも常磐自動車道、紀勢自動車道、名古屋都市高速などでも同様の催しが開催されている。

開通前のピカピカの道路、高速道路であるため一般道よりも勾配やカーブが緩く走りやすい道であること、開通後は同じ場所を自転車で走ることはまずありえないことから来る「特別感」を味わえることなどから、毎回大勢の参加者が集まっており、中にはこうしたイベントがあるたびに参加する方もいる。

ところで、サイクリストにとってわが国の最大の聖地は、広島県尾道市から愛媛県今治市まで、瀬戸内の島々に沿って架橋された「しまなみ海道」であろう。私のサイクリストの知人も多くがすでにここを走破しているし、いつか走りたいと口にする仲間も少なくない。

この区間は、西瀬戸自動車道という本四高速会社が運営管理する高速道路がメインだが、すべての橋に原付も含めた自転車歩行者道がついており、橋の部分では自転車で高速道路と並走することができる。

海外にも知られる聖地「SHIMANAMI」

「SHIMANAMI」は今や海外のサイクリストにも認知されつつあり、外国人サイクリストの姿を見かけることも珍しくない。通常は橋ごとに自転車の通行料が必要だが、2020年3月まではすべての橋の通行料が無料になる「しまなみサイクリングフリー」が実施されている。

さらに、2014年から隔年で、西瀬戸自動車道を通行止めにして、自転車の走行イベント「サイクリングしまなみ」が開催されてきた。昨年は10月28日に開催され、7000人を超える参加者が集まった。

最長のコースは尾道―今治間の全コースを往復する140㎞。東名高速道路で東京から西へ向かえば、富士川を越えて由比パーキングエリアあたりまでの距離に匹敵する行程をすべて自転車で走れるのだ。

誤って高速道路に進入する自転車は論外だが、信号も歩行者もいない空間を自分のペースで走れたらと願うサイクリストは多いはず。しまなみ海道のイベントは地元の自治体の深い理解とサポートで成り立っていて、どこでも可能なことではないが、車と自転車はともに人の移動を担う重要な手段であることには変わりなく、相互の理解のためにも車への迷惑をできるだけ抑えながら、たまには高速道路をサイクリストに開放するイベントがもっとあってもよいのかもしれない。

記事画像

佐滝 剛弘:京都光華女子大学教授

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します