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2019.03.13

本当は恐ろしい「収入合算」の住宅ローンの実態|「返済が苦しい」と相談に来る数はかなり多い

東洋経済オンライン

「収入合算」でローンを組むときに気をつけなければいけないこととは?(写真:metamorworks/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/268764?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

「収入合算」でローンを組むときに気をつけなければいけないこととは?(写真:metamorworks/PIXTA)

物件を気に入ったものの、世帯主1人の収入では審査が通らない……そんなときに金融機関から提案される“次の手”が「収入合算」です。夫婦2人分の収入で見てもらえれば借入可能額が増える、という仕組みに惹かれて利用するご家庭が少なくありません。

けれども、後になって返済が苦しいと相談に見えるのは、「収入合算」で借りたケースが圧倒的に多いです。

そこで、Aさん夫婦(年収:Aさん500万円、妻300万円)を例に、「収入合算」の仕組みについて紹介します。「収入合算」には[連帯保証型]と[連帯債務型]の2種類があるため、今回は、[連帯保証型]に焦点を当てて、マネー面のメリット・留意点を整理します。前回の「ペアローン」の記事に関連情報を書いていますので、併せて読んで理解を深めてみてください。

「連帯保証人」には収入があることが要件

[連帯保証型]は、銀行をはじめ多くの金融機関で取り扱われていますので、「銀行で収入合算」というと、ほぼ間違いなく[連帯保証型]といった状況です。夫婦のうち1人が債務者になり、もう1人が連帯保証人になる形で1本のローン契約を結びます。

連帯保証人は、正社員であればOKですが、契約社員や派遣社員ではNGというところもあるので注意が必要です。加えて、連帯保証人の年収について満額で見てくれるところもある一方、50%までというところも少なくありません。

なお、妻の産休・育休については、休みに入る前の給与明細書や賞与証明書、育休・産休期間に関する証明書など、休む期間がわかる書類を銀行などに提出すればOKというところが多い印象ですが、この点も各金融機関で異なります。前もって確認しておくのがおすすめです。

さて、「収入合算」することでどれくらい借入可能額が増えるかを知るには、「審査金利」と「年収負担率」への理解が欠かせません。金融機関がローン審査をするにあたっては、金利上昇によって返済額アップとなってもちゃんと返済していけるかどうかを見るために、高めの審査金利で試算します。審査金利は公表されていませんが、3~4%のところが多い感触です。

年収500万円のAさんが35年返済で申し込むケースでは、融資希望額が3293万円(審査金利4%)~3789万円(審査金利3%)であれば審査をパスできるイメージです。

そして、年収負担率(=年収に占める年間返済額の割合)の上限はローン説明書に記載されていて、年収400万円以上なら多くのところで35%を基準にしています。Aさんなら、年間175万円(=年収500万円×35%)が年間返済額の上限と判断されそうです。

Aさんはいくらまで借りられるのか

あとは、金融機関の借入可能額シミュレーションにアクセスして月額14万5833円(=175万円÷12カ月)で35年返済を金利4%で借りるプランで試算すれば、3293万円が導き出されるというわけです。融資希望額が4000万円という場合は、Aさん1人では手が届かなさそうです。

では、Aさんが「収入合算」で借りる場合はどうでしょうか。債務者の年収の半額まで連帯保証人の収入を加算できるという銀行で借りる例では、年収750万円(=Aさん500万円+妻250万円)で判断し、4940万円(審査金利4%)~5684万円(審査金利3%)まで借入可能額がアップする計算です。

つまり、「収入合算」にすれば、Aさん名義で4000万円の住宅ローンを組むことは、かなり実現しやすいプランであることがわかります。というわけで、以下ではこのプランでマネー面がどうなるか見ていきましょう。

Aさんが、[連帯保証型]で「収入合算」し、4000万円の住宅ローンを組むときは、債務者はAさん、妻が連帯保証人という形で借りることになります。これは、債務者であるAさんの返済が滞ったときには、連帯保証人である妻が残債の全額を肩代わりすることを意味しています。

もしも、返済に応じられなければ、最悪、家を手放したり自己破産したりする可能性があります。冷静に考えれば、妻の責任は決して軽くなく、とても怖い借り方なのです。

そのうえ、前回取り上げた「ペアローン」と比べると、同じ4000万円を夫婦2人で協力して返済することは同じなのにもかかわらず、「収入合算」の[連帯保証型]はさまざまな点で見劣りします。

デメリットとは?

まず、死亡時などにローン残債が保険金で完済される仕組みの団体信用生命保険(団信)に、債務者のAさんは入れますが、妻はあくまで連帯保証人にすぎないため、加入することはできません。

続いて、住宅ローン控除(1年目)は、27万5500円です。前回の「ペアローン」では2人合計39万1200円を受け取れることに比べ、約11.6万円も少ないのは残念ですね。この差が10年(消費税8%時)~13年(消費税10%時)も続くのは大きいです。

「4000万円のローンを組んだのだから、1%の40万円ほど受け取れるはずでは?」と思う人もいますね。住宅ローン控除は、年末残高の1%相当額を受け取れるイメージですが、納めた所得税・住民税以上の額は受け取れません。

Aさんは、どれだけ多く住宅ローンを借りても、対象になる所得税・住民税の合計27.55万円(=所得税13.9万円+住民税13.65万円)を超える額は受け取れないのです(詳細は前回記事をご参照ください)。こういう“もったいない”ケースは、「収入合算」の[連帯保証型]でありがちです。

さて、「すまい給付金」について見ると、消費税率8%時は0円、10%時の住宅取得であれば30万円受け取れます。けれども、前回見た「ペアローン」でなら夫婦合計で8%時11.2万円、10%時37.4万円を受け取れたことに比べると、歴然とした差があります。

こうして見てくると、「収入合算」の[連帯保証型]で借りると、リスクが高いのにもかかわらず、“もらえるお金”は少ないです。では、なぜ借りるのかというと、1人の収入では足りないときに、提案する側(銀行)も提案しやすく、提案された側(債務者)も借入可能額を気軽に手軽に増やせるからです。

そのせいでしょうか……「収入合算」夫婦の相談を受けていてよく感じるのは、覚悟の甘さ、です。例えば、「収入合算で借りていたものの、妻が育児に専念することになり仕事を辞めたため、借り換えで家計を楽にしたい」といった相談が後を絶ちません。

実態として返済できている今なら借り換えして返済額を軽くできるのでは、という考えはわかるのですが、夫の収入が従前より大幅に増えておらず、ローン返済が進んでいない状況では、金融機関は借り換えをまず引き受けてはくれません。もともと夫1人では審査が通らなかった金額を借りているわけですから、当然です。

また、「ペアローン」と同等以上のリスクを抱えていながら、働けなくなったときに備える保険(就業不能保障付き団信や就業不能保険、所得補償保険など)や、妻死亡時に備えた生命保険も、ほとんど手当てできていない「収入合算」夫婦を多く見かけます。

2人で返済していくなら、ずっと仕事を続ける心意気と必要な保険の手当てに、どうか余念なく。次回以降、もう1つの「収入合算」である[連帯債務型]を取り上げます。

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竹下 さくら:ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

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