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2019.05.29

若い時こそ要注意!寝たきりを招く新たな概念を学ぼう【ロコモティブシンドローム・前編】

KenCoM公式ライター:黒田創

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皆さんは『ロコモティブシンドローム』、略して『ロコモ』というワードを聞いたことがあるでしょうか。加齢などによって立ったり歩いたりといった移動のための基本的な運動機能が低下した状態のことを言います。
30~50代で元気ハツラツの皆さんは「立ったり歩けなくなるなんて、もっと高齢化してからの話でしょ?」と思われるかもしれません。しかしこのロコモ、実は働き盛りの世代こそ意識してほしい問題なのだとか。今回は「ロコモ チャレンジ!推進協議会」委員長を務めるNTT東日本関東病院手術部長の大江隆史先生に伺いました。

大江隆史(おおえ・たかし)先生

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NTT東日本関東病院手術部長、東京大学整形外科非常勤講師。東京大学医学部医学科卒業後、同大学整形外科医局入局。同大学医学部附属病院整形外科医局長などを経て現職。2010年「ロコモ チャレンジ!推進協議会」の設立とともに副委員長、2014年より委員長を務め、ロコモティブシンドロームについての啓蒙を行っている。

40〜50代から気をつけたいロコモ

そもそもロコモとは?

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ロコモティブシンドロームとは、身体を動かすために使われる『運動器』、即ち骨、筋肉、関節、軟骨、椎間板などに障害が出て移動機能の低下を来した状態で、要介護などQOL低下リスクが高まるものを指します。
この運動器の障害には『運動器自体の疾患』と『加齢による運動器機能不全』の2つが大きな原因になります。

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多くの場合、加齢とともに進むため60代以上から気にされる方が増えてくるのですが、実は若い方々にも注意いただきたい状態なのです。

なぜ若いうちからロコモを意識する必要があるか

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厚生労働省が発表した「平成28年 国民生活基礎調査」によると、介護が必要になった原因として転倒・骨折(12.1%)、関節疾患(10.2%)といった運動器の機能低下によるものが全体の22.3%を占めており、認知症や脳血管疾患よりも割合としては高いのです。つまり何の手も打たずに高齢化してしまうと、ロコモが原因で要介護になるリスクが高くなってしまいます。
今後日本の高齢化率がますます進む中で、要介護状態の人を一人でも減らさないといけない。そこで2007年に日本整形外科学会が世界に先駆けてロコモという概念を提唱し、2010年に「ロコモ チャレンジ!推進協議会」が発足しました。

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いま元気に活動している皆さんにとっては他人事に思えるかもしれません。
しかし現代社会を生きる私たちは、日常生活の中で足腰を使う機会が少なくなっています。バリアフリー化が進んだことであらゆる建物や駅にエレベーターやエスカレーターが設置され、長い階段を上り下りしなくても移動できるようになりました。
買い物もネットで注文すれば宅配業者が届けてくれますから、あちこちのお店を歩き回らなくても済むようになりました。
1日に何回も行くトイレだって、昔のように膝と腰を屈めたスクワット・スタイルになる和式便所を使うことはかなり減って、楽に座れる洋式便所がほとんどです。

今の高齢者世代が働き盛りだった頃はそうした社会インフラが整っていませんから、今以上に日常的に足腰を使わざるを得ない状況がありました。それにも関わらず要介護者の3割強は運動機能の低下が原因で要介護状態になっています。
全体的に運動不足の働き盛り世代がこのまま高齢化したら……?

要介護者全体の数が増えることはもちろん、その原因がロコモになる率も高くなるでしょう。今のうちからロコモ対策をしないといけない理由はそこにあります。

働き盛り世代は実は運動不足!?

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これを読まれている方の中には日常的にランニングをしたり、ジムに通ったりと意識的に運動している人も多いと思います。しかし全体的にみると、いまの働き盛り世代は運動不足であることは間違いありません。
2016年に東京・丸の内近辺で働く20~30代の女性を対象にロコモ度テストを行った調査報告(※)によると、参加者の30%がロコモ度1(ロコモが始まっている状態)、4%がロコモ度2(ロコモが進行している状態)と判定されました。骨や筋肉の量がピークにあるはずの20~30代でも、ロコモが進みつつある可能性が高い。それがいまの現実です。

2016年度からは、学校検診においても運動器疾患を早期発見するべく「運動器検診」が必須項目に加えられており、ロコモ対策は全世代にとって重要事項になっているのです。

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特に骨については男女とも20歳前後に最大値を迎えて40代前半頃まで同じ水準で推移し、女性は40代後半から、男性は60歳頃から下降していきます。
骨も筋肉も若いうちから適度に刺激を与え、かつバランスよく栄養を取れば下降のカーブを緩やかにできることが最新の研究でわかっています。
便利で足腰を使わなくても生活が送れる現代社会だからこそ、意識的に運動習慣をつけておく必要があるのです。

若い頃から気をつけるにはどうするべきか

若いうちから気をつける必要性が高まっているロコモティブシンドローム。
では、どんな運動から始めればいいのでしょうか。次回は具体的なロコモ予防策を中心に紹介したいと思います。

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参考文献

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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