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2019.04.10

家族全員でまずは簡単セルフチェック!睡眠時無呼吸症候群とは・後編

kencom公式:ライター森下千佳

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の一番の怖さは、自分では気がつきにくいこと。気がつかないうちに身体や脳に影響を与え、最悪の場合は突然死を招くことも……。
そうならないためにも、まずは自分や家族の睡眠をチェックしましょう!

セルフチェックで気付こうSAS!

睡眠時無呼吸症候群セルフチェック①

まずは、以下の8項目でSASの可能性を点検してみましょう。当てはまる項目が、
・0〜2点:SASのリスクは軽度
・3〜4点:SASのリスクは中度(SASがある可能性72%、重症SASの可能性13-18%)
・5点以上:SASのリスクは高度(SASがある可能性77%以上、重症SASの可能性30%以上)
となります。

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以上のチェック項目で5点以上当てはまってしまうと、かなりSASである可能性が高いですからぜひ医療機関に行かれることをおすすめします。
SASは太った男性の病気というイメージがありますが、前回の記事でもお伝えした通り、男性だけでなく女性でもかかる病気。喉や首回りの形状が病気の発症と強く関わっているからです。

睡眠時無呼吸症候群セルフチェック②

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大きく口を開けて、舌を前方下に出してください。
その状態で、口蓋垂(こうがいすい、別名:のどちんこ)がどの程度見えるかを確認します。
③、④の状態の方は、気道が狭くなっている可能性があり要注意です。
生まれつきの形状の方も稀にいますが、体重増加などで首回りに脂肪がついたりすると、より気道を狭くして無呼吸を起こすリスクが高くなるということを知っておいてください。

病院で行う検査方法は?

問診の結果、SASが疑われる場合は検査を行います。専門機関で一泊入院による検査をする場合もありますが、まずは自宅でできる簡易検査から始めるケースが殆どです。普段通りに寝ている間に行うため、仕事などの日常生活に影響を出さずに検査することができます。

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それぞれの詳しい検査は以下の通りです。

簡易検査

医療機関で貸し出される携帯型の機器で、自宅で寝ている間に行います。手の指や鼻の下などにセンサーを付け、身体の中の酸素の変化と脈拍を測定して無呼吸や低呼吸を推測します。
検査結果はAHI(無呼吸・低呼吸指数)という数値で表されるのですが、これは1時間あたりで無呼吸状態や低呼吸状態が何回あったかを表すもの。このAHIの頻度をもとに診断していきます。簡易検査でAHIが40以上だと、SASの症状が明らかなためただちに治療を行います。AHIが40未満でも無呼吸の疑いがある場合は、入院での精密検査を受けていただきます。

精密検査

医療機関に一泊して、さらに詳しく睡眠の「質」と呼吸の「状態」を調べる検査です。
身体に多くのセンサーを付けますが痛みを伴う検査ではありません。脳波や眼球の動きなどから、眠りの深さを、口と鼻の気流や、血中酸素、いびきの音などから呼吸の状態を詳しく調べます。

睡眠時無呼吸症候群の治療はどう行う?

SASの治療は、症状を緩和させるもの(対症療法)と、根本的にSASの原因を取り除く(根本療法)があり、重症度や原因に合わせて治療が行われます。
軽症の場合は、減量や寝方の工夫、飲酒を控えるなどまずは生活習慣の改善を行いながら様子を見ます。
中等症の場合は、生活改善だけでなく、睡眠時に口腔内装置(マウスピース)を使います。
重症の場合は、生活改善と合わせて持続陽圧呼吸療法(CPAP)、根本治療の外科的手術が行われます。
多くの場合、SASの治療とは長いお付き合いになりますので、治療の意義をしっかりと理解して納得することが重要です。

CPAP治療

CPAPは、睡眠時に専用のマスクを鼻に装着して機械本体から圧力を加えた空気を気道に送り込みます。寝ている間に喉の方に落ち込んできた舌を、空気の圧で押し上げ、気道がふさがらないようにするというものです。基本的には医療機関からの貸し出しになっていて、月に1回受診して、使用状況や症状改善のチェックを受けます。
以前のものは音がうるさかったり、装着感が悪かったりと使いにくいものでしたが、最近はかなり使いやすくなってきています。

口腔内装置(マウスピース)治療

症状が比較的軽い場合は、マウスピースを使って治療をしていきます。
マウスピースで、下あごを上あごよりも前方に出すように固定させることで、舌を持ち上げ、気道を広く保ち無呼吸の発生を防ぐ治療方法です。作製は専門の歯科医師が行います。条件によっては保険適用になります。

SAS治療の効果は?

CPAPで治療した場合と、治療しなかった場合を比較すると、明らかにコレステロールや血圧の値が改善しています。また、未治療の重症SAS患者と、健康な一般人の20年後の生存率を見てみると、35%も違うというデータがあります。
つまり、SASを治療すると命に関わる状況に陥るリスクを抑えることができるのです。

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SASの治療は健康保険適用内

SASの検査や治療には健康保険が適用されます。ただし、初診料・入院に関わる諸経費や、他の検査と併せて行う場合など、状況に応じて別途費用がかかることもあります。
詳しくは直接医療機関にお問い合わせください。

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早めに対処して賢く付き合おう

多くの場合、SAS治療は長い付き合いになります。
だからこそ、治療を始める前に自分のSASの重症度をきちんと把握しておくこと、治療の意義を十分に主治医と話し合っておくことが非常に大切です。
SASを単なる「いびき」と見過ごさず、命に関わるサインだと心得てしっかりと治療に取り組んでいってほしいと思います。

■睡眠時無呼吸症候群の基本を知りたい方はこちらから

中村真樹(なかむら・まさき)先生

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青山・表参道 睡眠ストレスクリニック院長・医学博士・日本睡眠学会専門医
東北大学大学院医学系研究科修了後、東北大学病院精神科で助教、外来医長を務める。2008年睡眠総合ケアクリニック代々木に入職。2012年に同病院の院長となり、睡眠で悩むビジネスパーソンを月に300人以上診察する。2017年6月青山・表参道睡眠ストレスクリニックを開院し、院長に就任。公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究員、東京医科大学睡眠学講座客員講師も務めており、臨床と研究の両面から「睡眠の問題」に取り組んでいる。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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