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2019.03.07

毎日記録するのが大変?それなら自動化しよう!【習慣の心理学#7】

KenCoM公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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何かを習慣化する際、有効なのが記録し振り返ることです。しかし、記録を自分でつけ続けるのはとても大変です。挫折してしまうこともあるでしょう。
今回はそんな記録をできるかぎり「自動化」で解決できること、変わったことを体験ベースで語りたいと思います。

どうして記録を自動化すると習慣化しやすいのか?

自動で記録がたまるとモチベーションが上がる

私は毎朝5時30分に散歩を開始して、約1時間歩き続けているのですが、この習慣がApple Watchを購入してから、ぐっと楽になりました。
歩数や心拍数を勝手に記録してくれるからです。「ワークアウト」というアプリをタップする必要こそありますが、後はずっと自動的に記録をとり続けてくれます。
記録内容は、
・活動時消費カロリー
・心拍数
・平均速度ペース
・歩行距離
などです。
そして完了すれば、iPhoneにその記録が保存されます。それを毎日眺めているだけでも、毎朝歩き続けるモチベーションがかなり上昇するから不思議です。

そんなのあんただけだろ、と思われるでしょうが、そんなことはありません。正確な数字というのは、意識するとおもしろいものです。
私は毎日ほぼ同じコースを、ほぼ同じペースで、ほぼ同じ時刻に歩いているのですから、消費カロリーや心拍も判で押したように同じになってもおかしくはないはずです。
実際よく似ています。しかし微妙に違うのです。毎日違います。

記録から自分の調子がわかるようになる

当たり前に聞こえますが、しかしこの違いは決して機械による誤差ではありません。この違いは、何かしら私の体調を無意識に反映しているようなのです。
いつもよりわずかに歩行ペースが遅かった日は、だいたいわずかに寝不足であり、その日一日中タイプミスもわずかに多くなります。
なぜわかるかというと、こちらも記録しているからです。
私は原稿を作るときには、タイピング速度を実時間で割ったりして計測するので、分速の文字数をほぼ正確に割り出しています。
その違いは気にしなければ気にならない程度のものでしかありませんが、確かに散歩の速度が遅い日は、タイプミスが多く、結局文書入力にも時間がかかっています。
こういうことが全体的に傾向として見えてくるのです。

歩くペースが日を追うごとに徐々に遅くなっていくと、その後に体調が悪くなったり、ある種のスランプに陥ったりもします。
非常に不思議なものですが、そういうことは実際によくあるのです。

記録したくて習慣化する逆転現象が起きることも

また人間というのは不思議なもので、「自動的に計測されているほど、その計測値は正確だ」と思うところがあります。
すでにこの連載でもお伝えしたとおり、習慣、特に運動の習慣というものは、記録によってモチベーションが支えられます。
自動記録は、その正確さを増すので、習慣化へのサポートとしてはより理想的と言えます。

私の場合Apple Watchで「自動記録」を行うようになってから記録への興味が増しました。記録をとるためには歩かなければなりません。手段と目的が逆なようですが、習慣化が進んで行くにつれ、手段と目的の混同が起こるのはよくあることで決して悪いことではないのです。

Apple Watchのseries4を購入してみて、さらに散歩(運動全体)への意欲が高くなっているのは、「自動記録」がさらに精度を増しているからです。
series2のころには、「散歩する直前にワークアウトをタップ」する必要がありました。実のところ今は、歩き出しさえすればしばらくすると「いま歩いていますね?記録を開始しましょうか?」と尋ねられます。記録すること自体が自動的に始まるようになっているわけです。

この記録は運動だけではありません。睡眠記録も同様で、以前は「寝る前に」睡眠記録アプリをスタートさせる必要があったのですが、いまでは「寝入ったときに」アプリが起動します。
これなどは「自動記録はより正確」の典型的な例です。実際睡眠というものは、寝床に入ったときに始まるのではなく、眠ったときに始まるものだからです。
睡眠を正確に測れるようになれば、自分にとって寝すぎだったのか、寝不足なのかなどを判断し、習慣化するきっかけになります。

自動化するアイテムを購入するのも一手

記録を自動化するために、新しい機材を買うというのはなかなか難しい決断かもしれません。
ですが、正確かつ手間なく記録できるようになることで、習慣化はぐっと近づくでしょう。

Apple Watchでなくても、ジムの運動などを習慣化したければ、なるべく自動的に記録してくれるガジェットを一つ購入するのも手です。
ただし、注意点として時々記録を見返してみてください。見返さずにそのまま進んでしまっては、宝の持ち腐れになってしまうでしょう。

■『習慣の心理学』の他記事はこちら

著者プロフィール

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■ささき・しょうご
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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