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2019.06.05

お酒は飲まないほうがいい?飲んでもいい?【ドクターズチョイス#6】

つかさ内科院長:稲島司先生

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仕事の後や息抜き時間のアルコールはとっても美味しいもの。しかし、最近ではアルコール度数の高い缶飲料が増えるに従って、アルコール中毒などの様々な弊害が浮き彫りになってきています。
「お酒は飲んで平気なのか」という素朴な疑問を、つかさ内科院長の稲島司先生が解説してくれました。

Q:お酒って健康に悪影響なことばかりなのでしょうか?

A:様々な因子ごとで異なるので、自分の体調に合わせて選ぶのが大切です。

人の生活にとって切っても切れない関係にあるのがアルコールですが、病気との関係も複雑です。
ただ注意してほしいのは、お酒が良いのか悪いのかという二元論になるのではなく、それぞれの病気ごとにリスクをしっかり知っておくことです。

まず、心血管疾患では、適量であれば飲酒している方がリスクが低いという研究結果があります。
報告によれば、ワイン1本までは心血管疾患のリスクが下がることになります(※1)。

リスクが高まらない量で考えれば、ワインボトル(750ml)1本分程度はリスクを高めないと考えられています。

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一方で肝硬変などの肝臓障害や一部のがんに関しては、飲酒によってリスクを上昇させてしまう可能性が高くなっています。
また、ケガに関しては、完全に飲酒量と比例してリスクが上昇していることがわかっています。
注意力などが低下しますので、それは仕方がないのかもしれませんが。

ここで言いたいのは、飲んだ方がリスクを下げられるというわけではありません。
人それぞれアルコールの耐性だけでなく、疾患の有無や臓器の強弱など人によって差が出るものです。
だからこそ、自分自身の身体と相談しつつ、飲む量をコントロールすることが大事になるのです。

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ワインの『ポリフェノール』『レスベラトロール』の効果を期待して飲むのはオススメしない

お酒の中でも赤ワインだけは別格、健康に良いと思っている方も多いかもしれません。
赤ワインが健康にいいのではないかと言われたのは、いわゆる『フレンチパラドックス』という事象が見つかったことに端を発します。欧州諸国全体で肉を大量に食べるのに、何故かフランスだけ肉食によって生じやすくなる心筋梗塞のリスクが比較して低かったのです。フランスだけ何が違うんだと調べて候補に上がったのが赤ワインでした。
赤ワインにはポリフェノールの一種であるレスベラトロールが含まれています。このレスベラトロールは、『長寿遺伝子』と言われたサーチュイン遺伝子を目覚めさせる一因として注目されている物質でもあったのです。
そこで大規模な実験が行われたのですが、その結果、全く他のお酒と変わらないという結果になりました。

むしろ、このレスベラトロールだけを抽出したサプリメントを販売したアメリカのベンチャー起業は、腎障害を引き起こしたとして倒産にまで追い込まれています。
あまり期待せずに、普通のお酒と変わらず、少々嗜むのがいいでしょう。

むしろ気にすべきは甘味料

アルコールは飲み過ぎればいけませんが、人によっては適量なら楽しむことができるものです。
ただ、一方で、ブドウ糖液糖などの甘味料が多分に使われているようなお酒を飲むと、糖尿病や肥満のリスクをあげてしまう可能性があります。

どうせ飲むなら、そちらの方を気にしてみるのもいいでしょう。

■以前の記事はこちらからどうぞ!

参考文献

著者プロフィール

■稲島司(いなじま・つかさ)先生
つかさ内科院長 医学博士
2003年東京医科大学医学部を卒業。2008年東京大学大学院医学系研究科を修了。循環器内科の専門診療のほか、外来診療を中心に生活習慣病の予防・改善に携わる。東京大学医学部附属病院・地域医療連携部専任医師。2019年よりつかさ内科を開業し院長に就任。論文を中心とした医学エビデンスを紹介しながらの説得力のある講演や著作は人気を博している。内科認定医。循環器専門医。認定産業医、認定健康スポーツ医。
著作に『世界の研究者が警鐘を鳴らす 「健康に良い」はウソだらけ 科学的根拠(エビデンス)が解き明かす真実』(新星出版社刊)、『血管を強くする歩き方: パワーハウス筋が健康を決める』(木津 直昭との共著・東洋経済新報社刊)などがある。

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