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2019.01.31

子供を「お金で苦労しない人」に育てる方法|普通の勉強よりもこっちの方がずっと大切だ

東洋経済オンライン

子供を「お金で苦労しない人」にするには、どんな教育をすればいいのだろうか(Fast&Slow/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/262808?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

子供を「お金で苦労しない人」にするには、どんな教育をすればいいのだろうか(Fast&Slow/PIXTA)

最近、「子ども向けの金融教育が必要だ」という声をよく聞く。金融教育に関する書籍も出始め、実際、筆者にも講演の依頼が増えている。これ自体はとても好ましい傾向ではあるが、残念ながら「我が子には金融教育なんて必要ない。危ないから余計なことを教えないでほしい」という声も依然として多いのが実際のところだ。

その背景には、ほとんどの人が「金融教育=投資の仕方」という思い込みがあるからではないだろうか。しかし、金融教育が指すものはもっと広範であり、資産運用はその中の一部でしかない。ここでは、金融教育が、子どもたちが大人になって、いかにお金で苦しまないための武器になるかをお伝えしたいと思う。

カード作れず、住宅ローンも組めず「投資以前の話」

子ども自身がお金の使い道について自分の頭で考えなくてはいけない場面が、成長の過程で増えてくる。いちばん初めに直面する最も大きな出費は、学費だろう。日本学生支援機構によると、学生数に対する奨学金貸与の割合は、2016(平成28)年度で2.7人に1人となっている。10年前の平成18年度では3.7人に1人だったことを考えると、この10年間で奨学金を利用する学生が増えていることがわかる。

奨学金の利用自体は悪いことではないが、事前に中身を吟味せずに利用すると、卒業後、返済に窮する可能性があるのだ。同機構の『平成30年度 奨学金ガイド』には、奨学金の返還は貸与が終了した翌月から数えて7カ月目から始まると記載されている。

つまり、卒業してから半年後から返済は始まり、毎月順調に返還できればいいが、延滞すると年率5%の延滞金が賦課される。延滞期間が3カ月を超えると債権は債権回収会社に移り、個人信用情報機関に登録される。そうすると、クレジットカードの審査が通らなかったり、利用停止される可能性がある。当然ながら、住宅ローンも組めなくなる可能性もある。

『平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果』によれば、奨学金は返還義務があることを「申し込み前」に知っていた人は、無延滞者に限ると 89.1%と9割近いのに対し、延滞者では 50.5%と約半数にとどまっている。延滞者の認知状況をさらに細かく見ていくと、貸与終了後に返還義務を知った人の合計は20.7%で、その半数以上にあたる11.5%は、「延滞督促を受けてから」知ったと回答している。

日頃から「奨学金破綻」などのニュースが流れたときに、これがどういう問題かを子どもと話し合ったり、奨学金に限らず「借金やローンとは何か」を教えておけば、このような事態にはならないだろう。例えば買い物の際に銀行や消費者金融の看板があれば、こうした企業がどのような業務をしているかを教えてあげるだけでも十分だ。興味があればもう一歩踏み込んで情報を与えれば、かなり理解は深まるはずだ。

スマホ所持の低年齢化で待ち受ける「特殊詐欺」

筆者の講演には親子での参加者が多いが、休憩時間や講演後にアンケートを取るようにしている。返ってきたアンケート結果を見て驚くのは、割と小さな子どもでも自分のスマホを持っていることが多いことだ。何歳からスマホを持たせるべきかという議論はよくなされるが、スマホを持たせることで懸念されるリスクの1つに、「詐欺」がある。

架空請求詐欺やオレオレ詐欺などを「特殊詐欺」と総称するが、警察庁が発表した『平成30年上半期における特殊詐欺認知・検挙状況等について』によれば、平成22年から29年まで、7年連続で特殊詐欺の認知件数は増加している。平成29年の1年間で特殊詐欺の認知件数は1万8212件に上り、被害総額は394億7000万円となっている。

普通なら引っかからないような詐欺も多く、警察に届け出るのも恥ずかしいという理由で泣き寝入りをしている人も相当数いると思われる。それらを含めれば、年間被害総額はおそらく400億円を超える。

例えば、2018年10月に消費者庁が注意を呼びかけた詐欺内容は、「スマホをタップするだけで月収200万円」という虚偽広告だった。この広告に引っかかった人は、多額の費用を支払わされたのだ。

統計局が発表した『家計調査(2017年)』によれば、夫婦共働き世帯の月収は、57万5585円となっている。両親が一生懸命働いても、1カ月で60万円に届かないのが現実だ。日頃から家庭でお金の話をしておけば、「スマホをタップするだけで200万円ももらえること」がありえない話かは、子どもでも理解できるだろう。

また、子どもとお金の話をするときによく話題に上がるのが、「どれぐらい稼げばいいのか」ということだ。筆者の講演で最も盛り上がるのが、このテーマだ。厚生労働省が発表した『平成29年簡易生命表』によれば、現在、男性の平均寿命は81.09年、女性は87.26年だ。筆者が生まれた昭和60年は、男性が74.78年、女性が80.48年だったことを考えると、日本人の寿命は伸び続けていることがわかる。

国立社会保障・人口問題研究所が発表した『日本の将来推計人口(平成29年推計)』を見ると、2065年時点で平均寿命の推計値は、男性で84.95年、女性で91.35年となり、さらに寿命は伸びると想定されている。我々の子ども世代なら、「人生100年」もありえなくないだろう。

生命保険文化センターの調査によれば、老後にかかる必要最低限の生活に1カ月平均22万円かかるという。それを支える高齢夫婦無職世帯の社会保障給付額は、1カ月平均19.3万円ほど(総務省統計局『高齢夫婦無職世帯の家計収支2016年度調べ』)で、民間企業と公務員の平均退職金は、約2500万円となっている(人事院の「民間企業の退職金及び企業年金の調査結果並びに国家公務員の退職給付金について」の資料、2017年4月)。

仮に65歳で現役を退き、90歳まで生きるとすると、日常にかかる最低限の生活費だけで6600万円程度は必要で、社会保障給付と退職金を合計した8290万円で足りることになる。しかし、ゆとりのある生活には月34.9万円が必要となり、その場合、1億470万円は確保してなくてはならないため、2000万円以上足りないことになる。

講演では、父兄から「これからの時代、退職金はもうもらえなくなるのではないか」という質問をよく受ける。「当然そういう方向になる」とお話ししているが、「では、どうすればいいのか」という話を始めると、子どもたちが前のめりになるのが壇上からも感じられる。

それだけ、自分の将来のお金に関心があるのだ。その中では、お金に働いてもらうという文脈から「資産運用や投資」の話をし、その中で複利の効果なども教えていくと、自分事になるので、積極的に耳を傾けてくれる。

金融教育は学校でなく、まず最低限家庭内ですれば十分

これまで書いてきたように、金融教育の話は広範にわたる。そして、金融の知識は時として武器となり、時として防具となり自分の身を守ってくれる。残念ながら、日本で金融教育が義務教育に組み込まれるのはかなり先になるだろう。そもそも義務教育では採用されないかもしれない。しかし、金融教育を行う最善の場所は学校ではなく、家庭なのだから、それほど心配することはないだろう。

教育熱心で自らも資産運用をしている親であれば、金融教育の必要性を感じており、1日も早く教材などで子どもに教え込まなくてはと思うかもしれない。しかし、筆者はそれは少し待ってもらいたいと思う。なぜなら、日常生活の中に「生きた金融教育の教材」は山ほど転がっているし、最初の1歩目を踏み出す機会も山ほどあるからだ。

下手に「早くなにか教え込もう」と考えるよりは、むしろ、まず「お金の話をすることは卑しい」という古い価値観を早急に捨てることをお勧めする。そして今日から早速、日常の風景やニュースを題材にして子どもたちとお金の話をしてみてほしい。それを心掛けるだけで、子どもの将来は少しでも明るくなるはずだ。

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森永 康平:株式会社マネネCEO

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