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2019.01.28

放っておくと食道がんのリスクも……【増えてます!逆流性食道炎#2】

KenCoM公式ライター:黒田創

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脂っこい物を食べた後や飲酒後に胸やけやみぞおちのもたれが起こったり、ゲップや吐き気を催したり、酸っぱい液体が喉元まで上がってくるといった症状を伴う逆流性食道炎。日本消化器内視鏡学会指導医で医学博士の近藤慎太郎先生によると、昔は珍しい病気だったのに近年患者数が増えているのだそう。
今回はその原因や、逆流性食道炎がもたらす大きなリスクについて解説して頂きました。

逆流性食道炎が増えている原因とは

胃炎の原因『ピロリ菌』減少が関係

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逆流性食道炎が急増している背景には、胃の中に生息する細菌、ピロリ菌の減少が挙げられます。ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった病気をもたらす要因のひとつで、増えすぎると胃がんのリスクが高くなります。かつての日本人は井戸水を飲んだり無農薬野菜を食べるといった食生活から、ピロリ菌に感染している人が非常に多くいました。そのため恒常的に萎縮性胃炎を起こすことで胃酸の分泌が低下し、胃酸の逆流が起こりにくい状態にあったのです。それで昔の日本では逆流性食道炎はとても珍しい病気だったわけです。

しかし上水道が整備されるなど日本の衛生環境が年々改善したり、2013年には胃がんのリスクを減らすべくピロリ菌除菌治療の保険適用が拡大されるなど、ピロリ菌を積極的に除菌する気運が高まったことで日本人のピロリ菌の感染率は激減。胃酸の分泌量は正常レベルに戻っていきました。さらには日本人の食生活が全体的に欧米化して高脂肪食中心になったこと、そして過食によって胃酸が分泌されやすい体質になった人が増えました。そうしたさまざまな要因から胃酸が逆流しやすい状況が作られ、結果的に逆流性食道炎の患者数が増加したものと考えられます。

逆流性食道炎が大病のリスクを高める?

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逆流性食道炎が慢性化するとさまざまな症状を引き起こしますが、最も問題なのが食道がん。ピロリ菌による胃炎が慢性化すると胃がんのリスクが高まるのと同様、しょっちゅう逆流性食道炎に罹っていると食道の発がんリスクも高くなるのです。食道がんはいくつかに分類されますが、中でも腺がんというタイプは逆流性食道炎が大きく関わっています。ある調査結果によると、欧米の食道がん患者の50%以上は腺がんと言われています。

生まれつき大柄な体型で内臓脂肪が高く、かつ高脂肪の食生活を送る欧米諸国では歴史的に逆流性食道炎の患者が多く、以前から食道腺がんの増加が問題となっています。日本においては食道がん患者のうち腺がんの占める割合は今のところ10%程度ですが、昔と比べてピロリ菌が少なくなってしまった日本人が、今後欧米と似たような状況になる可能性もないとは言えません。

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従来、日本では食道がんの90%以上が扁平上皮がんで占められており、腺がんは問題視されてきませんでした。しかし、食道腺がんの患者数は増加傾向にあります。もちろんその全てが日本人全体のピロリ菌減少によるものとは限りませんが、ピロリ菌減少とそれに伴う逆流性食道炎の増加は決して無視できない問題と考えています。

ピロリ菌は味方?それとも敵?

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ここまで読んでくれた皆さんのなかには、ピロリ菌を良いもののように受け取った方がいるかもしれません。では逆流性食道炎を防ぐためにピロリ菌の除去をやめればいいのかと言うと、それは逆に胃腸系の疾患リスクを増やしてしまうことから難しい話です。

さきほども触れたように、現在の多くの日本人の胃酸の分泌量は世界的にみても正常レベルに戻ったに過ぎません。
ならば、高脂肪食や過食など、胃酸がなるべく出ないような食生活や生活習慣に変えていくことが大事になってくるのではないでしょうか。

放っておくと他の病気につながる逆流性食道炎はどう対策すべきか

単なる食道炎で済まさず、がんにまで発展する可能性を秘めた逆流性食道炎。ではどうしたら予防できるのでしょうか?
次回は、その予防策や、対応方法について説明したいと思います。

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近藤慎太郎(こんどう・しんたろう)先生

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東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部付属病院を経て山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任。消化器専門医として多くのがん患者を診療し、年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。著書に『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP社)など。今年東京・渋谷に近藤しんたろうクリニックを開院。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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