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2019.01.29

運動が骨を強くする!医師が教える40代からの骨粗しょう症対策#3

KenCoM公式ライター:黒田創

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今は自覚症状がなくても、いつの間にか進行してしまい将来骨折や寝たきり生活のリスクが高まる骨粗しょう症。前回はその予防策、栄養摂取について虎の門中村康宏クリニックの院長、中村康宏先生にお話を伺いましたが、今回はもうひとつの予防方法、運動について中村先生に解説していただきます。

運動から考える骨粗しょう症対策

運動による刺激が骨を強くする

私たちの骨は負荷がかかるほど細胞が活性化し、強くなる性質があります。「自分は若い頃にスポーツをしていたから骨粗しょう症の心配はない」とお思いの方もいるかもしれませんが、何歳になっても運動によってある程度は骨を強くできますし、骨密度をキープすることは可能です。逆にそうやって慢心していると、気づいた頃には骨密度がすっかり低下していることも。今からでも決して遅くないので、無理のない範囲で身体を動かす習慣をつけましょう。

現代の30〜40代は運動不足気味な生活に

営業職など仕事中に身体をよく動かしている方はさほど問題ありませんが、近年は仕事のIT化が進み、VDT作業(職場でコンピュータを使って仕事する)に従事する方が増えている状況です。社会全体でみると働き盛りの30~40代が昔よりも運動不足になっており、日常的に骨に十分負荷をかけられていない可能性が高いと推測されます。その運動不足の30~40代が今後、60~70代になった頃に、骨粗しょう症患者が一気に増える可能性も十分考えられるのです。

今から20年前の40代は活動量が多かった

現代の60~70代は働き盛りの頃に日常の運動量が今以上に多かった世代です。それでも多くの方が骨粗しょう症になってしまうのですから、椅子に座ってパソコンを操作したり、スマホの画面を見ている時間が長い私たちの世代は、かなり意識的に運動する必要があるのです。散歩を日課にしたり、通勤時にひとつ先の駅まで歩いたり、オフィスでの移動はエレベーターではなく階段を上り下りするなど、運動量を少しずつ増やしていきましょう。最低でも1日4,000歩、可能ならばそれ以上歩くようにしたいものです。

なるべく地に足をつけての運動を

骨密度を高めるならウォーキングやジョギング

さらに運動意欲の高い方は、有酸素運動を取り入れましょう。ウォーキング、ジョギング、エアロビクスといったあたりが骨折予防には有効で、なるべく身体を支えている下半身の骨に負荷をかける事をおすすめします。中にはスイミングに勤しむ方もいると思いますが、骨密度を高めるという点では地に足をつけたスポーツの方がベターです。

実は運動の種類によって骨にかかる負担は大きく異なります。例を挙げるとバスケットボールやバレーボールの選⼿は⼀般⼈と⽐較して⾻密度が⾼いのですが、重⼒による負荷が少ない⽔泳選⼿は筋⾁量は多いにもかかわらず、⾻密度は⼀般⼈と変わらないとの調査結果があります。

重力というのは意外と侮れず、無重力の宇宙空間に長期間滞在していると、通常の10倍のスピードで骨が失われていくと言われるほど。つまり下半身、特に脚部に適度に負荷をかけ続けることはそれほど大事で、骨密度を上げて骨を強くするには欠かせない要素なのです。

もし骨粗しょう症と診断されてしまったら

基本は薬による治療が主

各種の研究で効果が証明され、科学的にも裏付けのある薬物療法により治療することができます。現時点で最も多く使われている⾻粗しょう症治療薬は、ビスフォスフォネート系薬剤です。この系統の薬剤は破⾻細胞の働きを抑えることにより、⾻がもろくなるのを抑え、⾻量を上昇させる作⽤があります。

具体的にはボノテオ、フォサマック、ボンビバなどが該当します。近年は週に1回、年に1回など⻑期間効果の持続する製剤も増えていますが、薬の種類や服用方法については医師とよく相談しましょう。
副甲状腺ホルモン製剤や抗RANCLE抗体を使った治療も注目されていますよ。

骨密度検査を半年や1年ごとに受けて、自分がどのような状態になっているかを把握しておくといいでしょう。

免疫⼒低下を防ぐためにも骨の強化を!

骨粗しょう症をきっかけに寝たきり状態になると、免疫不全が引き起こされることがわかっています。⾻に刺激が⼊らないと、⾻の異常に留まらず、免疫や代謝の異常にもつながる可能性があるのです。

今のうちから骨を大事にして、骨密度が落ちないよう意識しておくことが10年後、20年後の皆さんの健康状態を大きく左右します。繰り返しになりますが、今から骨の強化を始めても決して手遅れではありません。

▼「中村医師が話す骨粗しょう症」バックナンバー

監修医師プロフィール

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■中村康宏(なかむら・やすひろ)先生
関西医科大学卒業後、国家公務員共済連合会 虎の門病院に入職。内科医および消化器内科医として従事する中で再発予防、増悪予防の重要性を痛感し、最先端予防医学を学ぶため渡米。NORC NYCなどの予防に特化したクリニックでの研修を通して、多面的・総合的にアプローチする予防医療を習得。同時に公衆衛生学修士号も修得する。帰国後、健康増進、健康防衛のための医療を提供する「中村康宏内科クリニック」を京都で開院。その後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」を東京で開院。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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