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2018.11.09

1日に必要な栄養素、言えますか?大人の食育講座

KenCoM公式:管理栄養士・圓尾和紀

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「食育」というと子どもに食の知識を教育することをイメージするかもしれませんが、今こそ必要と言われているのが”大人への食育”です。
40歳以上の大人世代の幼少期には、まだ食育という言葉すらなく、栄養について学んでこなかった方がほとんどだと思います。

現在日本では男性の3人に1人、女性でも5人に1人が肥満の状態にあり、生活習慣病も増加の一途を辿っています。健康的な食事をする上で、自分に必要な栄養素の知識を身につけておくと食事の質がぐっと上がりますよ。

そこで今回は「栄養素の基本」を分かりやすく解説していきます!

年齢とともに必要なエネルギーの量は減る

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015 年版)より一部改変

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015 年版)より一部改変

食事の一番の目的は「生きていく上で必要なエネルギー(=カロリー)を得るため」ですが、健康を維持するために必要なエネルギー量は加齢とともに減ります。普通程度の身体活動で過ごしている場合、1日に必要なカロリーは10代後半の成長期のピークを境に減り、50代を迎える段階でまた減ってしまいます。

つまり、若い頃と同じように食べていては身体が消費できない分が余ってしまい、脂肪に変わって蓄えられてしまうのです。若い頃運動をしていて今はしなくなった人ではなおさらです。

身体をつくる五大栄養素をおさらい!

ここからは人間が必要とする「五大栄養素」について触れていきます。中でも糖質、タンパク質、脂質は1日に必要なカロリーを摂取する上で必要不可欠な栄養素で、どれかひとつを過剰に摂取すれば良いわけではありません。

①糖質(炭水化物)

人間がもっとも利用しやすいエネルギー源で、主食から摂取することが多い栄養素です。「日本人の食事摂取基準2015」では、1日に必要なカロリーの50〜65%を糖質で補うとよいとされています。近年は糖質制限が流行っていますが、糖質は決して悪者ではありません。食事の内容やタイミング、量が大切です。

②タンパク質

1日に必要なエネルギーのうち、13〜20%をタンパク質で補うことを推奨されています。筋肉から内臓、免疫にいたるまで、身体をつくる重要な材料です。魚、肉、卵、大豆、乳製品などに多く含まれています。特に高齢者やダイエットをしている人は、不足しやすいので注意が必要です。

③脂質

脂質は1日に必要なカロリーのうち、20〜30%が目安です。体内で活動エネルギーの予備として蓄えられたり、身体の構成要素になったりします。糖質と同じでひと口に「脂質」といっても、働きや代謝のされ方は様々です。脂質を含む食材は、カロリーが高いので食べすぎに気をつけましょう。

④ビタミン

体内で酵素の働きを助け、身体の調子を整える働きがあります。ビタミンの種類によりますが、野菜や果物に含まれるものも多いので、バランスを意識して不足しないように摂る必要があります。

⑤ミネラル

ビタミンと同様、酵素の働きを助ける働きと、身体の構成要素となります。こちらも種類によって含まれる食材は変わりますが、小魚や海藻など海の食材には概して多く含まれるので、食事の際は意識して一品用意したいところです。

ほかにも不足しがちな栄養素をチェック!

ここではぜひとってほしい栄養素を2つご紹介します。

まずひとつ目は食物繊維です。
国で目標とする摂取量を定めているものの、摂取量が足りていない栄養素です。

食物繊維は、上で紹介した五大栄養素に加え「6番目の栄養素」とも言われるほどの大事な栄養素。便通を良くしたり、血糖値の上昇を抑えて肥満を防いだりといった効果があります。

動物性の食品にはほとんど含まれないのが特徴で、野菜、きのこ、海藻、果物、穀物に多く含まれています。生野菜だと意外とカサが多く量がとれないので、蒸したり茹でたりして火を通して食べるのもオススメです。

次がマグネシウム。ミネラルの一種で、たくさんの代謝を助けている栄養素です。

こちらも現代人は不足の傾向にあります。生活習慣病を予防したりストレスに対抗するなどの働きが報告されており、多く含まれる食材としては大豆、ナッツ類、玄米、海藻などです。

わかめと豆腐の味噌汁に玄米(または分づき米)という組み合わせは、一見するとシンプルですがマグネシウムがしっかり摂れる組み合わせです。

また、手軽に海苔を活用したり間食にナッツを食べるのも良いでしょう。

大人にありがちな過剰摂取なもの

次に一般的に、過剰摂取しがちな栄養素をご紹介します。

まずは精製糖質。”精製”というのがポイントで、糖質全般を摂りすぎているわけではないことに注意です(昭和のスリムだった頃の日本人のほうがずっと糖質を摂りすぎています)。

精製糖質とは具体的には砂糖や砂糖に準ずるもの(果糖ぶどう糖液糖など。甘いジュースや缶コーヒーなどに入っています)がそれに当たります。これらは血糖値を上げやすく、肥満などにつながるので、やはり「甘いものは控えめに」です。さらに精製した白米や白い小麦も好ましくありません。ごはんはなるべく玄米や分づき米、雑穀米にできると良いです。麺類ではそばがオススメ。

そして、n-6系脂肪酸です。これは脂質の一種で、一般的なサラダ油などの植物油に多く含まれています。摂りすぎると体内で炎症を引き起こし、生活習慣病の引き金にもなるとされています。

対策としては、まず外食ではなるべく揚げ物などの油ものをとらないこと。家庭で料理をする際も「揚げる」「炒める」などの油を使う調理法だけでなく、「蒸す」「茹でる」などの油を使わない調理法を活用しましょう。家庭用の加熱用油としては、n-6系脂肪酸が少なめの米ぬか油やオリーブオイルをオススメします。

管理栄養士からの食生活アドバイス

最後に、日常生活でできる具体的なアドバイスをお伝えします。
まず、可能な範囲内で自炊をすること。外食ではあるものから選ぶことしかできません。自分で料理をすれば自分で食材や栄養を考えて食事を作ることができます。時間がない場合は一度にたくさん作って作り置きしておいても良いでしょう。ひじきや切り干し大根の煮物、五目豆、筑前煮などは食物繊維もたっぷりな上に、海藻、大豆などのマグネシウムが豊富な食材も入り、一度にたくさん作ったほうが美味しくできます。

外食時は不足しがちな栄養素が入っている食材を食べることを意識しましょう。「まごわやさしい」という表現がありまして、これは

ま:豆、大豆
ご:ごまナッツ類
わ:わかめ、海藻
や:やさい
さ:さかな、魚介類
し:しいたけ、きのこ類
い:いも類

の食材の頭文字をとったもの。これらを食事に取り入れることで栄養バランスが整います。そして私がここに付け足したいのが「発酵」です。納豆、味噌、ぬか漬け、甘酒、酢などの発酵食品をとりいれると、腸内環境が整って身体にも良いです。そこで、「発酵」の「こ」を足して「まごわやさしいこ」と覚えてもらえればと思います。

食生活に改善に役立ててくださいね。

参考

著者プロフィール

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■圓尾和紀(まるお かずき)
“日本人の身体に合った食事を提案する”フリーランスの管理栄養士。日本の伝統食の良さを現代の生活に活かす「和ごはん」の考え方を伝えている。『一日の終わりに地味だけど「ほっとする」食べ方』がワニブックスより発売中。

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