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2018.11.03

「嗅ぐ力」と「ダイエット・健康」の密接な関係|ピル服用中に付き合った相手とは別れる?

東洋経済オンライン

老いも若きも「嗅ぐ」という能力を、もっと有効に活用すべきだ(写真:Fast&Slow / PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/246419?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

老いも若きも「嗅ぐ」という能力を、もっと有効に活用すべきだ(写真:Fast&Slow / PIXTA)

においを嗅ぐ能力(嗅覚)は、20代から衰えだし、中高年で急激に衰えていくことをご存じだろうか? 嗅覚は比較的地味な感覚で、その衰えは視覚や聴覚より見過ごされがちだが、近年の研究によると、においを嗅ぐ能力こそが、肉体や精神の「健康」や「アンチエイジング」に大きく影響すると判明してきているのだ。

自らが45歳のときに脳動脈瘤が見つかり、死を身近に感じる経験をした香りのプロ(調香師)が、「におい×健康」というテーマで多くの研究論文や資料にあたって執筆・上梓した書籍が『最新論文等から香りのプロが考案! 嗅ぎトレ 認知症・ガン予防やダイエットにも!“ながら”嗅ぎで、心と体のアンチエイジング』(KADOKAWA)だ。本稿では、その著者である荘司博行氏が、健康や若さを維持するために、体への負担がかかりにくく手軽な「においを嗅ぐ」健康法、名付けて「嗅ぎトレ」を紹介する。

人間、年を取ると「小さい文字が見えづらくなったなぁ」「うちの親、耳が少し遠くなったかもなぁ」など、視覚・聴覚の衰えには気づきやすいものです。では、「においを感じる力」、つまり嗅覚に関してはどうでしょう? 「最近、自分は(あるいは、うちの親は)嗅ぐ力が弱くなったかも」なんて気づく人がどれだけいるでしょうか?

「嗅ぐ力」に関しては、そもそも意識にのぼることがほとんどないため、仮に気づいたとしても、「そんなに気にしなくても害はないだろう」と思いがちです。しかし、この「嗅ぐ力」こそが、“あなたの健康寿命に関係する”と知ったら、今日からご自身や親御さんらの「嗅ぐ力」が気になりはしないでしょうか? あなたの若さを保つのにも、ダイエットを実現するのにも、記憶力を高めるのにも、「嗅ぐ力」が大いに役立つとしたら、どうでしょうか? まさか、と思う人のほうが多いでしょうね。

「嗅ぐ力」と死亡リスクとの関係性

「嗅ぐ力」と「認知症」との関係性に関しては、近年メディアでも取り上げられてきているので、気になっている人も少なくないでしょう。

でも、実は認知症だけではなく、「嗅ぐ力」が「死亡リスク」と関係していることを示す、ちょっと怖い研究結果もあります。

スウェーデンのストックホルム大学の教授(研究者の所属・職階等は原則、研究当時のものです。以下同)らが、40歳から90歳までの1774人(平均63.5歳)の被験者に嗅覚テストをおこない、その後、その人たちを10年間追跡した研究があります。追跡した10年間に、1774人のうちの411人(全体の23.2%)が亡くなったのですが、55歳を超えると明確に「嗅ぐ力」が衰えることがわかったうえ、わかるにおいが1つ減るごとに死亡リスクが8%増加していることがわかりました。そして、嗅覚に障害があると、死亡率が30%も増加するとわかったのです。嗅覚の低下と死亡リスクの関連性が、はっきり数値で表われたわけです。

また、アメリカのコロンビア大学の研究によると、嗅覚テストをした人たちの追跡調査をした結果、嗅ぐ力が平均スコアだった人の死亡率が約18%だったのに対し、嗅ぐ力が低スコアだった人の死亡率は約45%、つまり2.5倍の死亡率だったという結果が報告されています。

アメリカのオンライン科学誌には、57歳から85歳までの調査対象者のうち、簡単な嗅覚テストに正確に答えられなかった人の約40%が、その後5年以内に亡くなっていたという報告もあります。60歳近くなって以降、嗅覚が低下している人の約4割が5年以内に死亡している……なんともショッキングな結果です。

もちろん、人が亡くなる要因には、数多くのものが考えられるので、あまり過敏に反応する必要もないとは思いますが、それでも、どうやら「嗅ぐ力」の低下は、健康寿命(心と体の若さの維持)を脅かす原因となりそうです。

しかし、逆に言えば、「嗅ぐ力」を意識して鍛えれば、健康に長生きできる可能性が広がる、と考えることもできるのではないでしょうか?

ダイエットや美肌効果、記憶力向上も!?

こう述べてくると、「自分も親もまだ若いから、『嗅ぐ力』など関係ない」と思われる方もいるかもしれません。しかし、「嗅ぐ力」は、若い方にも有効に活用してほしい能力です。

たとえば、キンモクセイの香りを嗅ぐと、食欲が抑制され、体重が減るという動物実験やヒトでの研究成果があります。

バラ、オレンジフラワー、バイオレットの香りを嗅ぐだけで、美肌効果が出てくるという研究もあります。

また、ペパーミントには集中力や記憶力を高める効果がある、という報告もあります。

認知症や3大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)、肺炎やぜんそくといった病気の予防や、高齢者の転倒防止などの効果が期待できるにおいや、不眠改善や疲労回復、さらには優しい気持ちにさせる効果が期待できるにおい──などなど、においの心身へのポジティブな効果については、国内外問わず、続々と研究報告がなされています。

私は香りのプロである“調香師”をしていますが、「におい×健康」というテーマで研究論文等を深く調べていくうちに、「人類は、老いも若きも、体に負担が少なく、かつ楽しみながら鍛えられる、この『嗅ぐ』という能力を、もっと有効に活用すべきなのではないか」と強く実感するようになりました。

「嗅ぐ力」に関しては、こんな興味深いトピックもあります。

女性は、生理のとき、自分とは遺伝子の型が違う男性を無意識的に捜している、とされます。逆に妊娠中は、家族など、自分と遺伝子の型が似た人の近くにいたくなるとされています。

なんでそんなことが女性にできるのか、というと……個人の「体臭」の違いを生み出すタンパク質にHLAという物質があるのですが、女性にはこのHLAの差を嗅ぎ分ける能力があるからです。そして、その能力は、父親から受け継いだHLA遺伝子に依存しています。子どもを産もうというときには、できるだけ遺伝子の型の違う相手を求めていくことで、より強い子孫を残せるような働きを「嗅ぐ力」が担っているとも考えられます。

ですので、年頃になったお嬢さんが、自分の父親を「クサイ」「嫌なニオイがする」と意識的・無意識的に感じて、避けるようになるのは、ある意味、正しい現象なのです。将来、できるだけ異なる遺伝子を持つ男性の子どもを産むために、遺伝子の型が似ている父親は、娘から避けられてしまう、というわけです(世のお嬢さん方には、これを理性の力で制御して、お父様にも優しくしていただきたいですが)。

いっぽう、女性が不妊のためのピルを使うと、妊娠しにくい体の状態になります。つまりは、妊娠中と同じようなコンディション、つまり生理が来ない状態になります。すると、ピルを使用している間に引かれた男性は、自分と遺伝子の型が似ている可能性が高くなってきます。本来は、遺伝子の型が似ていない男性を求めるという傾向が、ピルによって逆転してしまう可能性があるわけです。

実は、ピルを使用している最中に引かれた男性と結婚すると、その後の離婚率が高い、という研究報告があります。このことにも、「嗅ぐ力」が少なからず影響しているのではないかと考えられますね。

楽しく嗅ぐ力を鍛える「嗅ぎトレ」

ここまで、「嗅ぐ力」の重要性について説明してきましたが、では、「嗅ぐ力」を鍛えるには、どうしたら効果的なのでしょうか?

そのために私が考案したのが「嗅ぎトレ(嗅ぎ方トレーニング)」という手法になります。そのうちの初歩のいくつかを、ここでご紹介しておきましょう。

【STEP1】鼻クン嗅ぎトレ

ふだん私たちは、特に意識しないで鼻からにおいを嗅いでいます。

そこで、まず試していただきたいのは、意識して鼻からにおいを嗅ぐトレーニング「鼻クン嗅ぎトレ」となります。「クン」とは、イヌのようにクンクンにおいを嗅ぐ「クン」のイメージです。口を閉じて、鼻だけでイヌのようにクンクンにおいを嗅ぐのがコツです。

ポイントは、室内や街中で意識してにおいを嗅いでみて、嗅いだ後に「どんなにおいに感じられたか」を考えてみることです。

【STEP2】見てクン嗅ぎトレ

鼻からにおいを嗅ぐことを意識するのに慣れたら次は、食事の際に、食べ物・飲み物を必ず「見る」くせをつけるトレーニングをしてください。

ふだん、スマホやテレビを見ながら食事をしているという方も、多いと思います。そういうときは、「口に入れているものが何か。どんな香りがしているか」をあまり意識しないで、食べたり飲んだりしていると思います。たとえスマホ等を見ていなくても、食事のとき、わざわざ個々の食べ物・飲み物を強く意識して、においを嗅いでから食べたり飲んだりしている人は少ないでしょう。

そこを改善していただくのが、STEP2の「見てクン嗅ぎトレ」になります。

必ず口に運ぶ前に、これから食べるものを見る、飲むものをながめる。見てからにおいを嗅ぐ。それから食べる。これだけです。

「見る」という行為が、対象を強く意識させるトリガーになります。見るだけで脳は、対象を強く意識します。そこで、嗅いで、味わってみるのです。

「口から嗅ぐ」ことによって感じるにおい

【STEP3】鼻フ〜ン嗅ぎトレ

これからご紹介するのは、おそらく、あなたが今まで一度も習ったことがない、あまり意識したことがない、「においの嗅ぎ方」です。

においの嗅ぎ方には、大きく分けて2つあります。

1つは、鼻から嗅ぐ方法です。鼻からの吸気の通り道を、オルソネーザル経路と言います。ふだん、においを嗅ぐときに使われるのがこの経路です。

もう1つの経路が、口から嗅ぐ方法です。食べ物や飲み物を口に含んでから嗅ぐ方法です。このとき使われる口から鼻への排気の通り道を、レトロネーザル経路といいます。

「口から嗅ぐ」というのは、このレトロネーザル経路を意識して、口の中から空気が鼻に抜けるときに、においを嗅ぐトレーニングです。

食べ物を飲み込んだ後や、コーヒーや紅茶などをゴクリと飲んだ後で、鼻からなんとなく、ゆっくりとフ〜ンと息を吐いてみてください。

このとき感じるにおいが、「口から嗅ぐ」ことによって感じるにおいです。

「鼻フ〜ン嗅ぎトレ」は、一言で言うと、飲食をしている際に、鼻から意識的に「フ〜ン」と息を吐くときに、においを嗅ぐトレーニングです。

これを意識して実践することで、「嗅ぐ力」はさらに高まっていきます。

人によってわからないニオイがある

嗅覚には、まだまだ一般的に知られていないことがたくさんあります。
次に挙げることはすべて本当のことですが、いくつご存じでしょうか?

●うつ病と「嗅ぐ力」には、強い関係性がある。

●精子には、ニオイに反応する遺伝子(嗅覚受容体)がある。

●皮膚・脳・心臓・血液などにも嗅覚受容体がある。

●1ミリ程度の生き物の嗅覚を利用した、がんセンサーが実用間近である。

●年齢や性別にかかわりなく、人によってはわからないニオイがある。


『最新論文等から香りのプロが考案! 嗅ぎトレ 認知症・ガン予防やダイエットにも! “ながら”嗅ぎで、心と体のアンチエイジング』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

特定のニオイがわからない人は、本人に悪気はなくても、気がつかないうちに周囲の人々に対して、スメルハラスメント(スメハラ)をしている可能性もあります。なんとなく「原因はわからないが、人に避けられている気がする」と思っている方はいないでしょうか? もしかしたら、それは自分では「気づけない」ニオイのせいかもしれません。

原因となるニオイがわからないがために、スメハラをしてしまっているとしても、なにしろ本人にはそのニオイがわからないのですから、対処のしようがありません(ニオイについては周囲も、指摘・注意をしにくいものですので)。

今まで気がつかなかった、さまざまな健康上、精神上、生活上の原因が、自分の「嗅ぐ力」に起因していたのでは?と考えてみると、いろいろ腑に落ちることが、意外とあるのではないでしょうか。みなさんもぜひ一度、ふだん気にも留めてこなかった「嗅ぐ力」について、意識を向けてみてください。

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荘司 博行:調香師

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