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2018.11.21

ストレスや疲労も原因に?気をつけたい臭いの習慣【加齢臭を防ぐ#3】

KenCoM公式ライター:黒田創

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加齢臭の原因物質であるノネナールは、脂肪酸の一種であるパルミトオレイン酸と過酸化脂質が結び付いて作られます。その過酸化脂質は活性酸素が体内に活性酸素が大量発生したときに増えることは#1〜#2で述べた通りですが、この活性酸素、実は偏った生活習慣以外にも増えやすい原因があるのです。
今回も五味先生に解説いただきます。

体臭はさまざまな体調変化のバロメーター

ストレスや気にしすぎもニオイのもと

私たちの身体はストレスを感じると活性酸素が発生します。特に30代~50代の男性は仕事や家庭、経済面などストレスにさらされる機会が多く、その分活性酸素が増えやすい状況にある。つまりストレスが加齢臭の強弱に大きく影響している可能性が高いのです。

加齢臭を気にしすぎるのもストレスのもとです。当院にも加齢臭を含め身体のニオイの悩みで来院される中高年男性は多いですが、一度自分のニオイに意識が向いてしまったがためにどんどん敏感になり、次第に内向的になってしまうのが一番怖いんです。そうなると、ちょっとした人間関係のつまずきさえも「自分の体臭が原因なのかも」と思い込んでしまう。これではストレスによる活性酸素は増える一方です。少なくとも生活習慣を見直し、身だしなみに気を付ければ加齢臭は防げるもの。極度に心配する必要はありません。

ミドル脂臭や疲労臭にも注意!

加齢臭が発生しやすいのは主に40代以降ですが、30代でも気を付けたいニオイ、それが「ミドル脂臭」です。この正体はジアセチルという物質で、加齢臭の元となるノネナールよりも強力な、何とも脂臭い香り。特に女性にとって不快なニオイとされています。実はこれもストレスと疲労が原因で、人間の体内で疲労によって作られた乳酸が、汗とともに皮膚内にある細菌によって分解され、ジアセチルが発生するのです。

この乳酸は緊張した場面など、酸素を使わずに体内のエネルギーを消費する時に多くできます。つまり一日中忙しく動き回ったり、残業続きだったり、十分な睡眠や休息が取れないと体内に乳酸がたまってジアセチルの発生を促してしまいます。ここにストレスや緊張による大量の汗、皮脂腺から大量に分泌される皮脂が加わると強烈なミドル脂臭となるのです。まだ若く、働き盛りだからといって無理を重ねがちな30代、特に男性は忙しい中でもリラックスしたりのんびりする機会を確保し、できれば有酸素運動を行って積極的に汗をかきましょう。ジョギングなどでかく汗はベトつきが少なく、含まれる乳酸の成分も少ないためジアセチルがあまり出ないのです。

もうひとつ気を付けたいのが「疲労臭」。疲れがたまっている時や仕事で夜遅くなった日など、ふと自分の体臭がアンモニア臭いと感じた経験はないでしょうか。食事で摂ったタンパク質は腸内でニオイ物質のインドールやアンモニアなどに分解され、便となって外に排出されます。また排泄されない分は肝臓で無臭化されて尿素となるのですが、この回路が正しく働かないと血中のアンモニア濃度が高まり、汗と一緒になって皮膚から外に出る。これが疲労臭の正体です。疲労臭の原因は疲れや肉類の食べ過ぎ、肝機能の低下などが代表的。ミドル脂臭対策と同様、毎日しっかり疲れをとってジョギングなどで汗をかき、さらには動物性脂肪の摂取を控え、クエン酸やオルニチンを積極的に摂ることで防ぐことができます。

さらに今年10月初めには資生堂が「ストレス臭」の存在を発表しています。これは人間が緊張やストレスを感じる状況では、ラーメンにトッピングされたネギのようなニオイを発していることを実験で証明したもので、今後メカニズムの解明が期待されています。このように、ストレスや過緊張、疲れはさまざまな嫌なニオイの原因となってしまうのです。

流行の糖質制限が嫌なニオイの原因に!?

最後に、糖質制限ダイエットが嫌なニオイにつながる可能性があることを知っておきましょう。糖質制限で体内のエネルギー源となる炭水化物が不足すると、貯蔵している中性脂肪を脂肪酸に分解して燃焼し、脂肪を減らします。ですが、燃焼するために必要な糖質が不足していると分解された脂肪酸が燃やしきれず、血中に残ってしまいます。それが汗とともに身体の外に排出されると脂っぽい不快なニオイとなるのです。これはダイエット臭と呼ばれています。

また糖質制限ダイエットにより本来の脳のエネルギー源である糖質が不足すると、体内の脂肪酸がケトン体という物質に変わり、脳のエネルギー源として使われます。しかしこのケトン体は血中に蓄積しやすく、汗や口臭となって出てくる性質を持っています。このケトン臭は飢餓臭と呼ばれ、腐ったバナナのような酸っぱいニオイ。健康のために良かれと思ってやっても、周りを不快にさせては台無しですね。ダイエットするにせよ、あまり極端な食事制限は避けましょう。

極端なことをしないでコンディション管理をするのがニオイ対策に

ストレスや疲労に加え、糖質制限など極端なことを行うことで体臭に変化が出るようです。
まずは自身のコンディションを整えることが大切ですね。

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五味常明(ごみ・つねあき)先生

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1949年生まれ。昭和大学病院形成外科で形成外科学、多摩病院精神科で精神医学を専攻。外科での経験と、精神科で「自己臭妄想」の患者に接したことをきっかけに、患者の心のケアを基本に外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱し、体臭、わきが、多汗治療の現場で実践。体臭研究の第一人者として治療と研究を行い、消臭関連商品の開発に携わるなど、幅広い分野で活躍する。『なぜ一流の男は匂いまでマネジメントするのか?』(かんき出版)ほか著書多数。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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