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2018.11.09

数分で病気がわかる!? 医師に聞く血液検査のギモン

KenCoM編集部

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今年の健康診断は受けましたか?
身体計測、レントゲン、心電図など、様々な検査がありますが、今回は血液検査についてのお話です。

注射が苦手な人は「受けたくない……」と思う検査かもしれません。しかし、数分足らずの採血で、身体の不調が分かるって不思議じゃありませんか?

そこで、KenCoM監修医の石原先生に「健康診断の血液検査ってなんだ?」をテーマに疑問を投げかけると、あの少しの血液に、驚くほど多くの情報が詰まっていることがわかりました。一読してみると血液検査の理解が深まって、検査の見方が変わるかも?

「血液検査、苦手です」という方に

―健康診断の定番・血液検査ですが、注射が痛くて苦手です。一度の検査でどれぐらい血液を抜いているんですか?

石原先生:「痛いですか(笑)お子さん用に局所麻酔のシールがありますが、痛みも重要だったりします。痛みは人の防衛反応なので、万が一担当する医師や看護師が失敗していたら、痛みを訴えることで身の危険を知らせることができるからです。さらに、痛みの感じ方によっては、意外な不調が隠れていることも稀にあるのです。軽い痛みは仕方がないのですが、痛みに敏感な方や採血の時に具合の悪くなったことのある方は、事前に申し出て頂ければ、寝た姿勢で採血したり痛みの少ない針を用いるなど、ある程度の対応は可能です。

量については、通常の健康診断であれば10cc~20ccぐらいの血液を採取します。検査項目によって異なりますが、1本2cc~6ccぐらいの採血管(血液を入れる容器)を3本程度です」

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―採血管はどのような役割があるのでしょう?1種類しかないのですか?

石原先生:「血液は外で放置してしまうと凝固作用が働いたり、ブドウ糖が解糖されたりして成分が変わってしまいます。そのため、採血管は検査に最適な状態を保つためにブドウ糖の濃度を保つ解糖阻止剤や、血の成分が固まらないようにする、抗凝固剤などが入っていて、検査項目によって採血菅を変えています」

―なるほど。一般的な健康診断ではどのようなことを見ているのですか?あのタイミングでいろんな疾患や遺伝子検査もできたらいいのにと思います。

石原先生:「職域における健診項目はだいたい決まっていて、血算(白血球や赤血球)、肝機能、腎機能、コレステロール、血糖やHbA1cなどを調べています。健康診断での血液検査は、病気の自覚のない人の健康状態を調べるためのものなので、たくさんの検査項目をすべての受診者に実施するのは非効率です。

基本的には健康な人の方が多いので、簡単な検査でふるいにかけ、病気と疑われる人に対して、より精密な検査を提案する方が現実的なのです」

―血液の成分を調べるだけで、病気が疑えるのは何故でしょう?

石原先生:「血液の数値には全て正常の範囲があって、その範囲を超えると、病気の可能性が高いということが分かっているからです。例えば特定の臓器で細胞が壊れれば、血液の中に流れて通常よりも量が多くなり病気が疑われます。しかし、数値を見るだけでは、異常の出る原因まではわかりません。だから健康診断では”病気である”という診断をせず、”病気の疑いあり”として医療機関の受診を勧めます」

検査までの生活次第では、思わぬ異常値が出ることも

―なぜ病気だから治療した方がよい、とはならないのですか?

石原先生:「例えば運動や食事は血糖値と中性脂肪に影響を与えます。また、激しい運動をすると筋肉が壊れて肝機能の数値が一時的に高まったりします。ストレスでホルモンバランスが崩れていることだってあるでしょう。これは、検査時点でたまたま値が高くなっているだけなので病気ではありません。

自覚はありませんが、時間とともに自然と適正な状態に戻っているんです。ちゃんとした検査をするためには、健康診断が近くなったら無茶をせず、普段どおりの生活を心がけてください。

検査結果を良くしようと急にダイエットをする人がいたりしますが、検査が終わってからまた元の生活に戻るようであれば一時的な結果に終わってしまいます」

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―飲み会続きともなれば身体にも影響がありそうです。仮に適切な状態で健康診断を受けたとしても病気の判断は難しいのですか?

石原先生:「健康診断は健康か否かを調べることを主目的としています。だからこそ、できることは健診結果から要精密検査と『病気の疑いが有る』とアラートを出すことしかできないのです。そのため、病気が疑われる場合は、医療機関にいって病気ごとに精密検査をするしか断定できる手段がありません。それでも多くの人が、再検査・精密検査といった結果を放置しがちです」

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―今元気だと、つい後回しにしてしまいますね。

石原先生:「人の体は意外と丈夫なので、自覚症状が出にくいのです。健康診断を受けて、仮に精密検査という結果が出たのに”まあ大丈夫だろう”と放置してしまっては意味がありません。昨年の結果と比較をしたり、直近の生活習慣を振り返ってみて、自分の状態をしっかりと俯瞰してみてください。

医療制度上、病気の治療は患者さんの自己判断に委ねられています。風邪で病院に行く人がいれば、市販薬で治す人もいますよね?医師が治療をできるのは、特殊な場合をのぞいて病院にきてくれる人だけなのです。

生活習慣病はその名の通り日々の生活改善で良くなることが多いので、何か不安があれば医師や保健師に相談してみてください」

意外とすごい血液検査。今年の結果を役立てて!

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いかがでしたか?

結果が帰ってきて「要検査だけど、まあ元気だからいいか」とする前に、まずは真摯に受け止めましょう。

暴飲暴食や運動不足、過労が続いていたら、身体のどこかで不具合が出ているかもしれません。
血液検査の項目であるHbA1cからは糖尿病、γGTPからは肝臓障害などの病気が診断されることもあります。

年に一度、自分の体と向き合うチャンスを大切に、健康に向けて次の行動をしっかりと考えてみてくださいね。

(文・KenCoM編集部)

監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

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