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2018.10.09

【医師監修】妊婦さんは注意! 妊娠中にかかるとキケンな感染症 【ママ女医HALの子育て日和 第3話】

ウーマンエキサイト

妊娠中は、当然なんですがお腹の中に赤ちゃんがいます。そのため、妊娠してない普段とは体の状態が違います。普段ならあまり気にしない「ちょっとした病気」が、赤ちゃんに悪い影響を与えてしまうこともあります。
今回は、妊娠中に気をつけたい感染症のあらましと、予防法について簡単にお話ししていきます。

(C)maroke-stock.adobe.com

参照元:https://woman.excite.co.jp/article/child/rid_E1538636671104/

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母親が感染すると赤ちゃんにも感染してしまう病気

感染症の中には、母親が感染すると赤ちゃんにも感染して悪い影響を与えてしまう病気というものがあります。これらをまとめてTORCH症候群(トーチ症候群)と呼びます。

TORCH症候群は、

Toxoplasma gondii(トキソプラズマ)
Others(その他:梅毒、B型肝炎、EBウイルスなど)
Rubella virus(風疹)
Cytomegalovirus(サイトメガロウイルス )
Herpes simplex virus(単純ヘルペスウイルス)

これらの頭文字をつなげたものです。これらの病気は赤ちゃんに感染し、様々な悪い影響を与える可能性があるため、いくつかの感染症については妊娠時に検査されます。妊娠中の方は一度母子手帳をチェックしてみてください。

この中でも特に有名なのは「風疹」ではないでしょうか。2018年10月現在、関東を中心に流行が起きており、非常に危険な状態です。
TORCH症候群(特にトキソプラズマ&サイトメガロウイルス)については、トーチの会がわかりやすいサイトを作って注意喚起をしていますので、ご一読ください。
【トーチの会】先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症 患者会

妊婦さんは免疫が弱っている?

普段、体の外から自分以外の異物が入ってくると、なんとかこれを排除しようとします。これが「免疫」と呼ばれるもので、非常に複雑な経路で様々な感染症を防いでいます。

しかし、妊娠中はお腹の中に赤ちゃんがいます。語弊があるかもしれませんが、母体にとって赤ちゃんは「異物」です。しかし、赤ちゃんを「異物」として排除しないように、妊婦さんは少し免疫の力を調節して、妊娠を維持しています。これを「免疫寛容」と言います。非常によくできたシステムですね!

しかしその結果、妊婦さんは全体的に感染症に弱くなっています。
例えば、そろそろインフルエンザがはやり始めましたが、インフルエンザは妊婦さんに感染すると重症化しやすかったり、流早産のリスクが上がる事が知られています。
私のブログ内でも「妊娠とインフルエンザ」についてはいくつか書いていますので、興味のある方は参考にどうぞ。

赤ちゃんとお母さんの感染予防対策5ヶ条

それでは、これらの感染症から身を守るためにはどうしたらいいでしょうか。2013年に日本周産期・新生児医学会、日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会の出した「赤ちゃんとお母さんの感染予防対策5ヶ条」をご紹介します。

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参照元:https://woman.excite.co.jp/article/child/rid_E1538636671104/

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1 妊娠中は家族、産後は自分にワクチンで予防しましょう!

妊娠中、妊婦さん自身は生ワクチンを接種する事ができません。必要に応じて、ご家族がワクチンをうちましょう。妊婦さんの周囲の人がワクチンを接種することで、間接的に妊婦さんを守る事ができます。抗体のない人は、産後ワクチンを接種する事も忘れずに!
インフルエンザワクチンは妊娠中でも接種可能です。ご自身と赤ちゃんを守るため、接種をおすすめします。

2 手をよく洗いましょう!

特に食品を扱った前後にはよく手を洗いましょう。猫の糞や土いじりをする場合には使い捨て手袋の着用も有用です。

3 体液に注意!

尿、唾液、体液にはいろいろな病原体が含まれます。特に小さいお子さんのオムツ替えの後には手洗いをしっかりしましょう。食べ残しを食べる事もやめましょう。性交渉の際にはコンドームの着用も忘れずに。

4 しっかり加熱したものを食べましょう!

生肉、生ハム、サラミ、加熱していないナチュラルチーズには病原体が含まれる事がありますので妊娠中は避け、加熱したものを食べましょう。生野菜はしっかり洗って!

5 人ごみは避けましょう!

人ごみでは思わぬ病気をもらいますので、できるだけ避けましょう。マスク着用も有用です。子どもはいろいろと病気をもらってくる事がありますので、熱や発疹(ブツブツ)のあるお子さんと接する際には注意が必要です。

えっ、サイトメガロの抗体が、ない?

以上、駆け足で妊娠と感染症についてのあらましについて説明させてもらいました。

私には4歳の娘がいます。小さい子と接する機会も多いので、念のためと思ってサイトメガロウイルスの抗体検査をしました。私の年代では大体7割の人が抗体をもっているから多分大丈夫……と思っていたのですが、結果は「陰性」でした。いやあ、調べてみるもんですね。
小さい子はサイトメガロウイルスに感染すると、その後数年に渡り、唾液や尿にウイルスを排出している事があります。ですので、トイレのお世話の後の手洗いを念入りにしたり、食べ残しに手をつけない、といった注意が必要になります。調べてよかった。
トキソプラズマやサイトメガロウイルスの検査は自費になります。けれど、リスクの高い人は調べる価値があります。

ご自身がなんの感染症の危険が高いのか、どうやって予防したらいいのか、少しでも興味をもって気をつけていただけたら嬉しく思います。

この記事の著者 相川晴(HAL)

内科医。研修中にうつ病を発症し、数年間の療養生活を経て復帰。病気の間支えてくれた医師の男性と結婚。某地方都市で夫、4歳の娘と暮らす。自身の出産・育児の日々をもとに、医学的なエビデンスを交えて女性の健康・育児情報などをブログやTwitter、連載コラムで発信中

◆参考サイトなど
・日本産婦人科学会・日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドライン-産科編2017
赤ちゃんとお母さんの感染予防対策5ヶ条について(日本周産期・新生児医学会)|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY
(相川晴(HAL))

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