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2018.11.30

名医が教える!食後高血糖予防で気をつけたい2つのポイント【セミナーリポート】

KenCoM編集部

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ランチを食べたあと、急激に眠気が襲ってきてデスクであくびを噛み殺したり、ついちょっとウトウトしてしまった経験ありませんか?
実はこれ、食後に血糖値が急上昇する“食後高血糖”が原因となっている可能性があるそうです。
食後高血糖は、糖尿病の予備軍ということだけではなく、そのものが動脈硬化を進行させて脳卒中や心筋梗塞の原因となったり、ガンや認知症の発症リスクを高めたりする危険性を有する深刻な状態ということがわかり、注目されています。
どうしたら予防できるのでしょうか?
マルヤナギ小倉屋主催の講演において、「隠れ高血糖が体を壊す」や「老けない血管になる腸内フローラの育て方」(共に青春出版社)などの著者、血管のスペシャリストである池谷敏郎先生に伺いました。

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池谷敏郎(いけたに・としろう)先生

池谷医院院長、医学博士。
東京医科大学客員講師、総合内科専門医、循環器専門医。
1988年、東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年、池谷医院理事長兼院長に就任。
テレビ出演:『世界一受けたい授業』(日本テレビ)、『モーニングショー』(テレビ朝日)他多数
著者:「血管を鍛えると超健康になる!」(三笠書房)、「人は血管から老化する」(青春出版社)など多数

深刻な病気へとつながる食後高血糖とは?

「血糖値は食後に次第に上昇し、1〜2時間後にピークとなります。
健常者の場合、インスリンが分泌されて正常に作用するので、その最大値が140㎎/dlを超えることはありません。ところが、体質や生活習慣によって食後の血糖値が140㎎/dl を超えて急上昇してしまう“隠れ高血糖”の人が増えています!
隠れ高血糖は、糖尿病の予備軍と考えられてきましたが、近年になって脳心血管系疾患や、ガン、認知症のリスクを高めることで注目され始めた危険な状態なのです。

そのリスクを測定するために、私は、すぐに血糖値を測れるよう普段から血糖値測定器を持ち歩いています。それは、食後に上昇する血糖値を逐一チェックするためなんです」

日本人の2人に1人は食後高血糖!?

「炭水化物・糖質を食べると、食後30分〜1時間くらいで血糖値がポンッと上がってきて、基準である140㎎/dLという値を超えてしまうというケースが多いんです。
現在、日本人の2人に1人は隠れ高血糖であるといわれていますが、事実、私もおかきなどを食べ過ぎると160㎎/dLくらいまで血糖値が上がってしまうことがあります。

糖尿病というのはずっと血糖値が高い状態になるが、食後高血糖というのは食後だけ血糖値が異常に高くなり、炭水化物や糖質を多く食べるほどそのようなリスクが高まるといいます。もともと、糖に対して何らかの異常をきたしやすい体質を持った人では、隠れ高血糖が起きやすいといわれていました。
しかし、そういう素因がない人でも暴飲暴食を繰り返し、運動不足な生活を送っていると、やがてインスリンがきかなくなる身体、つまり糖の代謝に対して非常に弱い身体になってしまうというのです。
特にメタボの人では、このような可能性が高まるそうなので、注意が必要です」

検診では見逃されてしまう、かくれ高血糖

「健康診断で採血する場合、空腹時の血糖値を見ています。110㎎/dLを正常とし、126㎎/dLを超えたら糖尿病型と診断しているわけです。隠れ高血糖では、食後に血糖値が異常に上昇しますが、時間の経過とともに下降して正常値まで回復します。
つまり、空腹で受ける検診時には、血糖値が正常値となっており、食後に異常に上昇していた血糖値を発見しづらいのです」

糖代謝異常の頻度の時代変化(40〜79歳)

Mukai N, et al: J Diabetes Invest 5: 162–169, 2014

Mukai N, et al: J Diabetes Invest 5: 162–169, 2014

「今、九州にある久山町という場所で色々な研究データがとられています。
九州大学が中心になって研究をしているのですが、日本の老若男女の人口分布とこの久山町の分布が非常に似ているんだそうです。つまり、ここで見られた傾向は日本の平均的なデータとして捉えられるということで、今注目されています。

この研究では、住民の皆さんに糖負荷試験を実施しています。糖負荷試験では、対象者にブドウ糖を75g飲んでいただき、その後の血糖値を測定します。
その結果、糖を摂取して2時間後の血糖値が200㎎/dLを超えたら糖尿病と診断します。
健常者では、負荷後の血糖値が140㎎/dl以上になることはないので、血糖値が140㎎/dl以上〜200未満の人は、糖尿病ではないものの糖の代謝異常を有すると判断されます。隠れ高血糖の人は、このように糖尿病ではないけれども、糖の代謝異常を有する人なのです。

1988年と2002年で比較したところ、糖に異常をきたす人が明らかに増えて、男女共に正常者が減っています。男性はおおよそ6割、女性は4割と、成人の約半数が何らかの糖の代謝異常を持っているという驚くべき結果が報告されているのです。

この問題が起こった原因の1つとしては、食の欧米化が背景としてあると思います。あとは、昔ほど歩かなくなったり、手軽にスナック類などが手に入るようになったので、若いうちから暴飲暴食がしやすくなってしまったりということもあるかもしれません」

健康のために気にかけたい2つのポイント

POINT① メタボリックシンドロームは黄色信号!

「正常者だと食事後、血糖値が正常に制御されています。インスリンの分泌量やその働きが正常なので、血糖値を抑えてくれるのです。
ところが、メタボリックシンドロームの状態では内臓脂肪の蓄積によって、インスリンの働きが悪くなります。そこで、食後に大量のインスリンが分泌され、何とか血糖値を下げようと頑張ります。
食後の血糖値は抑えきれずに急上昇しますが、時間の経過とともに正常値まで下降するのはこのためです。

ちなみに、大量に分泌されたインスリンは、内臓脂肪を蓄積する困った作用を有するので、一連の流れが、さらにメタボの状態を悪化させていくという悪循環に陥ってしまうのです。
メタボは、糖の代謝異常のみならず、血圧や脂質のデータにも悪影響を及ぼすことで、動脈硬化を悪化させます。
その結果、脳卒中や心筋梗塞といった突然死や寝たきりのリスクを高めてしまうのです」

POINT② 食後の血糖値上昇を抑えてメタボを防ぐ「食物繊維」のチカラ

「食物繊維は、便秘の解消や腸の善玉菌のエサとなって、腸内環境を改善することは広く知られています。
ところが、食物繊維、とりわけ水溶性食物繊維には、食後の血糖値の急上昇を抑えて、メタボを防ぐ働きがあるのです。

食物繊維の摂取は、その後の糖の過剰な吸収を抑えて、食後の急激な血糖値の上昇を防ぐ働きがあります。食後の血糖値が急上昇しなければ、内臓脂肪蓄積の一因となる過剰なインスリン分泌も抑えられます。さらに、食物繊維が腸内で発酵し、腸内細菌のエサとなる短鎖脂肪酸をつくることによって、大腸の細胞のエネルギー源になって腸が元気になります。
そして、短鎖脂肪酸には脂肪の取り込みをおさえる働きがあって、脂肪の燃焼を高める働きがあるのです。

いいことは、まだまだあります。
腸内環境が改善して便通がよくなると、便と一緒に古くなった胆汁酸が排泄されます。胆汁酸は新しく肝臓で作られますが、胆汁酸には脂肪を燃やす司令塔のような役割があるため、新しく入れ替わることでその働きが最大限に発揮されるようになるのです。

このように、食物繊維、特に水溶性食物繊維には、腸内環境の改善とともに内臓脂肪の蓄積を防いでメタボを予防する効果が期待できるのです」

健康を守るための食生活をはじめよう!

生活習慣病の予防には、食後の血糖値の急上昇を防ぐとともに、腸内環境を整える食生活を心がけることがとても大切です。
マルヤナギの「もち麦生活」などを取り入れると、手軽に不足しやすい食物繊維を摂取できます。
上手に取り入れて、健康寿命を延ばすような食生活を心がけてみましょう。

参考文献:Mukai N, et al: J Diabetes Invest 5: 162–169, 2014

(取材協力/マルヤナギ小倉屋、取材・文/KenCoM編集部)

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