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2018.10.01

女性の胸を守り続ける!健康経営企業が贈るピンクリボン活動

KenCoM編集部

いよいよ10月になり、秋も本番を迎えるころですね。この時期は、乳がんの啓発に向けたピンクリボン活動のシーズンでもあります。
各地のピンクリボン関連団体が主導となって推進される取り組みが多い中、企業単位でひときわ力を入れているのが「女性の美」を応援するワコールです。

女性下着を手がける会社として、また、社内活性を目的に社員の健康管理を推進する健康経営企業としての「ピンクリボン活動への思い」をワコールで働く3人の女性たちにお聞きしました!

<お話を伺った方たち>

記事画像

写真左/総合企画室 広報・宣伝部 ブランディングコミュニケーション課 
山本 奈津子(やまもと・なつこ)さん
写真中/ワコール健康保険組合 健康開発チーム
須山 有輝子(すやま・ゆきこ)さん
写真右/IR・広報室 CSR担当
忽滑谷 美香(ぬかりや・みか)さん

男性社員から始まったワコールのピンクリボン活動

IR・広報室 CSR担当 忽滑谷美香さん

IR・広報室 CSR担当 忽滑谷美香さん

―ワコールさんのピンクリボンがスタートした時のことを教えてください。

(忽滑谷さん)「当社でピンクリボン活動が始まったのは16年前に遡ります。当時の宣伝部長(男性)がピンク色に染めた東京タワーを見て、『これこそバストに一番近いワコールがやるべき活動ではないか!』と感じ、まずは社内からということで始まりました。

ワコールグループでは、日本よりもいち早く1999年7月から米国ワコールが最初にピンクリボン活動をスタート。全米各地の百貨店・専門店の店頭でチャリティイベントを行っています。」

―男性の一言から始まったのが意外です。最初はどんな取り組みをされたのでしょう?

(忽滑谷さん)「まずは、自分たちが乳がんのことを知らなければと、社内で乳がんのセミナーを開き理解を深めるところからスタートしました。自社でオリジナルの冊子やDVDを作成し、社員だけでなく家族にも見てもらうように働きかけました。

それから、ワコールオリジナルのピンクリボンバッジを作ったり、乳がんの啓発団体と一緒にイベントを開催したりと、地道に活動を広げていきました。今では社員にとって、ピンクリボン活動は当たり前のものになっています!」

―『継続は力なり』ですね。16年も活動していけば、社員のみなさんの意識も高いのではないですか?

(山本さん)「とはいえ、ずっと同じことをやっていては、受け取る社員も慣れてきてしまいます。これまで女性向けの啓発活動がメインだったので、今年は男性向けのピンクリボン活動を企画することにしました。

関西地方で知名度の高い、元アナウンサーの清水健さんにご自身の経験から乳がんに対する想いを話していただきました。奥様を乳がんで亡くしながらも力強く話す清水さんの言葉に、多くの男性社員が涙を流していて。あの場にいた人たちは、みなご自身の家族にも思いを馳せ、共感してくれたのではないかと思います(注1)」

登壇した清水健さん

参照元:https://www.wacoal.jp/pink_ribbon/article/report/04.html

登壇した清水健さん

―男性も理解を深めることで、万が一の際に家族をサポートができそうです。

(山本さん)「万が一家族に乳がんが疑われたら『婦人科じゃなくて乳腺外科を受診しに行こう』という風に、いざという時に頼れる男性になってほしいですね」

試着で募金?一般の方も気軽に参加できるキャンペーンを展開

総合企画室 広報・宣伝部 山本奈津子さん

総合企画室 広報・宣伝部 山本奈津子さん

―次に一般ユーザーに向けて、力を入れている取り組みを教えてください。

(山本さん)「お客様に向けて全国の店舗で『チャリティフィッティング』を実施します。10/1〜10/31の期間中に、店舗でブラジャーを1点ご試着いただくごとに、当社がお客様に代わり10円の募金をさせていただきます。昨年は約500万円が集まり、ピンクリボン活動団体に寄付しました。(注2)

あとは、Web上で実施しているピンクリボン検定を受けていただき、正解に関わらず1回の受験につき3円を募金できるキャンペーンも実施します。(注3)

こちらは試着と違ってどなたでも受けられるので、気軽に参加いただき、乳がんへの知識を深めてもらえたら嬉しいですね」

―店舗やWEBで気軽に参加できるのがいいですね!また京都ならではのイベントも準備されていると聞きました。

「ピンクリボン京都スタンプラリー&ウォーク」昨年の様子

「ピンクリボン京都スタンプラリー&ウォーク」昨年の様子

(忽滑谷さん)「10/7にピンクリボン京都スタンプラリー&ウォークを開催します。名所の多い京都の地域性を生かし、東山・岡崎の社寺を巡りながら、乳がんについて身近に感じてもらうことを目的としたイベントです。

参加費は2000円(当日は2500円)なのですが、12kmのウォーキングコースを設定していて、15の対象の社寺は全て無料で拝観できます。参加された方には、京都の街を楽しみながら乳がんについての知識を深めていただけたらいいですね。企業ブースではピンクリボンオリジナルグッズを配布するんですよ」

―例えばこちらのハート型マグネットですか?

自社で様々なピンクリボン関連アイテムを制作

自社で様々なピンクリボン関連アイテムを制作

(山本さん)「そうです。これは当社が実施している『ブラ・リサイクルキャンペーン』で回収したブラジャーをリサイクルして作ったマグネットなんです。ブラジャーがその役目を終えてもお客様のバストをお守りしたい、というワコールの思いから生まれたものなんですよ」

ー素敵なコンセプトですね!海外の事業部とはどんな連携をしているのですか?

https://www.wacoal.jp/pink_ribbon/global/より

https://www.wacoal.jp/pink_ribbon/global/より

ワコールグループでは世界14か国でピンクリボン活動を展開しているのですが、昨年は各国のスタッフが出演する動画を作成し、グローバルピンクリボン活動として特設サイトで公開しました。お国柄が出ている趣向を凝らした活動をしているので、ぜひチェックしてみてくだい!(注4)」

乳がん検診の受診率8割以上!健康経営企業の考える「啓発」と「環境」とは?

ワコール健康保険組合 健康開発チーム 須山有輝子さん

ワコール健康保険組合 健康開発チーム 須山有輝子さん

―次は社内に向けたお話を。現在の乳がん検診受診率はどれぐらいでしょうか?

(須山さん)「現在の受診率は80%以上ですね。早くからピンクリボン活動を続けているとあって、乳がん検診に対する意識は高いと思います」

―全国平均と比べて非常に高い数字ですね!具体的にはどんなことをされたのでしょうか?

(須山さん)「私たちは『啓発』と『環境』が重要だと考えて施策を考えています。『啓発』は社内イントラやパンフレット配布、定期健診会場での啓発や社内セミナーなど、あらゆる機会を活用してヘルスリテラシーの向上を目指しています。

『環境』はいかに受診しやすい状況をつくるかということです。過去の乳がん検診は、受診するために病院の予約をして有休を取得し、費用を立替払いして受診するという流れでした。これでは負担が大きい上に、『検診だから休みます』とはなかなか言いづらい。

そこで、社内のピンクリボンプロジェクトとして実現したのが自社の検診バスAIO(アイオ)です。会社の理解と協力もあり、AIOを会社に横付けし、就業中に受診することができるようになりました。女性スタッフの対応や室内をアロマの香りにするなど、リラックスして受診できる環境にしています(注5)」

―自社で検診バスを所有するなんてすごいですね。1台ですべての社員の方が受診できるのですか?

2009年に導入されたAIO。ワコール社だけでなく、多くの企業検診で活用されている

2009年に導入されたAIO。ワコール社だけでなく、多くの企業検診で活用されている

(須山さん)「現在は内勤女性の乳がん検診受診者のほとんどがAIOによる受診です。全国1600店舗にいる販売職のスタッフは、極力負担にならないようにネットワーク検診として実施する定期検診とのセット受診ができる環境となっています。さらに、受診に前向きになれるよう『健康マイレージ』を設け、健康診断やがん検診を受けたらKenCoMでポイントがもらえるという動機付けのサポートもしています」

ー課題に対する解決策が的確です。他にも特筆すべき点はありますか?

(須山さん)「健康経営委員会を組織して、事業所ごとに受診率を算出し提示するようにしています。事業所間の競争意識のようなものが働き、会社側からも事業所のスタッフに対する受診勧奨がされるようになり、こちらも有効な取り組みのひとつでした。

他にもワコールでは40代以上はマンモグラフィーとエコー検査を標準にしていますが、20代・30代は痛みが強く出る人がいるので、エコー検査のみを推奨しています」

2020年の目標に向けて、健康経営推進にはまだまだ課題も

―様々な視点からアプローチされていますね。健康経営の推進も順調なのではないでしょうか?

ワコールホールディングスHPより抜粋

ワコールホールディングスHPより抜粋

(須山さん)「まだまだ課題はあります。健康経営の推進にあたり『GENKI計画2020』を立てていますが、いまだに社内でもあまり内容を知らないという社員がいて、まだ浸透しきっていないことを実感します。さらに、販売職と内勤職においても意識や環境に差があり、取り組む上でもまだまだ課題があります。

2020年までに乳がん検診を始めとするがん対策や、メンタルヘルスや生活習慣病の項目で目標値を設けているので、どのようにしてヘルスリテラシーを高めて目標達成するかが今後の課題です」

―健康の領域は、結果が出るまでに時間がかかりますね。社員として、健康に対する会社の姿勢はどう感じられますか?

(忽滑谷さん)「私自身、入社するまで乳がんのことを身近な病気だと思いませんでした。ピンクリボン活動をはじめ、社内で様々な取り組みを進めているからこそ、健康に対する意識は高まったなと思います。また、男性社員の理解が得られやすく、女性が働きやすい環境につながっているなと感じますね」

ー確実にヘルスリテラシー向上に影響していますね!

(須山さん)「これからは、個人と組織のヘルスリテラシーを高めることが大切だと考えています。当社の場合、平均勤続年数も延びてきており、定年後の再雇用制度も始まり、徐々に女性の平均年齢も上がってきています。

そうなると社員のライフステージに合わせて、今後は女性ホルモンの変化に伴う症状や疾患、介護などについても啓発が必要となります。今年の健康診断から、更年期症状やPMS(月経前症候群)に関する質問項目をいれ、新たに社員の健康にアプローチしていきたいと考えています。

健康は一朝一夕にしてならずと考えて、継続的に根気よく啓発と環境づくりを進めていきます」

ピンクリボン活動を支える、健康に対する真摯な姿勢

女性とともに歩んで来た下着メーカーとして、「女性の胸を守るのは自分たちの使命」と考えるワコールさんの企業風土を垣間見ることができたのではないでしょうか?
アイデアに溢れるピンクリボンの様々な活動も、健康経営企業ならではの考え方が息づいているようですね。

10月は女性の乳がんに加えて、少しご自身の健康についても改めて見つめ直してみませんか?

(取材・文・撮影 KenCoM編集部)

※乳がん検診の適応については、国立がん研究センターによる公開情報もご確認ください

参考リンク

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