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2018.10.11

乳がん検査と発症リスク【目からウロコ!?乳がんの話#3】

KenCoM公式:ライター・緒方りえ

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乳がんの代表的な検査として、マンモグラフィー検査や超音波エコー検査を受けたことがある人は多いと思います。では、どんな人が乳がんになりやすいのでしょうか。今回は『検査と発症リスク』について紐解いていきます。
私たちの疑問に答えてくださったのは、乳がん治療のスペシャリストである昭和大学病院乳腺外科准教授 明石定子(あかし さだこ)先生です。

乳がん発見には欠かせない2つの検査

超音波エコー検査は、他の病気が疑われた時もお腹、首などの部位でも行えるため、比較的身近な検査になってきました。
そして、痛いと噂のマンモグラフィー検査は、受けたことのない人にとっては特に不安を感じる検査となります。それではこの2つの検査について、乳がん検査の視点からご説明しましょう。

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みなさんがまず気になるのは時間と痛みですね。
乳房を挟んでいる時間は1分程度のことが多いでしょう。検査時間は着替えも含めて10分以内で終わることがほとんどです。

私は医師としてマンモグラフィー検査を患者さんに勧めていますし、もちろん自分自身も何度か検査を受けたことがあります。
乳腺の大きさや乳房の大きさは痛みには関係していませんし、人によって痛みの感じ方は違いますが、私の場合は噂ほどの痛みを感じたことはなくて、これなら人に勧められると思いました。人によっては、月経前で乳房が張っている時は痛みが増すかもしれません。
なぜ乳房をギューギューと押して挟むかというと、挟んで薄くした方が被曝量は減るということと、乳房がしっかり固定されることでキレイな画像が撮れるからです。少ない被曝量でより正確に調べるために必要なのです。

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乳がんの発見率は医師の触診で5割、マンモグラフィー検査でも8割くらいです。
また、マンモグラフィー検査は乳腺組織と脂肪の比によって見えやすさが違います。高濃度乳房という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、脂肪が少ない場合はマンモグラフィーで撮影すると白く写ってしまい、がんが隠れて見えないことがあるのです。

高濃度乳房の場合、乳がんを見逃さないためには、他の検査とうまく併用することが大切です。医師と相談して、超音波エコー検査なども併用しましょう。
2015年に発表されたJ-STARTという7万人の日本人女性を対象として行った大規模な臨床試験では、40歳代の女性はマンモグラフィー検査と超音波エコー検査を併用した方がマンモグラフィー単独よりも乳がんの発見率は高かったというデータがあります。
とはいえ、毎回必ずこの2つの検査をセットで受ける必要はなく、医師と相談して交互に検査をする人も多いです。

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超音波エコー検査は病院での導入率が高く、放射線被曝や痛みがない検査です。しかし、検査技師の技量に頼ってしまうというデメリットもあります。それをカバーするために、最近では自動乳房超音波装置という機械も開発されていて、導入している病院もあります。この機械は自動的に多方向からの画像を収集でき、データを再構成できるので観察の精度が上がります。

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市町村などで行われる検診は40歳以上で2年に1回が推奨されています。
もし家族に乳がん患者が居る場合などは、40歳前でも年に1回くらい検診を受けても良いでしょう。検査料の自己負担額などについては病院で確認をしてください。
しこりなどの症状に気づいた場合は、乳腺クリニックや専門医を受診しましょう。

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乳がんリスクが高いのはどんな人?

乳がんに大きく関係しているのは女性ホルモンの量と考えられています。
そのため、生理の回数が多いほど女性ホルモンが多く分泌されるので乳がんリスクが高まります。
では、乳がんリスクのチェック表をご覧ください。

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要注意なのが閉経後の肥満。実は、女性ホルモンは脂肪の中で作られます。副腎という部位から出たステロイドホルモンが、脂肪の中で女性ホルモンに変わるのです。つまり太っていると脂肪が多くなる分、女性ホルモンの量が多めになります。
また、片方が乳がんになったことがある人は反対側の胸も乳がんになるリスクが高くなるので、毎年検査を受けることが大切です。

検査結果をふまえて医師と相談を

もしも健診で異常が指摘されたとしても、必ずしも乳がんが確定するというわけではないので焦らなくて大丈夫です。その後に精密検査を受けてみて、医師と相談しながら通院計画を立てましょう。まずは自分の身体を詳しく知ることが大切です。
次回は『乳がんの手術』についてご説明します。

■乳がんの記事はこちらから!

明石定子(あかし・さだこ)先生

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1965年生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三外科に入局。1992年より国立がん研究センター中央病院外科勤務。同乳腺外科がん専門修練医、医員を務めたのち、2010年に乳腺科・腫瘍内科外来病棟院長。2011年より昭和大学病院乳腺外科 准教授に就任。日本外科学会指導医・専門医、日本乳癌学会乳腺専門医・指導医・評議員、検診マンモグラフィ読影認定医師。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

(撮影/KenCoM編集部 取材・文/緒方りえ)

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