2018.08.30
片頭痛の引き金となる「食べ合わせのワナ」|原因不明の片頭痛はチーズやワインが一因か
誘因が思い当たらない片頭痛は、食物を疑ってみるのもいいかもしれない(写真:おにちゃん/PIXTA)
多くの人が悩まされているであろう片頭痛。日本人の8.4%(1000万人)がかかっているとされる憂鬱な慢性痛である。
頭の片側のみに発作的に頭痛が発生し、脈打つような痛みや嘔吐などの症状を伴う。感覚過敏(光や音に敏感になる)、吐き気などを伴うことも多い。原因として、身体的・精神的なストレス、生活習慣の乱れ、(女性の場合)月経周期などが関係する。
それ以外にも、思わぬものが片頭痛を起こすことがある。
突然、激しい頭痛に襲われた
30代男性。ストレスが強くて極めて体調の悪いときに年に1~2回、片頭痛を経験することがあった。それ以外は極めて健康であった。
ある週末、パーティに参加して楽しく時間を過ごした後、午前0時頃に就寝した。ところが、午前3時頃に頭痛で目が覚めた。後頭部を中心にガンガンと割れるような痛みがする。思わず頭を両手で抱えてうずくまってしまった。
男性は「くも膜下出血のときは、バットや金づちで殴られたような痛みが起こる」という言葉を思い出し、いろいろと自分で試してみた。が、手足の麻痺、ろれつの乱れ、視力や聴力などの異常はない。
それほどアルコールは飲んではいないはずだ――。そう思いつつ、起き上がって水を飲んだ。手元にあった消炎鎮痛薬を服用して様子を見ていると、徐々に頭痛は治まり、1時間ほどでほとんど痛みはなくなった。
安堵感と疲れが一気にきてそのまま寝てしまい、朝目覚めたときには何事もなかったように痛みはなかった。
ところが、これで終わりではなかった。
猛烈な頭痛に襲われた日から2週間。男性はまたも、週末にパーティへと繰り出した。
その場で出された赤ワインとブルーチーズがとてもおいしく、帰り際にスーパーで同じものを買い、自宅で映画を見ながら飲み食いした。その後ベッドに入ると、再び午前3時頃にガンガンと割れるような頭痛で目が覚めた。
ただ、頭痛以外の症状はなく、消炎鎮痛薬を服用して様子を見ていると1時間ほどで治まった。これは前回とまったく同じ症状だった。
こんなに頻繁に頭痛が起きたことは今までなかった。頭痛の痛みもそれほどひどくはなかった。順序を追って考えていくと、赤ワインとブルーチーズの組み合わせが怪しい。
次の週末、土曜日の昼食時に再び同じ赤ワインとブルーチーズを食べた。すると、案の定夕方5時頃から頭痛が始まり、それまでと同じような激痛が走った。鎮痛薬を服用して頭を抱えながら、「食物で頭痛が起こる、って本当にあるんだ!」と感心しつつ納得した。
片頭痛の発作を起こさなくなった
実は、この30代男性とは筆者自身であり、アメリカ留学中に起こった話である。パーティの1カ月ほど前にちょうど頭痛について勉強していて、食物でも頭痛が起こることがある、ということを知り「そんなこともあるのか」と印象に残っていた。それがなければ、気がつかなかったかもしれない。
頭痛を起こしやすい食物
●チーズ(特に熟成度の高いもの)
●アルコール(特に赤ワイン)
●魚や肉(特に燻製にしたもの)
●ベーコン、ソーセージ、サラミなど(亜硝酸化合物による)
●柑橘類
●チョコレート、ココア(チラミン、ポリフェノール、カフェインなどによる)
●ナッツ類
※チラミンは、発酵過程の副産物としてタンパク質が分解されてできるため、発酵食品や熟成した食品に多く含まれる。また、柑橘類やナッツ類にも含まれている。
その後いろいろと試して、ブルーチーズ以外のチーズでは起こらないこと、蒸留酒では起こらず、醸造酒でも赤ワイン以外のものでは起こらないことを確かめた。以来、赤ワインとブルーチーズとの組み合わせを慎重に避け、片頭痛の発作には見舞われていない。
年に1~2回はあった片頭痛の発作も起こさなくなった。それまでは赤ワインとブルーチーズの組み合わせを食べて、片頭痛を起こしていたのかもしれない。
食物によって起こる頭痛(片頭痛)は、日本人には少ないといわれている。だが、実際にはわからない。
なぜ、摂取する食物によって片頭痛が起こるのか。食物に含まれている化学物質が脳血管に作用するためと考えられているが、詳細なメカニズムは不明である。
食物による頭痛に見られる特徴
●単独の誘発因子(赤ワイン、ブルーチーズなど)だけでは頭痛発作は誘発されず、同時に2つ以上の誘発因子に暴露されると頭痛発作を起こす。
●食物以外の因子が関わること(生理周期と赤ワインなど)もある。
●1つの誘発因子が常に発作を起こすとは限らない(ストレス時に赤ワインを飲んでも常に頭痛が起こるわけではなく、ストレスとチョコレートのこともある)。
その片頭痛、食べ物が原因かも?
欧米でよく知られたものとしては、「ホットドック頭痛」と「中華料理屋症候群」がある。前者は、ホットドックに使われている(安い)ソーセージの添加物として使われている亜硝酸ナトリウムで、後者は中華料理屋で大量に使われることのあるグルタミン酸ナトリウムが原因とされる。
他にもチーズ(特に熟成度の高いもの。ブルーチーズなど、含有されるチラミンによる)、赤ワイン(含有されているチラミン、硫酸塩、ヒスタミンなどによる)、チョコレート(特にカカオの濃いもの)でも起こる。
自身の経験から、頭痛を主訴として受診する患者さんには必ず、「食生活にも気をつけるように」と助言している。帰国後今までに数人の患者さんから「思い当たることがあった」という話を聞いた。
誘因が思い当たらない片頭痛は、一度食物を疑ってみるのもいいかもしれない。
北原 雅樹:ペインクリニック専門医、麻酔科医
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