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2018.08.29

定年後に健康保険料を低く抑える上手な方法|民間の医療保険に入るのは実はムダ?

東洋経済オンライン

定年後、「病気が怖いから」と民間の医療保険に入る前に、健康保険をもっと知っておくと、あまりお金を使わなくても済みそうだ(写真:プラナ/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/234215?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

定年後、「病気が怖いから」と民間の医療保険に入る前に、健康保険をもっと知っておくと、あまりお金を使わなくても済みそうだ(写真:プラナ/PIXTA)

病気やケガの際に頼りになるのが健康保険です。「かかった医療費の3割負担で済む」という以外にも、実はいろいろな給付があることを知っていますか。また、会社を退職して国民健康保険に切り替えると、保険料が大幅にアップすることがありますが、やっぱり民間の医療保険に入っておくべきでしょうか? 今回はいろいろと気になる医療費について、知っておきましょう。

もし医療費に100万円かかったら、自己負担額は?

会社員の人は健康保険、自営業の人は国民健康保険に加入しています。医療費の負担が3割で済むことはご存じのとおりですが、実はほかにも多くの給付があります。

まず挙げられるのは、「高額療養費」。1カ月の医療費が一定の額を超えた場合、超えた分が給付される制度です。自己負担分は収入によって決められており、収入が少ない人ほど、自己負担は少なく済みます。たとえば入院手術などで100万円かかり、医療機関の窓口で支払うのが30万円の場合、年収約370万~770万円の人の自己負担は9万円程度、年収約770万~1160万円の人では17万円程度で、それを超える分は健康保険で給付されます。

また加入している健康保険によっては、前述の高額療養費について「付加給付」があり、自己負担分の上限が2万円程度で済む例も少なくありません。人間ドックの受診補助、保養施設の利用といった制度を設けている例もあります。

さらに会社員には、「傷病手当金」もあります。医師の意見書があり、病気やケガで連続4日以上休業した場合、4日目~最大1年6カ月、「1日あたりの給料の3分の2」が支給されます(会社から傷病手当金より低い額の給料が支払われる場合は、その差額が支給される)。つまり、会社員なら、仕事を休んでも、一定期間、一定の収入は確保されるというわけです。

充実した保障のある健康保険ですが、会社員の場合、保険料は事業主との折半になっており、本人の負担は保険料の半分です。では、定年退職したり、退職して自営業になったりした場合はどうなるでしょうか。

会社員でなくなると、健康保険から、国民健康保険に切り替えることになります。国民健康保険の保険料は前年の所得を基準に計算されるため、退職直後は保険料が高くなるのが普通です。また健康保険には扶養の仕組みがあり、1人分の保険料で扶養する世帯全員が給付を受けられるのに対し、国民健康保険では扶養する家族の分も保険料がかかってきます。このようなことから、特に会社を辞めた直後は保険料の負担が増えてしまいがちですが、1つ、いい方法があります。それは、健康保険の「任意継続」という方法です。

退職に備え、健康保険の「任意継続」を選択する

任意継続とは、退職前の健康保険を退職後も引き継ぐものです。会社員なら保険料は会社との折半なのに対し、任意継続では全額自己負担となり、収入が多いほど保険料は高くなりますが、任意継続保険料は標準報酬月額が28万円までと上限が決まっています。東京都の協会けんぽの場合、40歳未満では月額2万7720円、40歳以上では介護保険料を含め同3万2116円が上限です。

退職前の給料が60万円(標準報酬月額59万円)の人は、保険料は40歳未満では2万9205円、40歳以上では3万3836円ですので、退職後、任意継続して保険料が全額自己負担になっても、支払う額はほとんど変わりません。この保険料で扶養する世帯全員が給付を受けることができます。

任意継続できるのは退職の翌日から2年ですが、国民健康保険の保険料が高くなりがちな退職直後に健康保険を継続できるメリットは大きいといえます。資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に手続きが必要なので、勤務先に確認しておきましょう。

健康保険を任意継続した場合、基本的には会社員のときと同様で、高額療養費の「付加給付」や人間ドックの受診補助といった給付も、継続して受けられます。

ただし、連続して4日以上仕事を休むと4日目から給付金がもらえる傷病手当金については、タイミングによって扱いが異なります。

まず、退職して任意継続になったあとに病気などでパートなどの仕事を休んだ場合はどうなるでしょうか。このケースでは傷病手当金は受けられません。

一方、在職中に病気やケガで休業して傷病手当金を受けはじめてから退職した場合はどうでしょうか。この場合は、退職後も給付されます。

たとえばケガで仕事を休み、傷病手当金の給付がはじまり、そのまま退職すると、在職しているのと同様に、最大1年6カ月、給付が受けられるというわけです(退職後、任意継続せず、国民健康保険に切り替えても給付が続きます)。

もし「体調が優れず仕事を辞めようか悩む」といったケースでは、退職前に検査や診察を受け、傷病手当金の給付がはじまってから退職を考えるのがよさそうです。その前に辞めてしまうと、傷病手当金は受けられませんから要注意です。

もう1つ注意したいのは、連続して休業する、ということです。休業している間に「もう働くのは難しい」と考えて退職を決意し、引き継ぎや残務整理のために数日だけ出勤したりすると、休業期間が途切れ、傷病手当金はストップしてしまいます。くれぐれも注意してください。

70歳からは高額療養費の負担上限額も下がる

もし65歳まで働く場合は、65歳から最長2年、健康保険の任意継続が可能です。その後は国民健康保険になり、70歳からは、国民健康保険に加入のまま「高齢者医療制度」に切り替わり、窓口での負担が変わります。 この場合、高額療養費の自己負担額の上限も下がり、年収約156万~370万円の人では、外来では個人ごと1万8000円(年間の上限14万4000円)、世帯ごとの入院や外来では5万7600円です。


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つまり、高齢になると医療費の自己負担額は下がるということです。加えて、現役では休業などで収入が減るリスクがありますが、リタイア後であれば収入ダウンの心配もありません。

「高齢になるほど病気にかかりやすいから」「年金生活で医療費を出すのは大変そうだから」といった理由で民間の医療保険を続けたり、医療特約の保険期間を延長したりする人は少なくありません。たしかに病気やケガはしやすくなりますが、必ずしも医療費の負担感が増すとは限りません。高齢になってからの医療保険は必要性が低いといえるでしょう。

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井戸 美枝:CFP®、社会保険労務士

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