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2018.09.06

婦人科健診って大事? 受けるべき理由を医師へ直撃リサーチ!

KenCoM編集部

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目に見えにくいからこそ、多くの人が健康についてはないがしろにしがち。自分は健康だと過信している方も少なからずいるのではないでしょうか?
「国民生活基礎調査」によると、日本のがん検診受診率は男性4〜5割程度、女性3〜4割でとくに子宮頸がん、乳がんについては健診受診率が低いことがわかっています(平成28年厚生労働省調べ)。
医療の目的には治療を受けることだけでなく、健康を維持・増進する予防医療も含まれます。
婦人科検診を定期的にうける重要性について、更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする浜松町ハマサイトクリニックの吉形玲美先生にお伺いしました。

深刻になる前に早期発見で早めに病気予防!

吉形先生「閉経前の女性にとっては、子宮や卵巣の疾患が主になります。最近は、女性のライフスタイルの変化により、子宮頸がん、乳がん、良性疾患でも子宮内膜症と子宮筋腫の方が増えています。
婦人科検診には、がんの発見だけでなく、問診や内診を受けることで、それ以外の婦人科トラブルに気づくというメリットもあります。
また、閉経以降になると卵巣がんと子宮体がんの頻度が増えてきます。
国立がん研究センターの情報によると、卵巣がんは50〜60代がピーク、子宮体がんは閉経前後が多いと言われています。

子宮体がんは一般の婦人科検診だと通常含まれません。検診を受けるときに問診がありますよね。その問診で子宮体がんの検診もしたほうが良いとなれば、医師からすすめられる場合もありますし、閉経後に不正出血がある場合は婦人科外来を受診して、子宮体がん検査を受けることを提案します。少なくとも定期的に婦人科検診を受けておくことは、婦人科の受診動機にもつながるので、機会損失をしないという意味でもおすすめです」

健康状態を把握するために大切な検診

受けておくべきは、骨密度の検査

吉形先生「定期健診に加えて、まずチェックしてほしいのが骨密度検診ですね。というのも、骨は常に新陳代謝をしている代謝臓器で、骨には新しい骨をつくる働きを持つ骨芽細胞と、古くなった骨を壊す破骨細胞というのがあります。女性ホルモンは骨芽細胞の形成を促進して、破骨細胞をブロックする働きがあるんですね。
そのため、閉経を迎えて女性ホルモンが減少すると、急に破骨細胞が増えます。そして、骨を壊すほうへバランスが傾くので、骨量がどんどん減ってしまい、骨粗鬆症のリスクが高まります。更年期を迎える前から、女性は特に骨の健康を意識しておきましょう」

経年変化で自分の健康状態を知っておきましょう

吉形先生「例えば骨密度検査であれば、若い人でも20代や30代のときに一度は受けておくと良いと思います。またプレ更年期と言われる40代半ばや、50歳くらいになったら毎年受けるようにするのが良いですね。
定期的に受けておけば経年変化がわかるようになるので、生活習慣病も骨密度検査も、例え正常範囲の数値であっても去年より急に数値が悪くなるということがあったら注意しましょう」

骨や血管は遺伝的要因も強いのが特徴

吉形先生「生理がある間は、女性ホルモンが骨量を維持するように守ってくれます。ただ、閉経すると骨量の下がり方に個人差はあるものの、急に減りやすくなるのは確かです。その減るスピードについては遺伝的要因も関係してきます。
血管も同じように閉経後に固くなるスピードが増します。若くてももともと血管が少し硬めという方もいるので、プレ更年期世代から定期的にbaPWV(血管脈波)や頸動脈エコーなど、動脈硬化の検査でチェックしておくのが良いでしょう」

検査を受けるときの重要な心得とは?

吉形先生「動脈硬化検査は“血管年齢検査”などの項目で検診に入っていることもありますが、一般的には手首に血圧測定器をつけ、血流速度から計算するbaPWV(血管脈波)や、超音波を使って頸動脈の血管の様子を直接調べる検査が頸動脈エコーなどの簡単な検査です。動脈硬化が原因でおこる心筋梗塞や脳梗塞のリスクを事前に知ることができます。

骨密度検査についてはレントゲンによる骨密度測定検査が推奨されています。測る場所は腰や足のつけ根(大腿骨)が一番良いのですが、これら大きい骨の検査を受けられる検診機関が少ないので、腕や手の甲でも大丈夫です。
骨も測定部位によって数位がやや変動するので、できれば同じ部位の数値を経年的に見るようにしましょう」

健やかな毎日を送るために大事なこと

吉形先生「骨粗鬆症による骨折、寝たきり、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞などは、発症してしまうと一生のおつき合いになる病気です。年齢を重ねると共に必ず骨量は下がるし、血管も固くなってくるのを覚えておきましょう。その先に大きな病気があり、最悪の場合は死亡リスクの上昇や死に直結することもあります。
中高年になったら生活習慣病検査、骨密度検査などを定期的に受けることで、生活習慣を改善したり、病気も早期に発見し治療する道筋が立てられるので、元気で長生き、自立して長生きというところにつながってきます」

いかに定期検診が大事なのかがよくわかりましたね。
人生100年と言われる時代において、病気になってからではなく、早期発見していかに早めに治療することが重要です。
つい億劫になってしまうという人も、自分の健康を見直すきっかけに定期検診を受けてみましょう!

監修者プロフィール

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吉形玲美(よしかた・れみ)先生
東京都出身・1997年東京女子医科大学医学部卒業。同大学産婦人科の臨床の現場で婦人科腫瘍手術をはじめ、産婦人科一般診療を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究に携わる。東京女子医科大学准講師を経て2010年より同大学非常勤講師。女性予防医療を広めたいという思いから、同年7月より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。 現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。

(取材・文/KenCoM編集部)

参考文献