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2018.09.05

女性なら絶対知っておきたい!更年期症状の対策とは?

KenCoM編集部

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閉経前後にはじまる可能性がある、ほてり、不安感といった更年期症状。「もしかして、私の不調は更年期のサインかもしれない…」そんなとき、まずはどうしたらいいのでしょうか。一人ひとりの症状によって治療方法は異なるものの、更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする浜松町ハマサイトクリニックの吉形玲美先生にお伺いしました。

基本の治療はホルモン補充療法

吉形先生「更年期症状の対策としては、全てをオールマイティに改善するという意味において基本的にはホルモン補充療法が一番なんですね。薬を使って、急に減少した女性ホルモン=エストロゲンを補い症状を緩和させる方法です。特に発汗やほてりが強い方には、ホルモン補充療法は短期間で効果があらわれやすいのでおすすめしています。身体症状が強く出ている方によく効く治療法ですね。
一方で不定愁訴(ふていしゅうそ)といって、はっきりした理由や原因は不明なのに、体調が悪いという人。また落ちこみや不安など精神症状を強く感じる方には安定剤や抗うつ剤を処方したり、あるいは漢方薬、エクオール(植物性の女性ホルモン)のサプリメントなどのホルモン代替療法を行うケースもあります」

セルフメンテナンスの方法はありますか?

腸内環境改善と楽天的なことがカギ

吉形先生「女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンがあり、特にエストロゲンは、女性の健康と美しさを守る役割をしています。
1つめはエストロゲンに近い働きをするエクオールがつくれる身体になることです。腸内環境を良くしてあげると、エクオールがつくれる可能性がでてきます。免疫機能の7割を腸内環境が占めていると言われているので、腸内環境の改善は更年期障害も含めて身体全般にとって良い影響を与えます。
具体的には食物繊維と発酵食品をあわせて食べて、タンパク質を十分に摂るというのをおすすめしています。
2つめとしては自分が気に病むようなことやイライラすることから目をそらして、ちょっと楽天的になってみることですね」

※エクオール…大豆イソフラボンを摂取した際に、腸内細菌の力でつくられる成分

大事なのはリフレッシュして毎日を楽しむこと!

吉形先生「更年期障害が辛いと外へも出たくなくなる方がいますが、舞台を観に行ったり、音楽を聴きに行ったりして気分転換するのが良いです。非日常的な空間に身をおくだけで、心身がすっきりして元気をもらえることってありますよね。
それでちょっと元気になったら、次は運動。競い合うものより心が豊かになるようなスポーツがいいので、自然をながめながらのウォーキングや、習うのであればダンス系を薦めています。音楽を聴きながら身体を動かせるし、さまざまな種類があるので自分の好きなものを選べます。
あとは旅に出るのもいいです。強制的にストレスのかかる環境から離れてしまう。自律神経のバランスが整って、リフレッシュできます」

バランスが大事。仕事ばかりは生活の見直しを

吉形先生「更年期症状が辛い方は、家事も手につかなかったり、仕事もパフォーマンスが落ちてしまったりします。通院している方に対しては、段階を経て、そろそろこうしてみたら? と提案しています。軽いものを含めれば、何らかの更年期症状は誰にでもおきるもの。適度に汗をかくような運動習慣がある人は軽い傾向がありますし、逆に家事や仕事ばかりしている方は、生活の充実度も下がり、重くなる可能性があります。あまり無理をせず、リフレッシュの時間をもつように心がけてください」

更年期から最も気をつけたいのは“骨粗鬆症”

徐々に減ってくる骨密度と劣化する骨質

吉形先生「男女間で見ても圧倒的に更年期以降の女性に多くあらわれるのが、骨密度が減るという現象です。あまり知られていませんが骨は代謝臓器です。そのため、骨を健康にしておくことは、ロコモなどを防ぎ、運動量を確保できる以外に、糖尿病、腎臓機能、動脈硬化、全てに良い影響をもたらします。閉経すると必ず骨量は低下します。
これは抗えないことなので、骨密度を減らさないための食事や運動が大切になってきます。女性ホルモンが減ると生活習慣病のリスクも高まり、骨質(コツシツ)も劣化するので、ますます骨折しやすくなります。骨の強度を決めるのは、骨密度が7割で、骨質は3割と言われています」

※ロコモ…ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)とは骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態

人生100年時代。ずっと元気でいるために骨を知る

吉形先生「健康のためにあれもこれもは難しいと思うので、対策するのはまず骨と決めて注目するようにしてみてください。骨がしっかりしていると、顔のシワやたるみが少ないといった美容面でのメリットもあります。骨の弱さが顕在化して腰の骨がつぶれたり、寝たきりの原因になる足のつけ根の骨折は70歳をすぎた頃に増えてくるので、更年期世代である50歳ぐらいから気をつけておくと、その後の20年が全然変わってきます。
50代の頃にしゃんとしていたのに、70代になって骨粗鬆症になり、骨折して急に老けこんでしまったりというのはよくあるお話です。そうならないように、骨量が減る前もしくは減りはじめる頃から意識しておくと良いでしょう。またカルシウムだけでなく、骨の健康に役立つビタミンD、Kなども摂るとさらにベターです。特にビタミンDありきのカルシウムと覚えておいてほしいですね」

定期的な健康診断受診が大切

吉形先生「一般的な健康診断に加え、骨密度検査を定期的に受けましょう。また両親に骨粗鬆症、骨折者がいないか、家族歴はリスク因子となります。アルコールとカフェインも摂りすぎは良くありません。あとタバコは女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を妨げ、骨量の減少を招きますので、絶対にやめましょう。特に、女性は高血圧、脂質異常症、糖尿病に加えて、骨粗鬆症の4つを生活習慣病として気をつけたほうが良いでしょう。
また、検診の他に気をつけたいこととして、更年期症状のうち精神症状が強い人は、更年期うつから本当のうつ病になってしまう方もいます。治療が遅れたり、適切な治療をしていないと10年かかっても治らず、ずっと通院している方もいるので、気をつけてください」

身体の不調を感じたら早めに相談を!

吉形先生「更年期障害かな?と感じたときは、婦人科や更年期外来の受診をすすめますが、近所にない場合は家庭医(ホームドクター)やよく診てもらう内科の先生に聞いて、良い先生を紹介してもらうのも手だと思います」

最近では病院でも治療医療から予防医療にシフトしているそう。
更年期症状について悩んで訪れる患者さんのニーズが多いからこそ、内科医の中でもホルモン補充療法や更年期について、勉強されている先生が増えているというのを吉形先生から教えてもらいました。

一人で悶々と悩まず、少しでもいつもと違う不調を感じたら、病院へ行きましょう!

次回は定期的な検診を受けないリスクについて、引き続き吉形先生にお伺いします。

監修者プロフィール

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吉形玲美(よしかた・れみ)先生
東京都出身・1997年東京女子医科大学医学部卒業。同大学産婦人科の臨床の現場で婦人科腫瘍手術をはじめ、産婦人科一般診療を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究に携わる。東京女子医科大学准講師を経て2010年より同大学非常勤講師。女性予防医療を広めたいという思いから、同年7月より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。 現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。

(取材・文/KenCoM編集部)