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2018.09.07

今すぐ実践したくなる!医学的に見た歩くメリット

KenCoM編集部

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誰もが漠然と思っている「歩くと健康に良い」という話ですが、実際にどんな効果があるのかをご存知の方は少ないのでは?
実は、我々が想像する以上に「歩くこと」は健康に直結しているのです。しかも、パフォーマンスアップなどビジネスに役立つ効果も盛り沢山!
そんな歩く健康効果について、東京大学医学部附属病院の稲島司先生にわかりやすく解説いただきました。

稲島司(いなじま・つかさ)先生

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東京大学医学部附属病院 地域医療連携部助教 医学博士

【プロフィール】
2003年東京医科大学医学部を卒業。2008年東京大学大学院医学系研究科を修了。循環器内科の専門診療のほか、外来診療を中心に生活習慣病の予防・改善に携わる。東京大学医学部附属病院では地域医療連携部の専任医師として地域医療機関や介護・福祉施設との連携を推進。論文を中心とした医学エビデンスを紹介しながらの説得力のある講演や著作は人気を博している。内科認定医。循環器専門医。認定産業医、認定健康スポーツ医。
著作に『世界の研究者が警鐘を鳴らす 「健康に良い」はウソだらけ 科学的根拠(エビデンス)が解き明かす真実』(新星出版社刊)、『血管を強くする歩き方: パワーハウス筋が健康を決める』(木津 直昭との共著・東洋経済新報社刊)などがある。

現代人のリスクを抑える「歩き」の効果

これだけ科学技術が進んだ現代において、人間の死亡リスクで最も大きいのが「がん」と「動脈硬化」です。さらに、生きていく中で問題となりやすいのがロコモやフレイルといった「身体の虚弱化」と、頭がうまく働きにくくなる「認知機能の低下」になります。
人間は老いるごとにこの4つのリスクに向き合って生きていくことになるのですが、このリスクを全て下げ、予防できるのが歩くことなのです。

健康で長生きするするために運動が大切なことは皆さん認識していると思いますが、ただ歩くだけでこれだけの効果があるとご存知の方はなかなかいらっしゃいません。
それぞれ解説していきましょう。

がん予防

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歩くことががん予防になると聞いても俄かには信じられないかもしれませんが、医学論文でも発表されている事実です。
2016年にJournal of American Medical Associationというアメリカの医学雑誌に発表された論文(※1)には、歩くことで、13種類にのぼるがんのリスクを低下させることがわかっています。

この研究は、米国立がん研究所、米国立衛生研究所、米国がん学会などが共同で行なった研究で、延べ144万人を対象に、11年間にわたり生活習慣とがんの発症について調査したもの。
論文によると、ウォーキングなどの軽い運動を週5日以上行っている人は、ほとんどしない人に比べてがんの発症リスクが20%も低下することが明らかになりました。
具体的にリスクが低下したがんの種類は次の通りです。

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さらにこの研究では、運動している人としていない人を比較すると、運動しない人の死亡率は運動する人の3.4倍にものぼるという結果も出ているのです。
また、国内でも、国立がん研究センターの多目的コホート研究(※2)では歩きを含む運動することによってがん全体のリスクを低下させることができると発表しています。

血管年齢の維持

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日本人の死亡率のトップはがんですが、第2位は心疾患で第4位は脳血管疾患です。これらは2つに分類されていますが実は2つとも血管の病気が原因になることが多いのです。どちらも血管が詰まったり、切れたりすることで起きる疾患で主に血管の老化が原因です。
この血管の老化予防にオススメなのが歩くことを含む運動療法になります。これは、データでも証明されています。

国内の循環器系医療雑誌『サーキュレーション』に1998年に掲載されたデータが特にわかりやすいでしょう。
これによると、平均年齢48歳の日本人男性3331人を対象に、血圧、血糖値、コレステロール値、中性脂肪などの心臓や血管の疾患リスクを調べた結果、週3回以上の運動習慣がある人たちと比べて、運動習慣がない人たちはリスクが約1.4倍にものぼることが判明しました。
逆に言えば、運動することによって血管系疾患のリスクを大幅に下げることができるのです。

運動効果

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かつて体脂肪を減らす場合、歩くだけでは不十分と捉えられていました。しかし最近の研究ではランニングよりも歩いた方が、脂肪燃焼の効率が良いとわかってきました。
歩くような低強度の運動の方が糖質よりも脂肪の使用比率が高いとされています。

さらに、速歩きすることによって骨格筋と血管に適度な負荷をかけられるため、ロコモやフレイルといった身体機能の衰えを予防することが可能です。
ダイエットを始めるにしても、新たに運動を始めるにしても、まずは歩くところから取り入れるのがいいでしょう。
普段座っていることが多い人には、血流改善効果も望めるため、肩こりや腰痛予防にもつながります。

認知機能の回復・維持

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昔から寝たきりになると認知症になりやすいと言われていましたが、最近の研究では、歩くことで認知機能の低下を予防・回復し、ひいては認知症の予防につながることがわかってきました。
認知機能は誰しも年齢とともに低下していくものですが、歩くことで、その低下率を緩やかにすることができるのです。
一般的に、認知機能を維持すると統計的に証明されている生活習慣は3つしかありません。それが
1)運動
2)食事
3)人間関係
です。特に身体を動かすことは日常に取り入れやすく、効果も高いことで知られています。
最近イギリスで発表された論文(※3)によると、歩行速度が速いほど認知機能が高いまま維持されていることがわかっています。さらに恐ろしいのは、歩くスピードが遅かった人は認知の変化によらず、認知症を発症するリスクが高まっていました。

ここでポイントなのが歩くスピードです。後述しますが、ただ歩くだけでなく速く歩くことが大切になります。

実はビジネスにも効く!?歩くの副次的効果

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このように、現代人が抱える疾患リスクや健康寿命リスクのほとんどを下げてくれる歩くことですが、もちろんビジネス面でもよいことがあります。

例えば、認知機能の改善や、考える力をつける点です。学生時代に部活をやっている子の方が進学率が高いとされています。これは認知機能が高まることに加え、集中力や思考の瞬発力がつくためと言われています。
また、かつてのギリシア哲学者や釈迦、キリストなどから始まり幕末志士のような偉人たちも皆一様に歩き回って思考を深めていました。

多くの優秀とされる経営者ややる気が高い人たちも歩いていることが多いようです。
科学的な論拠はまだ発見されていませんが、歩くことにはやる気を高め、考える力を深める効果がありそうです。
少なくとも私自身、運動をしない期間が長くなるほど、集中力が続かなくなるなど、その効果を感じることが多々あります。

どうしたら歩ける?飽き性でも取り入れやすい方法は次回紹介!

歩く健康効果の多さについて驚いたのではないでしょうか?日々行なっていることでも、少し工夫するだけでこんなにも健康に役立つのです。
ですが、その効果を得るためにはちょっとしたコツが必要になります。
次回は、そのコツと、長続きしない人に向けて歩きを簡単に続ける方法を紹介します。

■歩く習慣をつける方法はこちらから

参考文献

(取材・文・撮影/KenCoM編集部)