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2018.08.29

脂肪肝に良いこと・悪いこと【身近に潜む病気『脂肪肝』を斬る!#2】

KenCoM公式:ライター・緒方りえ

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肝臓は24時間休まず働いている臓器ですが、その機能を保つ能力が高いことは有名です。
そのため、適切な検査や生活習慣の改善によって脂肪肝を改善することで、健康的な生活を送ることが可能になると言われています。

では、私たちが肝臓のためにできることは何でしょうか。

引き続きお話をしてくださったのは、新百合ヶ丘総合病院の消化器・肝臓病研究所所長の井廻道夫先生です。

肝臓の状態を把握しよう

健康に近づくためには自分の身体の状態を知ることが大切。覚えておくと良い検査数値の読み方や、病院受診のボーダーなどについてご説明します。

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まず、肝臓の細胞の状態を知るためにはALT(GPT)・AST(GOT)の数値が大切になってきます。これらは細胞が壊れた時に血中に出てくる酵素です。
そして、γ-GTPはアルコールに反応して血中に出てくる酵素です。しかし、肝臓が弱っていても数値が上がらない人もいるのでALT(GPT)・AST(GOT)の数値と合わせて確認が必要です。

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健康診断の基準としてはALT(GPT)・AST(GOT)が30で要注意、50で受診となっています。しかし、実はALT(GPT)・AST(GOT)が男性30女性20以上で超音波エコー検査をしてみると、何らかの異常が見つかることもあるのです。
また、γ-GTPは100をこえたら受診をおすすめします。50-100の間でALT(GPT)・AST(GOT)が正常ならばまずは生活習慣の見直しをすると良いでしょう。

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肝臓は非常に余力のある臓器なので進行するまでは症状として出てきません。慢性の肝障害でだらだら進行したものは末期になるまで症状が出ず、早期に症状が出るのは急性肝炎の時だけです。
ではどの段階で症状が出てくるかというと、最後の最後に出てくるのです。例えば、脂肪肝から肝硬変になってもさらに無理をして進行させると腹水・黄疸・疲れやすさ等の症状が出てきます。
脂肪肝のうちは症状が無いため、検診などで気づくことが多いのです。

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2型糖尿病の60%が肥満、その30〜50%は脂肪肝です。血統コントロール不良だと50%以上、良好でも25%は脂肪肝であると言われています。糖尿病の場合、糖からの脂肪合成が促進されたりコレステロールが高くなったりするので脂肪肝になりやすいと言えます。つまり、糖尿病の治療をしっかりすることで脂肪肝の治療も進みます。
また、乳がん患者では治療に用いられるタモクシフェンという薬の服用で脂肪肝が生じることが知られています。

誤解も多い!脂肪肝と飲酒の関係

大量飲酒が肝臓に悪いことは皆さんご存知でしょう。しかし、1滴も飲んではダメというわけではありません。適量を知って控えめを目指しましょう。次は、脂肪肝と飲酒のお話です。

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ドカ飲みの大量飲酒を繰り返すと、中性脂肪がたくさん作られてしまいます。また、アセトアルデヒド(アルコールの分解によってできる毒性の代謝物。悪酔いや頭痛の原因)が増えるため、肝臓の細胞が障害されます。

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一般的に1日に1合ほどの適量飲酒が良いと言われています。
1日に3合以上を摂取している患者さんのほとんどに脂肪肝がみられますが、肝臓の処理能力の差によって全ての人に脂肪肝が起こるとも一概には言えません。アセトアルデヒドの処理の早い人は肝障害が起きにくい場合もあります。
自分の今の肝機能を知るためにも、検査を定期的に受けることが非常に大切になってきます。

脂肪肝に効果あり!? な噂の物質たち

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ウコンの免疫促進作用によってもともと肝臓が悪い人の肝機能を悪化させてしまうかもしれない、という考えがあります。
しかし逆に、ウコンに含まれるクルクミンがアセトアルデヒドの分解を助けて悪酔いや二日酔いを防ぐため、肝臓に良いという研究もあるのです。
良いとも悪いとも言えませんが、人によっては肝障害を起こすので注意が必要です。サプリメントやドリンクを選ぶ時は、副作用もしっかり調べましょう。

※ 薬物性肝障害:医療機関で処方された薬やドラッグストアで購入できる医薬品やサプリメントなどが原因となり起こる肝臓の炎症。「中毒性」と「特異体質性」に分類される。

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アディポネクチンは脂肪細胞からできるホルモンに似た善玉の物質です。
これを増やすためには、まず痩せること! 痩せると自然に増えてきます。

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私たちの身体は、活性酸素という物質によって酸化が進み老化していきます。酸化が進むと不規則な生活(飲酒・喫煙・偏った食事など)から身体を守る力が低下していくのです。
コーヒーや紅茶などには身体の酸化を防止する作用があると言われています。また、コーヒーを飲んでいる人に肝がんが少ないという研究もあり、脂肪肝の抑制効果があるのではないかと考えられています。
とはいえ、脂肪肝に対してはダイエット以上の効果があるとは言えません。

肝臓のためにできること!

私たちが脂肪肝を予防・改善するためにまずできることは

①検査数値などで肝臓の状態を把握すること
②1日1合以下の飲酒にすること
③ダイエットでアディポネクチンを増やすこと

これらを守って健康な生活を目指しましょう。

次回は、「脂肪肝の原因を取り除く方法」についてご説明します。

→関連記事はこちらからどうぞ!

井廻道夫(いまわり・みちお)先生

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新百合ヶ丘総合病院 消化器・肝臓病研究所 所長

【プロフィール】
1972年東京大学医学部を卒業。1991年東京大学医学部第三内科助教授に就任。1993年自治医科大学消化器内科教授に就任。2003年昭和大学医学部第二内科教授に就任。2008年昭和大学医学部内科学講座消化器内科学部門教授に就任。2012年自治医科大学名誉教授に就任。現在は新百合ケ丘総合病院消化器・肝臓病研究所所長として活躍。日本内科学会認定内科医・指導医、日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医、日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医。モットーは患者さんには優しく接し、最高の医療を提供すること。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

(撮影/KenCoM編集部 取材・文/緒方りえ)