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2018.08.01

「住宅ローン」で大損しかねない5つのワナ|不動産会社・銀行・FP…信じるべきは?

東洋経済オンライン

うっかり住宅ローンを借りると大損どころか、老後破綻まっしぐらということもありうる(写真:Elnur/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/231723?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

うっかり住宅ローンを借りると大損どころか、老後破綻まっしぐらということもありうる(写真:Elnur/PIXTA)

人生で最も大きな買い物と言われるマイホーム。少子化や生産年齢人口の減少があっても、いまだ毎年数十万人もの人たちが家を買い、そのタイミングで住宅ローンを借りています。

筆者がFPとして相談を受けるタイミングで最も多い内容の1つにマイホーム購入があります。「身の丈にあった住宅価格はいくらなのか」「老後に負担のない価格で購入したい」「住宅ローンの考え方について教えて欲しい」――など一口にマイホーム購入と言っても、たくさんの視点で考える必要があるのです。そこで、今回は特に住宅ローンの契約前後に相談される方々が陥りがちな5つの事例をお伝えしたいと思います

諸費用含めて全額ローンはもう当たり前?

1.銀行のセールストークにのせられる

マイホーム購入を考えて、それまで訪れたことのない銀行の住宅ローン担当を訪れたAさん。担当者からこう言われました。「頭金は不要です。物件価格の満額まで融資できます。諸費用も住宅ローンに含めることもできます」。

さて、これはどのように理解すればいいのでしょうか。かつては家を買うなら頭金が2~3割必要と言われましたが、最近は頭金不要で物件価格の全額を借り入れたり、自己資金が完全に不要で物件価格と諸費用の全額を借り入れたりするのが当たり前になってきています。たとえば、物件が3000万円で諸費用が300万円だとすると、3300万円の住宅ローンを提案されるということです。

親世代から頭金について伝えられたり、本や住宅雑誌を読んで頭金が絶対に必要だと思っていたAさんは、銀行から伝えられた助言について困惑したそうです。そこで筆者は、銀行の立場になって考えてみるとどうかとアドバイスをしました。

「もし、Aさんが銀行員だとしたら、たくさんお金を貸すことが仕事になりますよね?ですから、銀行はできるかぎりたくさんお金を貸したいと考えているんです。今回もそう。特にAさんのような優良な勤務先の方にはなおさらたくさん貸したいでしょう」

一方、FPとしての立場からはこう伝えた。「いろいろ本を読んだりすると、頭金が必要だとされていますが、それは昔の話です。今は頭金がなくても家を買える時代。ただ、銀行はたくさんお金を貸したいという意向があるので、その言葉を真に受けると家計に打撃を与えます」。

「もし多額の住宅ローンを借りたいのなら、住宅ローン控除の適用上限を目安に住宅ローンを借りるも一案です。超低金利のため、金利の負担額は少なく、減税効果による所得税還付を加味すると、住宅ローンを借りたほうが金銭的なメリットを享受できる可能性があります。住宅ローン加入時には団体信用生命保険という生命保険に銀行の保険料負担で加入できますから、無理に借入額を減らす必要はないとも言えます」

ここでのポイントは、銀行がどんな意図で頭金が必要ないと言っているかを理解することです。また、住宅ローン控除の制度を理解することで、税制適用を上限として住宅ローンを借りるという天井を設けた格好です。Aさんは夫婦共働きであったため、物件の予算が高い場合は、夫婦でそれぞれ住宅ローンを借りるという選択をすることで、住宅ローン控除の適用メリットを2人分享受できるのです。

不動産会社の仕事は家を売ること

2.不動産会社の口車にのせられる

前述Aさんが今度は、不動産会社のセールストークを真に受けて、急いで住宅ローンを決めなければならないと焦って筆者を訪れました。曰く、「今月中にどこの銀行か決めないといけません」。

本当でしょうか?Aさんは不動産会社経由で住宅ローンの審査を済ませていました。売買契約の日取りが決まり、住宅ローン手続き、引き渡しなども順次スケジュールが決まっていきます。ここで気になるのは、不動産会社がどんな住宅ローンを提案しているのか、ということです。

不動産会社の仕事は家を売ることです。従って、購入者の住宅ローンについては、どこが最も有利かといったような視点で住宅ローンを提案することはありません。自社と提携している銀行で、いかに手間なく住宅ローンの審査を通してくれるか、あるいは取引先のメインバンクからの印象をよくするために、特定の銀行に審査を出すこともあるでしょう。しかも、住宅ローン選定の期限が設けられているため、購入者には銀行選別の時間はあまりありません。

たとえば、ネットバンクは購入者が自ら審査申込や審査書類の準備をするため、2~3カ月程度のゆとりがないと借入がマイホーム購入に間に合わないと言われます。となると、Aさんのように、不動産会社にマイホーム購入の期限を設定されている場合は、最も金利が低いと考えられるネットバンクを借入対象から除外することになります。

これは誰の都合かと言えば、売り主や不動産会社の都合です。消費者にとってのメリットはありません。あえて1つあるとすれば、意思決定のできない購入者にとって、期限設定をされることで重い腰が上がって、マイホーム購入という夢の実現に近づくということが挙げられるかもしれません。

「早くしないと家が売れてしまうかもしれない」というセールストークをする不動産のセールス担当者は少なくないでしょう。しかし、ここでの問題は、家を買う前にじっくり住宅ローンの準備を進めずに、行き当たりばったりで家を買おうとすることです。この点は職業柄、無力さを感じるところですが、ほとんどの方が急いで家を買い、急いで住宅ローンを借りてしまいます。

不動産会社は、家が売れさえすれば、どこの銀行のどんな住宅ローンであってもいいのです。ここでは、銀行と不動産会社の思惑は一致します。銀行は審査を素早く済ませる。不動産会社は審査の早い銀行で住宅ローンを組んでもらい売買を完了させる。最強タッグの完成です。双方の利害が一致する中、「住宅ローンについてはじっくり考えましょう」というようなアドバイスの出てくる可能性はほぼありません。

3.FPのアドバイスを鵜呑みにする

お恥ずかしい話なのですが、FPの住宅ローン相談もあてにしないほうがいいでしょう。住宅ローンに詳しく精通しているFPはわずかだからです。中には銀行員や元銀行員という肩書のFPもいますが、自身がかつて在籍していた銀行の住宅ローンについての知識しか持ち合わせていない場合も少なくありません。つまり、他行と比較ができないのです。一方、不動産会社に勤務するFPですと、当然住宅ローンに詳しいのですが、目線が住宅の売り手なので、購入者目線での問題提起や注意喚起ができません。

年収2000万円世帯が1億円の家を買って大丈夫?

先日問い合わせのあったBさん。急きょ家を買うことになり、急いで問い合わせをしてきました。電話で話をしていると、どうも話が噛み合わず、ほかのFP事務所にも平行して相談していることが判明しました。

Bさん曰く、「○×FPさんでは、変動金利がいいと言われた」とのこと。筆者にはFPが変動金利を断定的に勧めた理由が理解できず、「FPが変動金利を薦めたんですか?どんな理由からですか?」と質問してしまいました。Bさんもその点が心にひっかかり、筆者に相談してきたようなのですが、○×FPは保険に強い事務所なので、住宅ローンについて詳しくないであろうことが、Bさんとのやりとりでわかりました。

お金を借りるときのセオリーは、金利が低い時期は固定、金利が高い時期は変動を選ぶということ。根拠もなく、セオリーと真逆の提案をするところに、FPが世の中から信頼を得ることができていない理由の1つを見た気がします。

〇×FPが勧めたとおり変動金利タイプの住宅ローンを借りて、将来金利が上がっても、そのFPが責任を取るわけではありません。あくまで自己責任ですので、変動金利と固定金利など複数の金利を用いて、返済や金利変動のシミュレーションを実施して、そのうえで選べば、購入者自身も納得するのではないでしょうか。

4.ピーク年収をベースに考える

共働きのCさん世帯は過去数年の世帯年収は1000万円でしたが、昨年から2000万円となりました。というのも、もともと夫婦それぞれが500万円ずつ稼いでいたのが、夫の年収が1500万円にハネ上がったのです。

すでに家を買っている家庭なら特別問題はないのですが、Cさん夫妻は年収2000万円をベースに家を買うことにしました。年収2000万円であれば、年収の5倍の家でも1億円になります。早速夫婦でローンを組むことにしたのですが、ここでの問題は何でしょうか?

1億円を35年ローンで金利0.5%の変動金利で借り入れた場合、毎月の支払いは26万円となります。年収2000万円の場合、毎月の手取りは110万円程度になりますから、住宅ローンを差し引いても、84万円残る計算です。毎月84万円の生活資金があれば、相当お金が貯まるのではないか?と思う人が多いでしょう。しかし、高給取りはそれにふさわしく高額の支出が多いため、毎月20万円の貯蓄にとどまります。毎月60万円は生活費という名の消費で手元から出て行きます。

この状態で、夫の年収が低下したらどうなるでしょう。もし仮に、年収1500万円が年収500万円に戻ったとしたら……。世帯年収1000万円の場合、毎月の手取りは60万円程となります。手取りの半分弱を毎月住宅ローンとして支払う生活は、想像しただけでも苦しそうです。この状態で子どもが生まれて、保育料が収入比例で最高額となれば、毎月赤字の家計に転落してしまう可能性大です。

年収アップ前を前提に考えた方がベター

多くの人は、住宅ローンが返せなくなったら、①家を売ればいい、②家を貸せばいい、と思っているでしょう。しかし、実際には売値<住宅ローン残高、となり売りたくても買い主との値段が合わずに売却ができないケースは多々あり、「負」動産の相談も存在します。

また、家を貸す場合は、家賃26万円以上で貸さないと毎月赤字になります。本来、固定資産税なども加味すれば、家賃30万円は欲しいところです。しかし、そんな高い家賃を払う個人がどこにいるのでしょうか(筆者の経験からすると、家賃が20万円を超えると買った方がいいのでは?と考える方が増えるようです)。

結果として住宅ローンが払えなくなった場合に行きつく先は、自宅の任意売却か競売です。家を手放しても1円も残らない可能性が高いのです。それでも売り主は、買い主の事情まで知りませんから、価格の高い物件を販売しようとします。

安心な価格で家を買いたいなら、年収アップ前の世帯年収1000万円をベースに、6000~7000万円の家を買うのが無難でしょう。当初無理のない返済でも、これから子どもの教育資金がかかってくれば、初めはゆとりの返済額でも、気が付いたら毎月赤字になりかねません。

5.ライフプランを考慮しない

年収500万円のDさん。専業主婦の妻1人、子ども1人の3人家族で、夫のDさんはそろそろ家を買おうと思い、3000万円の家を買っても家計に問題はないかと相談に来ました。今まで借り上げ社宅に住んでいて、住居費の負担は3万円だったため、家計にはゆとりがありました。

しかし、3000万円の住宅ローンを借りると、毎月の返済額は9万円。マンションをご希望のため、管理費と修繕積立金の支払いが毎月2万円、固定資産税が月額換算7000円となり、毎月11万7000円の支払いが必要となります。今後の資金繰り表を作ってみたところ、住宅ローンを含めた支出が多く、あっという間に家計が破綻する試算結果となりました。Dさんは茫然としてこちらのアドバイスが耳に入りません。

Dさんには、妻が働くことを試算するよう提案しましたが、「結婚するときに専業主婦になることを了承した」という理由で、妻が働くパターンを考えようとしません。状況が変われば、妻が働くかどうかは夫婦で改めて検討すべきかもしれません。ここで、家を買うことを優先するのか、妻の専業主婦でありたいという希望を優先するのか、夫婦で話し合うだけでも、将来の資金繰りに対する姿勢が変わってきます。

今どき妻が専業主婦前提なんて、生活設計としておかしいだろうというツッコミもありそうですが、東京、神奈川で相談を受けていると一定の割合で同様の相談に出くわします。何が何でも妻が働かない体制を維持しようとすると、結果的に希望通りの家を買えないどころか、いつか家を買いたいというささやかな夢自体つぶすことにもなりかねません。

マイホーム購入の際、最も信じられるのは自分

筆者は、不動産会社や銀行など販売側ではないFPとして相談を受けているため、「買わないほうがいい」「予算が高すぎる」「この予算で買うと将来苦労する」ということを、真正面から相談者に伝えています。結果として購入を考え直すケースもあります。

一方、不動産会社が紹介する「業者お抱えのFP」であれば、「家は買えない」というアドバイスは存在しませんので、年収の10倍の価格の家であっても、住宅ローン審査が通るのであれば、多少返済がきつくても十分に返済可能として、ひとごとのようなライフプランができ上がってくるのです。

最後に、番外編として住宅ローンを借りた最悪な末路3つをお伝えしたいと思います。1つは、あこがれのマイホームを買ったのはいいが毎月の支払いがきつく、お金が原因で家庭内がギスギスしてしまう「家庭内不和」が発生するケース。一歩進んで離婚となる夫婦も一定数存在します。もう1つは、子どもの大学などの教育資金と住宅ローンの支払いに耐えられず、貯蓄が底をついてしまう「ゆでガエル」ケース。そして、3つめは、住宅価格が収入に見合わず、老後資金を貯めることができない「老後破綻まっしぐら」ケースです。

手元資金がなくなっても住宅ローン支払い中の場合は、自宅を強制的に売却することになります。住宅ローンの支払いが終わっていても、生活保護など公的福祉の認定を受けるにも、自宅を売却し、その資金を使っても生活ができない場合に限られます。

マイホームを購入する際には、不動産会社や銀行、FPに大丈夫だと言われたからと安心せず、自らしっかり考えて納得した予算で購入し、ローンを組むことが不可欠です。ほとんどの人にとって人生最大の買い物であるマイホーム。後悔のないように自ら積極的に調べ、比較し、考えることは怠りたくないものです。

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高橋 成壽:ファイナンシャルプランナー

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