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2018.07.28

日焼けクリームと日焼け止めはどう違うのか|意外と知らない、初夏からの「すごい技術」

東洋経済オンライン

日焼けクリームと日焼け止めの仕組みとは?(写真:プラナ/PIXTA)

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日焼けクリームと日焼け止めの仕組みとは?(写真:プラナ/PIXTA)

私たちの生活に潤いを与え、日々の暮らしを心地よいものにしてくれる「モノ」には、意外なほど“巧妙な”技術の裏付けがある。たとえば、これから夏を過ごすにあたって使用頻度が高まる「日焼け・日焼け止めクリーム」についてふと考えたとき、実は、私たちはこのアイテムの仕組みについて、ほとんど理解していないことに気付く。

新刊『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』を著したサイエンスライターの涌井良幸・貞美両氏に、これから迎える夏場に大活躍するモノに備わった「すごい技術」について、イラストを使いながらわかりやすく解説してもらった。

日焼けクリームと日焼け止め

近年、ブームを経てすっかり普及した感のある「美白」。しかし、以前は「ガングロ」が人気の時代もあった。本当にファッションは移ろいやすい。そうはいっても、夏の海に似合うのは、いつの時代も、やはり小麦色の肌だろう。

だが、太陽の紫外線でむやみに肌を焼いては、とにかく皮膚へのダメージが大きい。そこで利用されるのが「日焼けクリーム」である。

ところで、「日焼けクリームを塗ったのに全然こんがりと焼けなかった」というのはまさに“あるある”の話だが、それは「日焼けクリーム」と「日焼け止めクリーム」を間違ったからだろう。当然のようだが、「止め」が入るか入らないかで、効果はまったく逆になる。

日焼けクリームと日焼け止めクリームの違いを理解するため、まず、太陽から放射される紫外線の性質を見てみよう。紫外線とは、光より波長の短い、すなわちエネルギーの強い電磁波だが、その性格から、UV-A、UV-B 、UV-Cの3種に分けられる。Cは大気で遮断されて地上には届かないため、日常生活で考えなければならないのは、A、Bの2種である。

Bのほうは波長が短く強烈で有害であり、肌に炎症(サンバーン)を起こさせる。Aは波長が長く穏やかで、肌を日焼け(サンタン)させる。小麦色の肌は「日焼け」なのだ。そこで、「日焼けクリーム」はBを妨げ、Aだけを通すのである。一方の「日焼け止めクリーム」は、AもBも両方妨げるものだ。

太陽光線の波長の区分(イラスト:小林哲也)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/230753?page=2

太陽光線の波長の区分(イラスト:小林哲也)

日焼けクリームと日焼け止めクリームの違い(イラスト:小林哲也)

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日焼けクリームと日焼け止めクリームの違い(イラスト:小林哲也)

一概に「日焼けクリーム」や「日焼け止めクリーム」といっても、製品によって効き目は違う。それを分類したのが「SPF」や「PA」で表される指標である。

「SPF」はUV-Bの、「PA」はUV-Aの防止効果を示している。SPFは50までの数値で、PAは+(プラス)、++(ツープラス)、+++(スリープラス)、++++(フォープラス)の4段階で表示される。どちらも数が大きいほど防止効果が大きくなるが、塗り方によって効果は大きく異なる。説明書に従い、丁寧に塗ることも大切だ。

ちなみに、UV-Aは一年中降り注いでいる。また、雲やガラスを透過するため、くもりの日や室内にいる場合でも肌に影響を与える。紫外線に弱い人は十分注意したい。

制汗・制臭スプレーの知られざる仕組み

日焼けとともに“暑さ”を連想させる「汗」。かつては、「汗は男の勲章」などと、汗とそのニオイが男のシンボルとされた時代もあった。しかし、今では「汗臭さ」が疎まれる時代に。そんな中、「デオドラントグッズ」が男性に人気らしい。

デオドラントグッズとは、汗を抑えたり、汗のニオイを解消したりする商品のこと。汗を抑える「制汗」、汗のニオイを取る「制臭」に大別されるが、多くの製品は両者を備えていて、その区別は不明確である。

形態としては、ロールタイプ、クリームタイプ、スプレータイプの3種あるが、ここでは人気の高いスプレータイプを解説したい。

まず「制汗」の仕組みについて。スプレーならば、それを吹きつけた部分が冷却されるので、必ず制汗効果は生まれる。そこで、商品の売りとしてプラスアルファが求められる。いかに汗腺に働きかけて発汗を抑えるかという工夫が商品のセールスポイントになるのだ。たとえば、スプレーに混ぜられた成分が汗腺に入り、直接発汗を抑える、といった商品もある。

汗腺をふさぐ制汗剤のしくみ(イラスト:小林哲也)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/230753?page=3

汗腺をふさぐ制汗剤のしくみ(イラスト:小林哲也)

人の汗自体には実はニオイがない

次に「制臭」。意外かもしれないが、人の汗自体には実はニオイがない。皮膚の常在菌が、汗を食べて繁殖する際に出す分解物が臭うのだ。そこで、ニオイを出しやすい脇の下などを殺菌すれば、汗のニオイは少なくなる。さらに、出された分解物を浄化してもニオイはなくなる。人気があるのは、銀イオンを含ませた商品。銀イオンは人に無害で、殺菌や浄化の効果が強いからだ。

現代の日本人は、ニオイを抑えることに特に熱心といわれる。実際、デオドラント商品でいちばん売れているのは「石けんの香り」らしく、これはとても控えめな香りだ。フランスに目を転じると、ニオイを楽しみ、積極的にアピールする文化がある。男性も香水をつけるのが当たり前なのが、その一例だろう。日本も近い将来、フランス同様、「制臭」ではなく「発香」の文化が普及するかもしれない。そのとき、制汗スプレーの香りとして、いったいどのようなものが好まれるのだろうか……。

ニオイが発生するメカニズム(イラスト:小林哲也)

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ニオイが発生するメカニズム(イラスト:小林哲也)

ニオイを抑える「制臭」の仕組み(イラスト:小林哲也)

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ニオイを抑える「制臭」の仕組み(イラスト:小林哲也)

すっかり普及した形態安定シャツ

もともとは汗を吸うための服飾アイテムでもあったワイシャツ。このワイシャツには綿がよく利用されるが、これは水分をよく吸収し、着心地がいいからだ。しかし、綿のシャツには洗濯後にシワができやすいという欠点があった。

忙しい現代、毎日アイロン掛けするのはたいへんなことだ。そこで現在、市販されている多くのワイシャツには「形態安定」という加工が施されている。

形態安定とは、「形状記憶」「ノーアイロン」などと呼ばれる繊維加工の総称である。この加工が施されていると、洗った後に干すだけでアイロンが不要になる。

形態安定加工の仕組みを見る前に、そもそもなぜシワができるのかを解説しよう。綿繊維は天然のセルロース分子が緩やかに結びついてできているが、内部には大小さまざまな隙間がある。洗濯時には、この隙間に水がしみ込んで膨張・変形するのだ。そのまま乾燥すると、繊維が変形状態で固定されてしまう。これがシワの原因である。

綿繊維にシワができる仕組み(イラスト:小林哲也)

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綿繊維にシワができる仕組み(イラスト:小林哲也)

シワを作らないためには、水による繊維の膨張を抑えればいい。その解決策として考え出されたのが「架橋(かきょう)反応」だ。繊維と繊維がしっかり結びつくよう、分子同士に橋を架ける化学反応を利用するのだ。そうすれば、水がしみ込んでも繊維は膨張しなくなる。

架橋反応による形態安定加工(イラスト:小林哲也)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/230753?page=5

架橋反応による形態安定加工(イラスト:小林哲也)


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架橋反応には最初、ホルマリンが利用された。現在では肌や環境にやさしいさまざまな物質が考え出されている。

架橋反応を利用して繊維の変形を防ぐ技術は、何も綿だけに限ったことではない。ウールにも利用されている。いわゆる「丸洗いできるスーツ」などがそれだ。ウール繊維は表面がウロコ状になっていて、水を含むとささくれ立ち、隣の繊維ともつれ合う。これが、水洗いでウール製品が縮む原因だ。そこで、繊維を薄く樹脂で包んで架橋させる。

すると、濡れても繊維はもつれ合うことがなく、乾燥すれば元の形に戻る。

「濡れ干し」が基本

ちなみに、形態安定加工された衣服は「濡れ干し」が基本。雫がたれるくらいが理想だ。水分の重みでシワが自然に伸びるからである。

以上、この記事では、初夏から頻繁にお世話になる“すごい技術”を簡単に解説したが、「よく使っているけれど、その仕組みをほとんど知らない」モノはたくさんある。私たちの生活を“心地よいもの”にしてくれるのは、よく買い求め、よく使っている、あの身近なモノの“すごい技術”のおかげなのかもしれない。

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涌井 良幸,涌井 貞美

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