2018.08.10
めまい・頭痛・不眠…医師が警鐘を鳴らす「夏の冷え」にご用心!
「冷え」というと冬のイメージも強いかと思いますが、実は夏も冷えで悩んでいる人が増えているのだそうです。
これはクーラーによって身体が冷えてしまうことで身体に不調が起こるというもの。
夏ならではの冷えのメカニズムと対策方法について、西洋医学の視点でも診ることができる東洋医学の名医、南雲久美子先生にお答えいただきました。
夏の冷え「クーラー病」って、何!?
短期間で起こる自律神経症状を伴った様々な不調
南雲先生「夏の冷えは、室内のエアコン下の寒い環境と、外の気温の暑い環境を何度も行き来することで起こってしまう冷えです。それによって自律神経症状を伴った様々な不調を短期間に起こしていくものを、クーラー病とも呼んでいます。
いつもはお盆頃から症状が出始める方が多いのですが、今年はいつもよりも少し早い傾向にあります」
冬の冷えとは何が違うの?
冬は季節性、夏はクーラーが原因
南雲先生「冬と夏では、身体が冷える理由が異なります。冬は季節性の寒さによるもので、長い時間寒いところにさらされることで起きますが、夏はクーラーによって冷えた環境にいることが原因です」
身体が丈夫なひとほどかかりやすい
南雲先生「さらにかかりやすい人も異なります。冬の冷えに悩むのは、もともと身体が弱い方やしもやけができやすい方、寒がりな方が寒さに耐えかねた結果、冷えの症状を訴えるわけですが、夏の場合は逆に丈夫な人ほどかかりやすいんです。
自分は大丈夫だと油断をする人ほど、冷たいものを好きなだけ飲んだり、エアコンの温度を低く設定したりと冷えに対する意識が低いため、気が付くと冷えの症状が出てしまっているというわけです」
油断は禁物!秋に症状が現れる人も多い!
南雲先生「さらにクーラー病の特徴であり怖いところは、毎年繰り返していくと冷えによる不調症状がなかなか取れなくなってくる点です。
そして実は症状が重く出てくるのは、10~11月頃。夏は大丈夫だったのに、前述したような不調が秋になって突然発生する場合もあります。
若いうちはすぐにリセットできますが、クーラー病を長年経験していくと老化のためにリセットされにくくなります。冷えないための予防となってしまった後の対処を意識して行いましょう」
冷えているとき体内でどんなことが起こっているの?
血流が悪くなり血管が収縮しています
南雲先生「西洋医学的にいうと、血流が悪くなっている状態です。それによって末端まで血液が行きわたらず、心臓から遠い手足から冷えていきます。身体の表面の血管には体温の調節機能があり、寒いところに出ると血管はきゅっと締まって外に体温を逃がさないようになりますので、皮膚が冷えている場合は、体内も冷えていると自覚しましょう」
具体的にどんな症状が起きるの?
めまい・頭痛・不眠…症状は様々!
南雲先生「冷えが続くと漢方で言う”水はけが悪い状態”となり、さらには上のチェックリストにあるような”自律神経症状”を併発していきます。西洋医学にはない考え方なので理解しにくいですよね。水はけの悪いとき、人は多くの不調が起こります。チェックリストに挙げたものはあくまでも一例で、実はもっと多くの症状を引き起こしています。
特に注意したいのがめまいです。めまいで病院に駆け込むけれど、西洋医学的にはどこも悪くなく、病名が付かないので治療ができないという場合も多いんです。だけど症状は一向に取れなくてどうしていいか分からないという方が、私のクリニックにも多くいらっしゃいます。治療法は人それぞれに合った漢方(代表的なものだと苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう))を処方したり、生活習慣についての指導を行います。病院では異常は見つからなかったけども症状が取れないような方は、実はクーラー病かもしれません」
女性だけじゃない!胃腸が弱い男性も注意!
南雲先生「女性は生理になると出血も伴って体温が下がりますので、その時期は特に身体を冷やさないよう心がけましょう。さらに、男性でも胃腸の弱い方は冷えやすいと言われています。特に30代以降の方は要注意。冷えによってめまいを起こす人が増えてきていて、男性更年期なんて名前で呼ぶ方もいます。ちなみに亡くなられた漫画家のはらたいらさんが訴えた不調の初期症状も、男性更年期によるめまいだったそうです」
冷えに負けない4つの対処法!
南雲先生「冷えに負けないようにするためには、大きく分けて以下の4つの対策方法があります。これを日常生活に取り入れていただくだけでも改善していきますよ」
1. 外から冷やさない
首の後ろ・お腹・足首を冷やさない
南雲先生「職場でデスクワークをされる方は、寒いクーラーの下にさらされている場合が多いかと思います。そのときに、冷やさないように意識してもらいたいのが、首の後ろ・お腹・足首です。
首の後ろには『風』という字のつくツボがたくさん集まっているのですが、冷やしてしまうと風邪をひくことがあります。また身体に暖かさを運んでくれる太い血管も通っているため、ここを温めることで冷え改善にもつながります。私は登山用のネックウォーマーを使って首を冷やさないようにしています。通気性もいいのでおすすめですよ。
さらにお腹周りは大事な臓器がある場所です。冷えてしまうと機能が低下し、胃腸が弱くなります。カーディガンやひざかけなどを使ってお腹が冷えないように意識しましょう。
クーラーの効いた室内では実は足元は6~10℃も低いんです。ですから足全体も冷えていきます。本当は全体を覆うようにしたいところですが、足を覆うと足の裏や指の股に汗をかいて蒸れてしまいます。しかし、足首ならそんな心配もいりません。ひざ掛けならばなるべく足首まで届くものを選ぶようにしたり、パンツの丈も長めのものを選べるとよいですね」
2. 中から冷やさない
「身体を冷やす飲み物」をとり過ぎないように
南雲先生「身体の中から冷やさないようにすることも大切です。それには身体を冷やす飲み物に注意したいところです。ただし、冷たいものが悪く、温かいものがいいというわけではありません。例えば、ホットでもコーヒーは身体を冷やしてしまうので、寒い環境で飲む場合は控えたほうがいいですね」
【冷やす飲み物】・・・コーヒー、緑茶、ジュースなど
【冷やさない飲み物】・・・紅茶、プーアール茶、ココア、甘酒など
冷たいビールは身体を温める食材と一緒に!
南雲先生「アフター5に冷たいビールをごくごくと大量に飲む。これも絶対的に身体を冷やしてしまいます。ただ、飲むのであればおつまみを工夫してほしいんです。身体を温めるようなしょうが、ネギ、スパイスを上手に取り入れるようにしましょう。
特に女性は生理前にはいつも以上に身体が冷えますので、飲みに行くときはできればオープンテラスの場所のほうがいいですね。またビールは乾杯程度に留めて、室温で飲めるワインや日本酒を嗜むようにできたらベターです」
3. 冷えたら温める
30代以上の方は気持ちがいい温度のお湯につかる
南雲先生「冷えた身体は放置せずに、お風呂につかって温めましょう。30代以上の方ならば、ご自身が気持ちよく入れる温度のお湯につかればOKです。よく38~40度のお湯で20分の半身浴がいいと言われていますが、それが有効なのは実は20代までなんです。
30代は身体が冷えた状態を長年に渡って重ねているうちに、身体は脳の体温を保とうとして頭周りだけのぼせてしまい、身体はちゃんと温められないというパターンも多いのです」
ツボを押して血流をよくする
南雲先生「足の内くるぶしから指4本を当てたとこにある三陰交(さんいんこう)というツボを押してみましょう。痛いならば冷えている証拠。痛みがなくなるまで押していくと、血流がよくなってポカポカしていきます」
4. 冷えない身体を作る
下半身中心の運動が冷え対策に効く!
南雲先生「最後は、冷えない身体を作ることです。それには筋肉量が関係しています。女性のほうが冷えに悩む人が多いと言われるのは、男性に比べて筋肉量が少ないためです。つまり筋肉量を増やすと有効なのです。
筋肉量を増やすためには、全身の70%の筋肉が集中している下半身を鍛えるのが効果的です。スクワットなどの運動はもちろんですが、電車を待っている間に背伸びをしたり、オフィスで階段の上がり下りをするだけでもよいでしょう」
夏の冷えも対策すれば怖くない!
別名クーラー病と言われる「夏の冷え」について教えていただきました。原因がわからないのに何らかの不調症状が出ている方は、もしかしたらクーラー病なのかもしれません。しかし、きちんと意識して対策すれば改善していくものだそう。重たい症状が出る前に実行してみてくださいね。
<監修医師プロフィール>
■南雲久美子(なぐも・くみこ)先生
日本東洋医学会認定漢方医学専門医/日本消化器内視鏡学会認定医/介護支援専門員
東京慈恵会医科大学内科研修・入局。関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)にて消化器内科非常勤嘱託を経て、北里研究所東洋医学総合研究所で漢方・鍼灸を学ぶ。1996年に東洋医学と西洋医学を融合して治療する目黒西口クリニックを開業。現在では、冷えによる不調を抱える方たちの駆け込み寺的存在に。
(取材・文/KenCoM編集部)